第249話 ドワーフ達との晩ご飯
「ようこそディノスレイヤ領へ。あなた達がこちらに来てくれる職人さん達ね。ここの領主の妻、ゲイルの母と言った方が分かりやすいかしら?アイナ・ディノスレイヤよ」
応接室に座っている5人のドワーフに挨拶をするアイナ。
ファムが代表して挨拶と皆の紹介をした。
「その髪飾りとイヤリングをしてくれてるんだ。それ私が作ったんだよ」
「あら、そうだったの?素敵ねこれ。ゲイルがお土産にくれたのよ」
むむむ、ゲイル君のお母さんも可愛いらしいぞ・・・
「あ、あのっ、ゲイル君はどこにいますか?」
「多分森だと思うけど、あちこちでなんかしてるから確実じゃないわ。夕方には帰ってくるからここで待ってたら?お昼ご飯まだでしょ?」
「ま、まだ食ってはおらんけど・・・」
「じゃ、お昼ご飯食べて休憩してなさいな。長旅で疲れてるでしょ?馬もうちの牧場で預かっておくからゆっくりしていきなさい」
「い、いやしかし・・・」
「ねぇ、ファム、何赤くなってんの?」
「う、うるさいっ!」
「ゲイル君のお母さん、遠慮なく頂きまーす」
アイナでいいわよと返事したアイナは食堂に案内した。
大慌てのブリックが用意したのはホットドッグカレー風味とフライドポテトだ。
「わ、めっちゃ美味しい。王都のご飯なんて比べ物にならないや」
「坊主の作った飯は旨かったからな。当たり前じゃ」
「やっぱりゲイルさんは凄いですね」
それぞれが喜んで食べていた。
「ゲイルがお世話になったみたいでありがとうね皆さん」
「いや、坊主・・・、ゲイルが来てくれたお陰でドワーフの国に風が吹いた。一目で俺の刀の価値を見抜いてくれたのはあいつが初めてだった」
「あなたが刀職人だったのね。アーノルドがあなたが来るの心待ちにしてたわ。お土産の刀はゲイルに預けたままよ」
「受け取らずに俺を待っていると?」
「アーノルドは剣の価値がわかるのよ。昔にドワーフの国で買った剣をずっと折らずに使ってるわよ。職人が魂を込めて作ったものだからって」
「そうか、それは俺も会うのが楽しみだ」
そのあとドワーフ達はゲイルがあーだったこーだったと嬉しそうにアイナに話したあと、部屋に案内された。あまり広く無いディノスレイヤの屋敷。男2人ずつ、ミサ一人で部屋を分け、今晩ここに泊まる事になった。
ーぶちょー商会の隣の土地ー
トンテンカントンテカン
「さっさとやれっ!仕事が詰まってんだ」
「あ、親方。もう店改装してんの?」
ゲイルはギヌロとミゲルに睨まれる。
「誰のせいじゃ?」
ドワンだよね?
「まだ料理人決まってないよ」
「職人どもの家がないじゃろが。取りあえず2階の寝泊まりするところは終わったから、今は店をやっとるところじゃ」
なるほどね、でも俺のせいじゃないよ。
「坊主、料理人は見つかったか?」
ドワンが隣の商会から出てくる。
「まだだよ」
はよせいっとドワンに言われたけど、応募者が少ないんだよね。店が思ってたより大きいから料理人一人だと無理だろうし。
「ぼっちゃん、料理人のテストってどんなことするつもりなんだ?」
「え?目の前で調理してもらって食べてみるだけだよ」
「そんなんでわかるのか?」
「皆同じようなものしか作れないだろうから塩加減のセンス見れたらいいんだよ。そこがダメなら教えても無駄だからね。あと同じ物を3回作らせて全部同じ味になるかもするけど」
「なんで3回も作らせるんだ?」
「家庭料理ならいいけど、店をするなら毎回同じ味で作れないとダメなんだよ」
ふーんと分かったのか分かってないのか分からない返事をされた。
ー帰宅したゲイルー
「ただいま~」
「あ、ぼっちゃま。ドワーフさん達が来てますよ。」
「あ、着いたんだ。どこにいるの?」
「部屋で休まれてます。食堂に案内しますね」
ミーシャが皆を呼びに行ってくれた間に厨房へ向かう。
「ブリック、晩御飯なにするの?」
「あ、ぼっちゃん、鉄板焼にするつもりなんですが、一人で運べなくて」
「ダンを呼んで手伝って貰って。あとそのまま一緒に食べろと言っておいて」
鉄板焼セットを一人で運ぶつもりだったのか?ブリックって人に頼ろうとしないんだよなぁ・・・
「あ、ゲイル君だ!浮気してなかった?」
食堂に戻るとすでに皆がいて、ミサが飛び付いて来た。チラッとミーシャを見てから俺のほっぺたにムチューッってしやがった。
「ミサ、俺は晩飯じゃねーぞ」
「ちぇっ!何か反応してよ」
「しただろ?取りあえず座れ」
いーっだ!とむくれて席に付くミサ。
「みんなお疲れ様。ようこそディノスレイヤへ」
それぞれがおうっと返事する。そこへアイナもやって来た。そわそわするファム。何赤くなってんだ?
