第226話 ゲイルがいないところでのお話
「こいつは魔導具じゃ。坊主とワシで作った」
「魔道具を作った?どういうことじゃ?」
「魔道具が遺跡からしか見つかっておらんのは知っておるじゃろ?しかし魔道具の秘密を坊主が見付けおった」
「なんじゃと?」
「これ自体はただのミスリルじゃ。この中に仕込まれとる魔石に秘密がある」
「魔石をどうやって使うんじゃ?」
「ただの魔石じゃない。これには土魔法の魔石と普通の魔石が仕込まれておる」
「土魔法の魔石?なんじゃそれは」
「ダンも同じものを持っとるがそっちは火魔法の魔石が仕込まれておる。坊主の腕輪には治癒魔法の魔石じゃ」
「なぜそんな魔石が手に入った?遺跡からか?」
「坊主が全部作ったんじゃ」
「は?魔石を作った?しかも属性魔法の魔石・・・?」
「ここに来る時にワイバーンをこいつで倒した。一発で木っ端微塵じゃったぞ」
「誰が使ったんじゃ?」
「ワシじゃ。ゲイルは魔法の仕組みや魔力の増える条件とかどんどん解明していきよる。それに誰にでも魔法を使えるようにすることも出来るんじゃ。ワシは土魔法を教えて貰った」
「そんな馬鹿なことが・・・」
「ワシは冒険者時代にファイアボールを撃てるようになったが、坊主はワシのファイアボール程度なら何万発でも撃てる。もし魔力が無くなれば魔石からでも人からでも魔力を吸って回復も出来るぞ。逆に人に魔力を与える事も出来る。正に神の如くじゃな」
「そんな馬鹿な・・・」
「親父と立ち合った時は全く全力を出しておらん。坊主が全力を出せば数分でこの街ごと滅ぼせるじゃろ」
「だ、大規模兵器並、いやそれ以上ではないか」
「そうじゃ。ヤツが望めば国はおろか大陸中を手にすることが出来るじゃろ」
「子供になんて危険な力が・・・」
「が、心配はいらん。坊主は神の使徒じゃ。赤ん坊の頃に神よりこの世を発展させろと言われたらしい。ワシらの知らんことや食った事の無いものまで作り出しよる。本人はお告げと言っておるがの」
「神の使徒?」
「まぁ、それは本人が否定しとるがやってることはそれと変わらんの。盗賊でも悪質でなければ助けてやるようなやつじゃ。戦いも望んでおらん」
「それがエルフの里とどう繋がる?」
「坊主が言うには属性魔法の魔石は他にも作れるヤツがおるじゃろうと。現に遺跡から魔道具が出てるのは過去に作ったヤツがいるからじゃと」
「ゲイルみたいなヤツが他にもいるじゃと?」
「可能性の問題じゃ。魔石を作るには膨大な魔力が必要らしくての。魔力の増やし方を知ってる者じゃないと無理らしい・・・が」
「が?」
「魔法陣があれば人工的に魔石を作り出せる可能性が高いと言うておった。坊主は人工的に魔石を作り出して世の中を便利にするつもりでおったがワシが止めた。大規模攻撃魔法陣に使われる恐れがあるでな」
・・・
・・・
・・・
「人間にはない膨大な魔力の持ち主・・・。それでエルフの里を探すのか」
「そうじゃ。ごく薄い可能性じゃが0ではない。好戦的な種族じゃないが人間を恨んでる可能性もある。じゃからこそゲイルみたいなヤツがエルフと人間の架け橋になって貰いたいんじゃ」
「ゲイルを政治利用するのか?」
「坊主は争いを望んでおらん。きっとエルフにとっても良い未来を切り開くじゃろ。本人もそれを望んでおるわい」
「まだ子供なのに大変な使命を負わされとるの」
「そうじゃ。だからワシらが坊主を守らにゃならん。ウエストランドの王も王子もすでにゲイルを全力で守る体制を組んでおる。王からの手紙は私欲や政治ではないぞ。ゲイル可愛さからじゃ。特に王は自分の孫より可愛がって自ら爺と呼べと言ったくらいじゃからの。ガッハッハッハ」
「そうか私欲や政治ではないのじゃな」
わかったとポツリとバンデスは呟いた。
ーエイブリック邸ー
「神の使いが暗闇から現れて盗賊を倒し、光輝く馬車から子供の神様が出て来て傷を癒して死人を生き返らせただと?」
あーはっはっはっは
「ゲイルのやつ何をやらかしてんだ。それで?」
上手く隠れてその後はどこにも立ち寄らなかったようです。馬車も牧草を運ぶ馬車に偽装してあったそうです。
「賢明だな。だからこそ益々神の話が噂になったわけだ。他は?」
ドワーフ国への街道と分岐する村の住人全てが村を捨てこちらに向かっております。
「何っ?全員だと?何人くらいだ?」
およそ100人強かと。
「何があった?あそこは東のやつの管轄だろ?」
不作が続いているようで次年の税を払えなくなる可能性が高く、村を捨てたようです。
「女子供も全て徒歩か?」
数台の荷馬車以外は徒歩です。盗賊はほぼゲイル様達が討伐したようで街道の盗賊被害がまったく出ておりません。
「食料や水はどうしているんだ?」
食うや食わずで一心不乱に移動しております。
「不味いな・・・。それとなく食料と水を支援してやれ。
はっ
(ゲイルが通った後に集団離脱か。向かってるのはディノスレイヤ領だな。数名ならわかるが何をやったら村人全てが離脱すると言うのだ?しかも盗賊壊滅したとか。相変わらずむちゃくちゃな奴だ)
エイブリックはアーノルドに100名以上の村人の受け入れ要請の手紙を送った。
ードワーフの国ー
朝起きてシルバー達の様子を見にいく事に。昨晩はそのまま寝ちゃったからな。
シルバーの所に行くと子供かどうかわからないドワーフが世話をしてくれていた。
俺を見てビクッとする。バンデスをぶちのめしたの知ってるんだな。
「おはよー!シルバー達の世話をしてくれてありがとう」
「あ、あ、あ、あの餌をた、た、食べなくて。申し訳ありませんっ」
何謝ってんだ?
「シルバー、わがままいっちゃダメじゃないか」
シルバー達に与えられた餌は乾燥した奴だ。冬場は食べるけど生の草を食べたいんだな。
俺にベタベタしにくるシルバー。
「もうしょうがないなぁ」
俺はシルバーに甘い。
馬車から牧草の種を持って来てそこに蒔いて生やした。目を丸くして見ている。
「いいい、いま何を?」
「ん、牧草を生やしたんだよ。この辺に生やしとくから勝手に食べさせて」
シルバー達がもりもり食べだしたのでリビングみたいな所に戻り、タバサが作ってくれたこの世界の標準的な朝飯を食べる。少し塩味が濃い味付けだ。これがドワンのお袋の味なんだなと思いながらありがたく頂いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます