第227話 やった!
「見たいものはあるか?」
とドワンに聞かれたのでリクエスト。
「畑にいきたいんだけど」
「ドワーフの国に来て初めに見るものが畑か?」
「タバサさんが出してくれたコーン茶があるでしょ?あれの元が見たいんだよ」
「あれは家畜の餌だと言っておったじゃろ?」
「そうだね。家畜の餌にもいいね」
ざっと見渡す限りの畑が広がる場所に来た。様々な野菜やら麦が植えられている。ドワーフの国は社会主義国みたいな感じで、全て共同管理のようになっているらしい。それぞれがやりたいことをやり、一旦お金は集められてそれぞれの働きに応じて分配される。食料は共同なので稼ぎが悪くても食いっぱぐれることは無く、酒が思う存分飲めないくらいらしい。
だからと言ってサボる人もおらず、それぞれがプライドを持って仕事をしている。
理想的だけど人族社会には難しいな。全員がプライドを持ってサボることなく働く事が前提のシステムはドワーフならでは機能するといったところか。
あ、あった。
「おやっさん、これがとうもろこしだよ。まだ収穫時期じゃないけど」
近くにいる人に声をかける。
「すいませーん。これ1本貰っていいかな?」
好きにしろと返事が返ってきたので、植物魔法をかけて育てていく。花が咲いたところで風魔法で優しくかき混ぜてさらに成長させ、一番上の実をダンにもいでもらう。
「どうすんだこれ?」
「食べてみるんだよ」
「旨いのか?」
「どうだろうね。美味しいかもしれないし、そうでもないかもしれない」
「なんじゃそら?」
「とうもろこしには色々と種類があってね。美味しいのとそうでないのがあるんだよ」
とりあえず鍋を作り、もぎたてのとうもろこしを茹でる。塩持ってくるんだったな。
そろそろかな。じゃばっとお湯を捨ててダンに皮を剥いてもらった。俺の可愛いお手々ではアチアチ過ぎるのだ。
剣で3つに切り分けて食べてみる。
うん、そこそこ旨い。バター醤油で食べたいところだ。
「なんだこれ食えるじゃねぇか」
「本当じゃな。結構旨いぞ」
「じゃあ種貰えないか聞いてみよう。うちの領でも栽培出来ると思うから」
さっきの人に聞いてみよう。今食べたのは飼料用なのかな?飼料用は食べたことないから判別がつかない。元の世界のと比べたらもぎたてなのに甘味が少ない。品種改良されてないからなのか飼料だからなのか・・・
「すいませーん。ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「なんじゃい? ん? なんでこいつだけこんなに育ってるんだ?」
「聞きたい事があるんだけど」
「さっきからなんじゃこの子供は?お前は誰じゃ?」
「突っかかるなファムよ」
「あ、ドワンさんじゃないですか?いつ帰ってきたんで?」
「昨日じゃ。坊主はワシの客人じゃ。何やら聞きたいことがあるみたいじゃから聞いてやれ」
「何が聞きたい?」
「ここに植えてるとうもろこしは全部同じ種類?」
「黄色いのやら紫やら色々と混じってるぞ」
一種類だけじゃなさそうだな。
「まだ種残ってる?」
あるぞということなので穀物庫に連れて行って貰う。
「ここいらにあるのが家畜の餌になるやつの種やら種芋じゃ」
種を見せてもらうと何種類ものとうもろこしの乾燥したのが混ざっていた。
どれがどの種かわからんな・・・
お、これは爆裂種じゃん。これは明らかに形が違うからわかる。他のは実際に植えて育てて食べて分けるしかないな。
「この種売ってもらえないかな?」
「かまわんが、売りもんじゃねぇからな。必要な分だけ持ってけ」
やった!
「あと種芋って言ってたけどどんな芋?」
「向こうにあるやつじゃ」
あー、これ黄金千貫みたいなやつじゃん。しかし、あれは日本で品種改良されたやつじゃなかったけか?それとも違うのか?黄金千貫ならなんでこの世界にあるんだろ?
