第261話 ゴブリンの巣発見

「ダン、あいつらまで連れて行っていいのか?」


ゴブリンどもがやってきた方向へと進みながらダンに聞いてみる?


「そいつは教官のシックが判断することだ。シックが連れて行くってんならいいんじゃねぇか?」


「そりゃそうだね」


「どうせ巣を見付けたらそれで終わりだからな。途中で出てくるやつらを討伐がてら訓練してけばいいってことだろ。パーティー内での連携もあるが知らないパーティー同士の連携ってのもあるからな」


「共闘ってやつ?」


「そうだ。相手が大物だったり、見付けた巣がそれなりの規模なら複数パーティーで討伐に行ったりするからな。複数パーティーの連携ってのは必要だ。まぁお互いに何が出来るか知ってないとダメだからこうやって初めて一緒になる場合はさっきみたいに分かれて戦うことになるがな」


なるほどねぇ。でも信頼出来るパーティーじゃないと背中預けるのは危険だな。


こうやって話しながらでもゴブリンはわさわさと襲って来ているが上位種はいないようで散発が連続してくるって感じだ。巣探しに入ってからは俺達が先頭で進んでいるため不意打ちを食らうことはない。後ろの新人達は耳拾いだ。死体はいちいち焼いてられなくなり放置している。


「あそこの洞窟から出てきてるね」


「そうだな。あれが巣だろう。おいシック見付けたぞ」


「あぁ、解ってる。あそこは随分と前にも巣になった洞窟だ。昔は鉄鉱石が取れてな、結構深くまで掘られてるんだ。まったく面倒だぜ。よし、場所も確認したし一旦戻るぞ」


洞窟じゃなくて人工物だったのか。


俺達は来た道をまたゴブリンを倒しながら戻って行った。目についたゴブリンの死体は一応焼きながらね。



「今日は色々とありがとうな。こいつらにも良い勉強になっただろ」


「こちらこそ。他の人とこうやって実戦に出るのは初めてだったから勉強になったよ。ゴブリンの巣退治宜しくね」


「ああ、ギルドに討伐隊出すように言っておく。お前達の授業は今日で終わりだがまた遊びに来てくれ」


「ありがとう。またね」


これで連携の実地研修は終わりだ。次からは自分達で相手に合わせた連携をしていかないといけない。



馬に乗りながら商会へと向かう。


「おやっさん、シルフィードの武器作って」


「なんじゃい藪から棒に」


「冒険者学校で連携の実地訓練に行ってたんだけどさ」


最近学校に入り浸りだったのでドワンの所にくるのは久しぶりだったので今までの事を話した。


「嬢ちゃんはお前の魔剣を使えたんじゃな?」


「問題なくね。炎の剣にしてゴブリンを一掃してたよ」


「そうか。初めて手にして使えたか。なら作っておいてやる」


そういってシルフィードの手をにぎにぎした。いきなり手を握られたシルフィードはえっ!えっ!?と驚く。


「おやっさんはシルフィードがどんな剣を持てるか確かめてるんだよ」


そう教えてやると顔を真っ赤にした。


「しばらく掛かるぞ。防具も必要じゃろうからな」


シルフィード用の防具も作ってくれるらしい。春が来たらエルフの里探しに出るから防具にも慣れておいた方がいいしな。


じゃあ宜しくねぇ~と軽く頼んで屋敷に戻った。



晩飯を食いながらアーノルドにゴブリンの巣が出来ていた事を報告する。


「あいつらすぐに増えやがるからな。上位種が先に出て来たなら他にもいるし、その上の奴もいるだろうな」


「まだ強いゴブリンがいるの?」


「そうだな。ゴブリンが増えると進化するのか強くなっていくやつがいるんだ。それから巣というより町並に増えると統率してくる奴が生まれるからな。たかがゴブリンと侮れなくなるぞ」


「へぇ、それはやっかいだね」


「この辺では見たことなかったがな」


「ゲイル、昔アーノルドと冒険してる時にゴブリンの国みたいな所があってね、王様みたいなやつも居たわよ。なかなか手強くて苦労したの覚えてるわ。20組くらいのパーティーで討伐しに行ったんだけど全滅したパーティーもいたしね」


「そこまでの規模になると戦争だね。結局討伐出来たの?」


「最終的に領軍も出て来て殲滅したわよ。領兵もたくさん死んだけどね」


へぇ、軍まで出てくる騒動だったのか。


「それって東の辺境伯のところ?」


「そうだな。ベントが夏に勉強に行った領の内の一つだ。たかがゴブリンごときと侮ってたんだろうな。一次隊が全滅して本隊が出て来てようやくってとこだ」


「アーノルドがゴブリンの王を討たなかったら本隊も危なかったのよ」


「へぇ、父さんがゴブリン王を討ったの?すごいお手柄で報酬もらえたんでしょ?」


「それがいつの間にか軍の手柄にされてたわ」


「なにそれ?酷いね」


「俺達はまだ若かったしな。アイナと二人だったし周りは軍の人間ばかりだ。本隊が出て来て手柄を冒険者に持っていかれましたとはならんかったんだろう。よくある話だ」


その時の事を思い出したのかフンッと言いながらワインを飲んだ。



連携の実地訓練はシルフィードの剣が出来るまで待ってから行くことにしたので小屋で剣と魔法の特訓に費やしていた。



あれから一週間経つがもう少し待てとの事だった。ドワンにしては時間が掛かっている。きっと普通の剣ではないのだろう。


「ダン、この前のゴブリンの巣どうだったんだろね?」


「気になるならギルドに聞きに行ってみるか?」


という事でギルドに到着。またざわざわされてるけど気にしない。


「ギルマスかシックいる?」


あの受付嬢だったのですぐにギルマスを呼んでくれ、そのまま部屋に通された。



「こんにちは。ゴブリンの巣どうだったか聞きに来たんだ。」


「あれか。いまやってるとこだ」


「え?まだやってるの?」


「あそこは中が迷路みたいに入り組んでるからな。根絶やしにするには時間が掛かるんだよ」


「大変そうだね」


「そうだな。ゴブリン舐めてかかって怪我するやつも多いしよ。幸い死人は出てねぇけど」


「あそこは前もゴブリンの巣になったんでしょ?出入口埋めちゃえば良いのに」


「入り口塞いでもな、いつの間にか繁殖して出てきやがるんだ。やるなら全部埋める必要があるから無駄なんだよ」


ということは繁殖というよりポップアップしてくるんだろうな。それだと根絶やしにするのは無理だな。


「ありがとう。ちょっと気になってたから聞きに来ただけなんだ」


「そうなのか?お前らも巣潰しに行ってくれりゃ助かるんだがな」


「それは冒険者に任すよ。俺達は一般人だから」


そういうとお前みたいな一般人がいるかと言われた。



それから3日ほどしてゴブリンの巣退治が完了したとアーノルドから聞かされたのだった。





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