第259話 冒険者学校での訓練
秋も深まり始めた頃に闘技場が完成した。
「ようやく、ようやくワシも普通の生活に戻れるわい・・・」
建築ラッシュが続くなかで闘技場を期日に間に合わせる為、この1年間ろくに休めなかったミゲルは涙を流していた。
「親方、お疲れ様。これで釣りに行けるね」
「そうじゃ、いつもワシだけ仲間外れにしおって。今年は絶対に行くからな」
「里帰りはどうするの?」
「そうじゃな。春になってから考えるわい。今からじゃ無理じゃしな」
今から出たら冬の間中ドワーフ王国にいることになるしな。大工の仕事が減るとはいえ、4ヶ月くらい不在にするのはまずいらしい。
「12月に入ったら闘技会やるぞ。どんな方式がいいか考えてくれ」
おいアーノルド。ここまで何も考えてなかったのか?
「武器部門と魔法部門、パーティー部門で予選と決勝すればいいんじゃない?時期は年末の休みの時に決勝になるようにして」
「そうしよう」
あと、賞品も頼むと言われた。コンサルティング料もらうからね。
早速領内に闘技会の告知が行われた。予選観覧は無料で決勝戦は有料だ。良く見えるアリーナ席みたいな所は銀貨1枚。一般席は銅貨30枚で設定した。一応貴賓席も設けてあるがそこは招待客とかだな。そのうちこの大会が有名になると他領から貴族とか見に来るかもしれんし。
闘技会の告知は瞬く間に領内に広がり、冒険者達の間でも話題になっていった。
それから数日後
「ゲイル様、またお世話になります」
シド達がシルフィードを連れてワインを運んで来た。
「シルフィードさんお久しぶりですぅ」
とミーシャも嬉しそうだった。
「ぼっちゃん、こっちの樽があのシワシワ葡萄のワインです。ずいぶんと甘いワインになりましたよ」
ダンに味見をさせると、
「確かに酒だが本当に甘いな。アイナ様とか好きなんじゃねぇか?」
「このまま出してもいいんだけど、あと何年か寝かせてもっといい物にするよ。それ専用の瓶も作って貰ってあるからね」
へぇとあまり感心の無さそうなダン。甘い酒は好みではないらしい。
「シド、全部商会に運んでくれる?あと何回か来るでしょ?最後の100樽だけ小屋に運んでくれたらいいから。」
シドにワインの運び先を指示した後にバルでご馳走する旨を伝えた。
ーバルー
「こんな店が出来たんですか?凄い流行ってますね」
「好きな物食べて飲んでね。商会の店だから遠慮なくどうぞ」
他のボロン村の人達もあまりの明るさと賑やかさに驚いていた。俺が店にいると冒険者達がざわつくので個室を使った。
注文を取りにミケが来た。
「店に来るなんて珍しいやん。友達連れて来たん?」
「ボロン村というところがあってね毎年作ったワインを運んで来てくれてるんだ」
俺はそれぞれとミケを互いに紹介した。
「へえ、そっちのシルフィードちゃんは冬の間ゲイルの家に住むんや。ウチも従業員の所に住んでんねんで。ていうてももうすぐここに引っ越すけどな」
ミケ用の屋根裏部屋もそろそろ完成する頃だしな。うちから通うより楽になるだろう。
軽快にしゃべったミケは注文を受けて戻って行った。
「ミケさんて変わった話し方されますね」
「違う国から来たからね。方言だよ」
へぇと感心するシルフィード。お互いハーフ獣人とハーフエルフということは説明していない。
運ばれて来た料理と酒に喜ぶシド達。この後は近くの安宿に泊まって朝出発するとの事だった。
ちょうど酒が無くなるなというタイミングでミケが追加注文を取りにくる。あいつ覗いてるんじゃなかろうか?
うまくオススメとかこれがこの酒に合うとか注文を引き出していく。押し付けるわけでもなく非常に接客が上手い。ミケがいると単価アップもするだろうな。
もうお腹パンパンというところでお開きとなった。請求は商会に出しておいてと社用族みたいなことをしておいた。
やっぱりこういう店があると楽でいいね。
シド達が帰った翌日からは早速シルフィードの特訓だ。春になればエルフの里探しに出ないといけないからな。
ちゃんと村でも訓練は続けていたようで攻撃魔法の精度も撃てる数も格段に良くなっていた。
「ぼっちゃん、これからは連携の訓練しておいた方がいいかもしれんな。剣の稽古は朝だけにして、その後は連携の稽古にするってのはどうだ?」
「そうだね。どうやってやるの?」
「そうだな、基本的な動きを練習した後に実戦に出るのが一番いいかな。」
俺やダン、アーノルドとか連携の練習はしたことがない。アーノルドとダンは初めてでも上手く連携出来てたし、俺はそれに付いていくだけで良かった。しかし、この3人だとそうはいかない。特にシルフィードは実戦経験ないしな。
「冒険者学校って連携の練習とか教えてるかな?」
「どうだろうな?明日覗いてみるか?」
「そうだね、基本さえ教えてもらったらいいからギルマスに頼んでみようか」
と言う事で明日冒険者学校に行くことになった。
ー冒険者ギルドー
「こんちはー!」
朝一番にギルドに行くとこの前の受付嬢がいた。
ピシッと立って挨拶され、俺がギルドに入っただけでザワつかれる。別にいいけどさ・・・
「ギルマスいる?」
受付嬢に伝えるとすぐに呼びに行ってくれた。
「よう坊主、なんかまた冒険者がやらかしたか?」
ギルマスがそう言うとシンとなる冒険者達。
「いや、ちょっとお願いがあってね、今度この3人で冒険に出るんだけど、連携の基本を学校で教えてもらえないかなと思って」
「冒険に?何を狩りにいくつもりだ?」
「いや、ちょっと探し物しにいくだけ」
ほうと頷きながらギルマスの部屋に連れて行かれた。
「嬢ちゃんはハーフエルフか。それでエルフの里を探しに行くってか。随分と困難なミッションだな」
「そうだね、父さん達もどこにあるかわからないと言ってたから時間はかかると思うけどね。探しだしてみせるよ」
当然これは秘密だよな?と聞かれたのでそうだと答えておいた。
「まぁ、学校で教えられることは教えてもらえ。そんなに時間はかからんだろ」
ギルマスとの話は終わり、学校に連れて行って貰った。講師にギルマスから直接指示をしてもらい訓練を開始した。
「俺はシックだ。そっちはダンだな?冒険者に復帰するのか?」
ダンは両手を広げてまさかと答えた。
「シックさん宜しくね。俺はゲイル、こっちはシルフィード」
「まだ子供に見えるが大丈夫か?」
「シック、ぼっちゃんは大丈夫だ。シルフィードは実戦経験がねぇが剣も魔法もそこそこ使える」
「それならいいけどよ。どんな攻撃とか得意なものとか役割は決まってるのか?」
「まぁ、俺は剣で前衛だが、どっちを後衛にするか迷ってるんだよな」
「じゃあ、坊主と嬢ちゃんの腕を見せくれねぇか?それで判断するわ」
という事でシックと立ち合いすることになった。
初めはシルフィードだ。
「嬢ちゃん好きに打ってきていいぜ」
「よ、宜しくお願いします」
こうして初めて知らない人と立ち合いすることになったシルフィードは少し緊張しているようだった。
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