「この芋っていつから作ってるの?」
「さぁな、昔からあるからな」
「食べたことある?」
「食べれん事も無いがあんまり旨くはないぞ」
「これも貰える?」
「いいけどよ、とうもろこしといい、芋とかどうすんだ?坊主の所にも家畜がたくさんいるのか?」
「それもあるけど、他にも使い道があるんだよ。とうもろこしの種は何種類か混ざってて、食べられる奴、酒を作れるやつ、おやつに出来る奴があった。この芋も酒が作れるよ」
「何っ?酒が作れるじゃと?」
「エールかワインを作ってる人に協力して貰ったらね。俺は一から酒作ったこと無いから」
「ぼっちゃん、酒作れるって本当か?」
「穀物や果物って酒になるんだよ。果樹園で育てる予定の梨もそうだしリンゴとかも酒になるよ」
「ドワンさん、こいつの言うことは本当か?」
「坊主が言うんだ。出来るんじゃろ」
「今すぐ酒は作れないけど、おやつなら作れるよ。試してみる?」
やってみてくれとの事だったので、爆裂種だけ選り分ける。
バターと塩をもってきて貰った。
土魔法で土鍋みたいな物を作り、バターを入れて火を点ける。
ファムは俺の土魔法に目を丸くして、なんだありゃ?とドワンに聞いていた。
「火が強いと焦げるから弱火で加熱してやるとポンポンと音がするから、ずっと揺すってて」
ダンが土鍋を揺すり続けるとポンポンと音が鳴り出してその音も鳴りやんだ。
「もう良いよ。蓋あけて塩かけて」
ダンが蓋を開けると白いモコモコの物が出来てきた。
「ぼっちゃん、これなんだ?」
「ポップコーンだよ。種が爆発して中身がこんな風になるんだよ」
とりあえず説明は後にして皆で試食する。
「初めて食べる食感じゃの。小腹が空いた時にちょうどいいわい」
「これつまみにもなるんじゃねーか?エールに合いそうだ」
「なんてこった・・・家畜の餌が旨いなんて・・・。ドワンさん。この坊主は何者じゃ?」
「ワシの客人じゃと言ったろうが。こやつの作る飯も考えた酒も旨いぞ」
「おい不思議な坊主、とうもろこしや芋が酒になるのも本当なんじゃな?」
不思議って・・・
「出来た後の酒を蒸留しないとダメだけどね」
「蒸留?」
「アルコール、つまり酒精を強くするってことだよ」
?
「ドワンさん、不思議坊主は何を言ってるんだ?さっぱりわからん」
「ファムよ、今夜晩飯を食いに来い。説明するより飲んだ方が早いじゃろ。それとワシらは1ヶ月くらいここにおるから、それまでとうもろこしの種と芋を準備しておいてくれ」
「あとさ、大豆の種残ってる?」
「あ、あぁ」
「ご飯食べに来るときに持って来てくれないかな?」
わかったと答えたファム。自己紹介するの忘れてたな。今晩来た時に改めて挨拶しよう。
その後は街の中を見て回る。
大半が武器屋と防具屋だ。剣や槍、ハンマー等の専門店が多くてそれぞれにこだわりがあるようだ。その他は装飾を施す店やガラス細工、中心部は総合店もあった。
結構買い付けに来ている人たちも多く、冒険者であろう人達もたくさんいた。
「ほとんどが武具店だね」
「ここに来るやつは武器を買いにくるやつしかおらんからな」
飯屋はどこも似たような物しかメニューが無いらしいので串肉を食べて昼飯を済ませた。
「山の中腹からも煙出てるけどあれはなんか作ってるの?」
「あっちは誰にでも武器を売るような奴はおらん。気に入った奴しか売らんとか変わったやつばっかりじゃ」
おやっさんみたいな人がやってるのか・・・
ひときわ煙がたくさん出ている場所に案内してもらう。
「ここは?」
「鉄を作ってるところじゃ」
中に入るとすこぶる熱く、鉄を溶かすためにたくさんの人が鉄を作るために、たたらを踏んでいる。
燃料は石炭かな?
「おやっさん、あの黒い燃料は?」
「以前は薪じゃったがの。聞いて来るわい」
ドワンが使ってる燃料を聞きに行く。
「黒い燃える石らしいわ。鉱石を探してたらゴロゴロ出てきたらしい」
やっぱり石炭か。
しばらくたたらを踏むのを見てからドワンの家に帰った。
パンの仕込みをダンに手伝って貰いながらタバサに教えておく。
豚肉を味噌漬けにしておこう。きっとこれはバンデスも好きだろうからな。これは明後日くらいに食べ頃かな。
続いて牛と豚肉をミンチにしていく。晩御飯はハンバーグの予定だ。
タバサとみんなのご飯を作るコックみたいな人もいるので手伝わせ、ベーコン用の豚肉とハムも仕込んだ。
ここにいるのは1ヶ月程度の予定。仕込みに時間が掛かるのはとっととやっておくことに。ソーセージは羊の腸がないので、これからは捨てずに置いておくようにドワンに言って貰った。
飯までもう少し時間があるので、少し寝かせて貰うことに。知らない土地に来ると同じことしてても疲れるんだよね・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます