第276話 二次会は遅れたら行くもんじゃない
「ゲイル、女が集まるとああなるのか?」
「そうだね、よくあのグループに混じれてたよな」
「抜け出せなかったんだよっ。馬車の中もずっとあんなだったんだぞ」
馬に乗ってても声が聞こえてたからな。
一通り食べたミーシャはベントと場所を交代したのだった。ドワン達はおっさん連中で飲んで騒いでるから俺とベントは蚊帳の外だ。
「なぁ、ベント。学校に友達いないのか?」
「うるさいっ!」
「いや馬鹿にして聞いたんじゃないんだ。マルグリット見ててもそうなんだけどうちの普通と貴族の普通って違うだろ?話が合わないんじゃないかと思ってな」
「周りのやつらは服とか宝石とかそんな話ばっかりだよ」
「それ面白いか?」
「面白いわけあるかっ。何言ってるかすら解んないのに」
そうだよなぁ・・・ 俺もわからん 。
「あと父さんが言ってたマルグリットが私的に招く事が出来ないと言ってた意味はわかったか?」
「わかったよ。他のやつらは俺に話しかけようともしないからな。同じ理由だろ」
なるほど。
「このまま領主コースで学ぶのか?」
「当たり前だ。俺は友達を作る為に学校に通ってるわけじゃない」
「でもつまんないだろ?」
そう言われて黙るベント。
「焼き鳥焼いたら人気者になれるんじゃないか?」
「うるさいっ!やっぱり馬鹿にしてるじゃないかっ!」
ベントは怒ってドワン達の所に行ってしまった。なかなか焼き鳥焼くの上手くなったベントにマジで言ってみただけだったんけどな・・・
一人になった俺は料理を作り出した。じゃがいもニンジン玉ねぎベーコンを入れてクリームシチューを作っていく。それを2重にした水筒みたいな物に入れ。串肉を焼いて弁当箱みたいな物を作って入れた。
同じ物を2セット作って森の中に入っていく。
「ここに置いておくから冷めないうちに食べてね。入れ物は魔法で作ったものだから捨ててくれていいから。あと俺もダンもいるから護衛の事は気にしなくていいよ」
あの二人が来てくれている。俺やダンがいるから来る必要は無かったのに念のために離れて付いて来てくれたのだろう。
さて風呂にでも入るか。
毎回のごとく湖のほとりに風呂を作りゆったりと湯に浸かる。
はぁ~極楽極楽。
波一つない鏡のような水面が星を映し空の中で風呂に入っているようだ。飯を食ってる皆の所は明るいしこちらは真っ暗だから今回は気付かれないだろう。
(お礼にお背中流しましょうか?)
そう囁かれてぎょっとする。
すっかり気を抜いてたので気が付かなかった。
(だ、大丈夫。クリーン魔法も使えるから。それより寒いのに木の上とかにずっと居てて大丈夫?)
(慣れてますから。)
(今回は俺もダンもいるから休んでても大丈夫だったのに)
(はい、お休みを頂いおります)
(え?これプライベートなの?)
(そうです。楽しそうなので付いて来ちゃいました。ご迷惑でしたか?)
(いやそんなことぜんぜんないよ。いつもありがとう)
(へへへっ)
(休みだったらお風呂作ってあげようか?どこに作ればいい?)
(えっ?いいんですか?)
(別にいいよ)
(じゃここで)
しゃぽっと二人が入ってきた。真っ暗でシルエットしか見えないけどいいのか?
(わーっ、暖かいですねぇ)
(いつも風呂とかどうしてんの?)
(クリーン魔法で済ませますからめったに入りません)
そうなんだ・・・
(二人は姉妹?)
(そうですよ。双子です)
そっくりだもんなぁ。
(ぼっちゃんは双子って聞いても嫌ったりしないんですね)
(は?何で?)
(双子は忌み子とか言われて、魔物の生まれ代わりだと教えられました)
この世界でもそんな迷信あるのか。
(そんな訳あるかよ。双子ってのは一卵性と二卵性っていうのがあってね、たまたま同時に赤ちゃんになっただけの現象だよ。二人はそっくりだから一卵性の双子だね。そんな嘘信じちゃダメだよ。それに魔物は魔物に、人間は人間にしか生まれ変わらないから)
そういうと二人は沈黙した・・・
(今の話は本当ですか?)
(本当だよ。生まれ代わりの話は直接神様に聞いた事があるから。これは内緒ね)
二人はホロホロと泣いているようだ。
(私達魔物じゃないって)
(なんでそんな話を信じたの?)
(小さい時から他の子達より素早く動けたり飛んだり出来て、やっぱりお前達は魔物の生まれ代わりだと言われて・・・)
そうか隠密の訓練以外にめちゃくちゃ才能があったんだな。
(それは才能って奴だよ。神様からの贈り物ってところかな?俺の魔法と同じだね)
(ぼっちゃんの魔法と同じ?)
(神様の贈り物?)
(そうだよ。だから自信持って)
はいっと二人が返事したところで誰かが探しに来る気配がした。
(ありがとうございました)
そう言って音もなくお風呂から出て二人は消えた。
「あー、見つけましたぁ。やっぱりお風呂に入ってたんですねぇ」
ミーシャが服を脱ごうとしだす。
「おいミーシャ、脱ぐなっ!俺はもう出るところだから」
慌てて風呂から出て服を着る。身体を拭くひまもなかったからびしゃびしゃのままだ。
自分に温風をあてながらミーシャの手を引いて皆の元へと戻った。誰だミーシャに飲ませたやつは?
「ゲイル、なんとかしてくれっ!」
ミケとミサはぎゃっはっはっはっはと笑いながらベントの頭をペシペシ叩いていた。それを見ていたアイナもシルフィードも大笑いだ。
盛り上がった二次会に遅れてきた時を思い出させる・・・
これは退散するのが吉だ。ベントは生け贄に置いていこう。ゲイルはベントに合掌をして拝んでその場を離れた。
眠そうにぐらんぐらんしているミーシャをこのまま寝かすのは心配なので、俺の部屋で一緒に寝ることにした。
「ぼっちゃま、暖かいですねぇ」
そういってクスクス笑う。酔ったミーシャはほこほこして暖かかった。暖かいのはお前だぞミーシャ。
ミーシャの寝息とほんわかな暖かさでうとうとしだしたときにいきなり騒がしくなった。
「あー、ミーシャもおらん思たらこんなとこにおった。おーい見付けたでぇー」
「あー、ミーシャちゃんズルいですぅ」
「私もここでゲイル君と寝よーっと」
「ほならウチもここで寝るでぇ」
「お前ら大部屋作ってやったろ?そっちで寝ろよっ!」
「かたいこと言いなや」
ドヤドヤとそれぞれが毛布を持ってくる。
狭い部屋に酔っぱらいがぎゅうぎゅう詰めだ。めちゃくちゃ酒臭い・・・
「お前ら酒臭いんだって」
「当ったり前やん。酒飲んだんやから」
ミケがハーッと俺に酒臭い息を吹き掛けた。この身体はアルコール耐性がまだ無い。飲んでもないのにクラクラする。
「や、止め・・・」
「ゲイル様、私は臭くなんてありませんっ」
そう言って顔を近付けて来たシルフィードの息も十分酒臭い。
キャハハハハッと笑うミサもだ。
キュウ・・・酒の息が充満した部屋で俺は撃沈した・・・
「皆ひどい有り様ねぇ」
酔っぱらいに絡まれ疲れで寝てしまったベントを抱き抱えたアイナは酔いつぶれた俺の部屋を覗きこんでそう呟いたあと、そのまま大部屋にベントを連れて行ったのだった。
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