第251話 鬼ドワーフ
俺達の後からドワーフ達の馬車が付いてくる。ミサは俺の後ろに乗りやがった。
ひそひそとまた違う女を乗せてやがるとか聞こえてくる。ミサと俺だと姉弟とかにしか見えんだろ。4歳児に女連れてるとか言うか普通?
「ここがドワンのオッサンの商会なの?おっきいねー」
まずミゲルが改装中の店から出てきた。
「あー、ミゲルのオッサンだー!」
「なんじゃ?お前ミサか?」
「そーそー、良く分かったね」
「ワシをオッサン呼ばわりするのはお前しかおらん。20歳程しか変わらん癖にオッサン言うなっ!」
ということはミゲルは70歳過ぎか。ドワンは90いくつとか言ってたからな。年齢だけ聞くと高齢社会まっしぐらだ。
「ようやく来たか」
ドワンも出て来た。取りあえず商会の中に馬車を入れて馬は外に繋いでおいた。
「なんじゃ、昨日着いてアーノルドの所に泊まったのか?」
「ご飯めっちゃ美味しかったよ。ベッドもこうバインバインでさー!」
なんだよバインバインって。
「お前らのベッドにも同じマットを入れてある。あれはゲイルが考えたものじゃ」
「わおっ、ゲイル君やっぱり凄い」
今日もミサは元気に騒がしいな。早速だけどこれからの打ち合わせをする。
「なんだ、ワシのする事多くねぇか?」
「お前は勝手に付いて来たんじゃろが、嫌ならドワーフの国に帰ってもいいんじゃぞ」
「誰もやらねぇとは言ってねぇだろ。せっかく来たのにそんな言い方すんなっ!」
「いきなりグチグチ抜かすからじゃ」
ドワーフ同士の会話っていつもこんなんだな。
「ファムさんのする事多いけど、まず魔法を覚えて貰おうと思うんだ」
「魔法を覚えるじゃと?ワシは魔法なんて使ったことないぞ」
「俺が教えるから大丈夫。植物魔法と土魔法を覚えてね。サイトは初めの間はファムさんを手伝って。まだ紙の製作には手を付けられてないから」
「ねーねー、私はー?」
「ミサは王様と王子様のアクセサリーを作って欲しいんだ。物は決まってるからデザインと製作だね」
「オッケー!」
「ジョージさんはしばらくここの蒸留酒作り、リッキーさんは星の欠片が手に入るまで衛兵が使う刀を打って貰いたいんだ。父さんが衛兵に刀を持たせたいみたい。腕はそんなに無い人達だけどいいかな?」
「衛兵とはこの街を守る為の者達だろう?俺が打った刀がこの街を守るのならそれは誇らしい。構わんぞ」
「リッキー、お前はアーノルドの腕を確認したら戻るんじゃないのか?」
「ここには俺の刀を理解してくれる者が居て、必要としてくれる者がいる。俺は戻らん」
「そうか、なら向かいのワシの店をくれてやるからそこを使え。武器作りに必要な物は全て揃っておる。鉱石からの抽出や融合はワシの所でやってやる」
「おやっさん、店をあげちゃうの?酒屋に専念するつもり?」
ごすっと頭を殴られる。
「誰が酒屋じゃっ!ワシはここでも武器を作れるようにしておるわっ!」
いででで、子供の軽い冗談じゃないか・・・
「おやっさん、みんなの馬とかどうする?うちで預かってもいいんだけど、毎日面倒臭いでしょ?」
「それなら裏に準備しておる。ウォッカもウイスキーもこっちに連れて来るぞ。ちょうど裏のやつらも引っ越しおっての」
ひでぇ・・・
「もう出来てるの?」
「まだじゃ。整地は終わっとるが柵と馬小屋を作らにゃならん。ミゲルがぐずぐずしとるからな」
ミゲルは子供の頃ドワンが怖かったらしいから文句言えないんだな。地下室の時もゾンビみたいになってたし・・・
「馬小屋と柵なら今俺が作るよ。別に木じゃなくてもいいでしょ?扉だけ親方に作って貰えばいいようにしておくから」
俺達は裏に回る。裏の店は跡形も無く更地になっている。おまけに道路向かいまで更地になってる・・・
「おやっさん、道路向こうまで更地になってるんだけど・・・」
「最近引っ越しが多くての。買い取っただけじゃ」
・・・・
・・・・・
・・・・・・
考えないようにしよう。
「どっちを牧場にする?」
「どっちでもええがの」
商会の裏はまだ拡張するかもしれんから道路向こうにしておくか。
「じゃ、向こうを牧場にするよ」
まず整地されてるとはいえ、小石がたくさん有るので魔法で砕いて土地をならす。普通の馬小屋を6頭分とウイスキー用のデカイ奴を3頭分。おそらく来年ボロン村から馬が来たらミゲルが買うだろうからね。普通の馬1頭分とデカイ馬2頭の予備を確保しておく。馬が盗まれないように2mくらいの柵をどんどんどんどんと生やして、そこらじゅうに牧草の種をばら蒔いた。植物魔法をかけて少しずつ伸ばしてやったら完成だ。
その様子をファムが見て驚いていた。
「何でこんな短時間で全部出来るんじゃ?」
「土魔法と植物魔法を使ったからね。これ覚えてね。」
さーっと顔色が無くなるファム。
「出来る訳がねぇ・・・」
「大丈夫、大丈夫。何度もやってたら出来るようになるから。そうやっておやっさんも土魔法攻撃出来るようになったから」
「ドワンも出来るようになったのか?」
「そうだよ。だから特訓だね。作物の生産はめちゃくちゃあるから、魔力切れで倒れても俺が回復するから大丈夫」
遠回しに言ったが倒れるまでやれと言われたのが理解出来たらしい。どんどん顔の色が無くなっていく。色白のドワーフは珍しい。
「ワシ、ここに来たの間違いだったかも・・・」
そう言ったファムの背中をバーンっとドワンが叩く
「何言っておるんじゃ。この世の中に無料で魔法を教えてくれる奴がどこにおるっ?しかも無詠唱でだぞ。金払うならお前の全財産払ってもまったく足らんわいっ!」
「はっ、そう言われてみれば・・・」
「わかったらこれから坊主を先生と呼べっ!」
「は、はいっ!宜しくお願いします先生」
「いや、先生とか止めて。ゲイルでいいから」
俺がそう言うと、がーはっはっはとドワンは笑った。
「おい。誰かミゲルを呼んで来てくれ、ここに扉を付けさせろ」
ファムに呼ばれてやってきたミゲルは俺をうらめしそうに見ている。
いや、俺は仕事減らしてあげたんだからね。
ドワンはミゲルにさっさと扉を付けろと怒鳴り付けていた
鬼だ・・・
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