第252話 またバーベキュー
数人の大工で牧場に扉を付けたミゲルはじーっと俺を恨めしそうに見つめながら食堂の改装に戻って行った。
いや、その目はドワンに向けろよ。
出来たばかりの牧場に馬を放してやると牧草をがつがつと食べ始めた。
次は蒸留場所に行ってドワンがジョージを皆に紹介して後は任せた。リッキーは向かいの店に行き、自分の使いやすいように片付けていくらしい。
「この後はどうするんじゃ?」
「いや、今日はゆっくりするもんだと思ってたから何も用意してないよ。ウロコも持って来てないし」
「そうか、じゃあどうするかの?」
「4頭の馬連れて来たけど、馬は誰が使うの?」
「ファムどうなんじゃ?」
「荷馬車を引かせただけで誰のとかは決まっておらんぞ」
「皆は馬に乗れるのか?」
「ワシは乗れるが後は知らん」
「私は乗れないわよ」
「僕は乗れます」
ファムとサイトは乗れるのか。
「じゃあ、森に行ってファムとサイトは魔法の練習しようか」
「ねー、私はー?」
「おやっさんの所で使えそうな鉱石を探すとか?」
「やだ、一緒に森に行きたい」
別にいいけど・・・
「おやっさん、昼飯はどうする?食堂かその辺の串肉でも買ってくる?」
「夜もそうなるしの・・・」
「じゃあ、夜は森の小屋でバーベキューでもする?仕込みする時間がないから簡単なものしか焼けないけど」
「そうするか。じゃあ昼は適当にするワイ」
「じゃ俺達は一旦戻って買い出しと父さん達に言ってくるよ。ファムとサイトの魔法の練習は明日からね。じゃあ後は現地集合で。おやっさん炭持ってきてね」
ダンと戻ろうとするとちょこんとミサがシルバーに跨がる。
「ミサ、聞いてた?後は現地集合になったから」
「買い物に行くんでしょ?私も行く」
「肉を買いにいくだけだぞ」
「いいよ!さぁ行こうー!」
別にいいけどさぁ・・・
先に屋敷に戻ってアイナとブリックに森でバーベキューになったと伝えた。ミーシャとブリックはアーノルド達と馬車で来てもらう。パンと米は持って来てくれるとのこと。
肉屋に到着。
「ようぼっちゃん、新しい彼女かい?やるねぇ」
いらんこと言うな。
「やっだー、彼女だなんてぇ。そう見える?ねぇねぇ、そう見える?」
「おっちゃん、こいつは装飾職人のミサ。そのうち店を出すと思うから奥さんになんか買ってあげてね。ほら、この前母さんが付けてた髪飾りとか作った職人だよ」
「ほぅ、そうかい。宜しくな。俺はミートってんだ。店が出来たら買いにいくよ」
おっちゃんの名前、ミートって言うんだ。きっと肉屋をする為に生まれてきたんだな・・・
「ぼっちゃん、今日は何にする?」
「バーベキューするから適当に見繕って。ソーセージやベーコンもお願い」
「何人いるんだ?」
「えー、ドワーフが7人と・・、うちが6人で13人だね。」
「みんな結構食うよな?」
「うん、余っても大丈夫だから多目に入れといて」
「あいよっ」
ドサッと肉を渡されたのでクロスとシルバーにくくりつける。
「肉屋も好い人だねぇ。私の事を彼女だなんて」
後ろでくねくねするな、落ちるぞ。
「お愛想にきまってんだろ?」
なんかだんだん既成事実化されて行くようで怖い・・・
ぶちょー商会を通りすぎてそのまま小屋に走って行った。
「わぁ、ここが森?」
「そうだよ。剣の稽古をしたり、魔法の練習したりするところ。誰も来ないから気軽に何でも出来るよ」
「やだぁ、誰も来ない所に私を連れて来てどうするつもり?この お ま せ さ んっ」
何が お ま せ さ ん だよっ!