「アーノルドももうすぐ帰ってくると思うわ。先に飲んでる?」
うんうんと頷くドワーフ達。
「サイトも飲めるの?」
バンデスの所で下働きをしていたサイトは幼い。
「ゲイル君、何言ってんの?ドワーフは生まれた時から飲むんだよ」
それは言い過ぎだろうと思ったらそうでもないらしい。どんな肝臓してんだ?
ブリックとダンがごとごと鉄板焼セットを運んでくる。
ダンが俺を見て少し嫌そうな顔をした。やっぱりここで飯を食うのは嫌みたいだな。
他の使用人を呼んでエールの金属樽と炭酸水の金属樽、蒸留酒、レモンを持ってきて貰う。白ワインと赤ワインも運ばれて来た。
「エールはこっち、これは炭酸水、蒸留酒を炭酸水で割ってもいいし、水と氷はこれね。あとこれガムシロップって言って甘いやつ」
「ゲイル君、甘いのは何に使うの?」
こうやってねと蒸留酒シングルに炭酸水とガムシロを入れてレモンを搾る。
「はい、飲んでみて」
アイナも同じの頂戴というから作って渡す。
「ゲイルさん、自分も同じものを頂いていいですか?」
酒職人のジョージにも作ってやる。
「何これ美味しー! お酒に甘いの入れたらこんなに美味しいの?」
「好みだよ。食べる物にもよるし。でも初めの一杯にはいいだろ?」
「エールより断然いいよ!」
「酒に色々混ぜて飲むのか。これは新しい」
ジョージよ、新しくはないぞ。
サイトも同じのを希望したので渡す。
「ほんとだ。美味しいです」
ファムとリッキーは甘くない方がいいらしく。炭酸強化して冷やされたエールを旨そうにゴクゴク飲んでいた。
「後は勝手に飲んでね」
こうしないと延々と作らされるからな。
まだアーノルドが帰って来ないから先に食べようということでブリックが鉄板を温めだした。まずサラダが運ばれてくる。レタスとキュウリ、ヤングコーンの上にコーン入りポテトサラダが乗せられていた。味付けはマヨネーズだ。
「この黄色いのは坊主が持って帰ったあの飼料か?」
「あれ育ててみて種類が分かったから、分けて育ててるんだよ。その中から美味しいのを選別するのを繰り返したから、かなり美味しくなってるよ」
ポテサラを食べるジョージ。
「う、旨い・・・。家畜の餌がマヨとこんなに合うとは・・・」
ドワーフの国でもマヨネーズ作ったけど、トウモロコシとは合わせてなかったからな。
うちでは育てたトウモロコシをせっせと湯がいて塩水に浸けて冷蔵庫に入れてあるからいつでも食べられるのだ。
「お、やっときたのか。待ってたぞお前達。俺はここの領主のアーノルドだ」
仕事で遅くなったアーノルドが帰って来て席に着いた。ダンはエールをアーノルドと自分に入れていた。他の使用人の手前、アーノルドが来るまで自分も飲んでなかったのだ。
全員揃った所で乾杯した。
サラダの次はコーンスープ。ファムはこれにも驚いていた。
「皆様、本日のメインは鶏肉のハーブソルト焼きと牛肉のステーキとなります。焼き方はお任せで宜しいでしょうか?」
焼き方?
「ブリック、俺と父さん、母さん、ダンはミディアムレア、他はミディアムで」
かしこまりました。
「坊主、今のは呪文か?」
「牛肉の焼き加減だよ。鶏肉は普通に焼くけど、牛肉は好みで焼き加減を変えるんだよ。ミディアムってのは普通ってこと。まぁ、楽しみにしてて」
鶏肉は普通に焼いて食べる。うん美味しいよね
皆もがつがつ食べている。
ステーキはサーロインかな?皆はヒレよりこっちの方が良いだろう。
ボワッとフランベすると一斉に驚くお馴染みの光景だ。
「ゲイル殿、今のは酒を燃やしたのですか?」
「そうだよ。蒸留酒は燃えるからね。ああやって酒の香りを肉に移すんだよ」
酒にはこんな使い方が・・・ジョージはなにやらぶつぶつ言っている。
ステーキが焼け、カリカリニンニクと共に出される。
ドワーフ達は中が赤いことにぎょっとしたが、より赤い肉を俺達が食べ出したのを見て食べた。
「うわっ、美味しい・・・」
肉汁たっぷりのステーキを堪能したあとにイチゴの練乳掛けが出て来て食事は終了した。
もうミサはずっとはしゃぎっぱなしだ。さすがピッチピチの52歳、非常に騒がしい。
その賑やかな晩餐も終わり、リッキーは明日の朝稽古を見学したいとアーノルドに伝えていたのだった。
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