「お前が勝手に付いて来たんだろ?ここにはいつもダンと来るんだよ。いらんこと言うなら、二度と連れて来ないぞっ」
「もう、冗談じゃないっ!そんなに怒んないでよっ」
あー、こういうノリ苦手だ。
「ぼっちゃん、腹減ったぞ」
「あ、昼飯買うの忘れてたね。夜と同じメニューになるけど、ソーセージとか食べる?」
「それで構わんぞ」
という事でソーセージを食べるけど、ちがう食べ方をしよう。
小麦粉に玉子入れてちょっぴり砂糖入れてかき混ぜる。ソーセージを棒に刺してそれを付けて油で揚げる。なんちゃってアメリカンドッグだ。
「ミサは辛いの食べられるか?」
へーきとのことなのでトマトソースとマスタードを付けてはいどーぞ
「ぼっちゃん、なんだこれ?」
「アメリカンドッグってものだよ。おやつみたいなもんだけど、そこそこお腹いっぱいになるから」
酒は寝かせている蒸留酒しか無いから出さなずに炭酸水を出しておく。
「お、結構旨い」
「ほんとだーっ!美味しー」
ダンは10本、ミサは5本も食べた。小さめだけどこれ結構お腹に溜まるんだぞ。
ダンと剣の稽古をして、刀の素振りもしてみる。ダンも扱い方を知らないのであーだこーだと話ながら研究する。
「剣はこう斬るじゃない?刀はこう引くようにしながら斬るのが一番斬れるんだよ。で、刃の所で攻撃を受け止めるんじゃなくて、根本の刃が無いところと、この鍔っていうんだけどね、ここで受けるしかないんだよ。実際には受ける前に斬るか後に避けながら斬ったり、体術を組み合わせるのがいいと思う」
ふんふんとダンが頷き、木で作った刀でやってみる。ダンは剣で俺は刀だ。
突きながら踏み込んで下がる時に下段から斬る。
「うおっ、あっぶねぇ」
「これ有効だと思わない?」
「ダッシュが効く奴なら有効だな。アーノルド様みたいな攻撃食らったらどうしようも無いぞ」
「父さんがやったやつダンも出来る?」
「あそこまで速いのは無理だな。しかしアーノルド様は昔から刀使ってたみたいに扱うよな?」
「そうだね。見ただけで使い方解ったみたいだし」
「ホントに恐ろしいと思うわ」
俺達のやりとりをミサは暇そうに見ていた。
「そろそろ準備しようか?」
肉屋のおっちゃんは気が利く。もう焼くだけにしてくれてある。シマチョウもマルチョウも入ってる。タンだけ塊で入れてあった。厚切りと薄切りどちらでもいけるようにと。
今日は全部薄切りだ。
「私がやるーっ!」
ミサが手伝うと言い出した。試しにやらせると手際が良い。ちゃんと均一に薄切りをストストしていく。
「やるじゃん」
「へっへー、惚れた?」
「あー、そういうのはいいから」
「料理するの結構好きなんだよねぇ。ゲイル君みたいに美味しいのは作れないけど」
「これだけ手際が良かったら料理人になれるよ」
「そう?でも装飾の方が好きなんだよねぇ。料理はおうちで作るだけでいいかな?」
それは解る。商売で料理をするのは大変なのだ。
ニンニクとネギを刻んでご飯を研いで水に浸けておく。土鍋5個もあれば足りるだろ。
準備完了した頃にドワーフ達が馬に乗ってやって来た。
そのあと少し遅れてうちの馬車が来る。
「あと何を手伝えばいいですか?」
「もう準備終わってるから後は焼いて食べるだけ、たまには食うことに専念してくれ」
「え、そうなんですか?」
「そうそう、だから簡単なものしかしてないから」
「ありがとうございます」
ブリックはちょっと嬉しそうだった。
炭に火を点けて庭のライトのスイッチオン!めっちゃ明るい。
さ、食うぞと言って皆が目一杯食べて飲んでしている。俺は右手にミサ、左手にミーシャに挟まれ両手に花状態だ。このポジションは俺の育てている肉まで食われてしまうのが難点だ。
さ、明日から本格的にドワーフ職人の稼働だな。ファムはどれくらいで魔法を覚えられるかな?
ん?ひーふーみーよー・・・
あれ、ドワーフが6人しか居ない。
あ、ミゲルが来てないんだ。
「おやっさん、親方は?」
「仕事じゃ」
酷ぇ・・・・
俺は焼き肉てんこ盛りの焼肉丼を作り、ドワンに持って帰らせたのだった。
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