第222話 ドワーフ国に到着
夜明けと共に飯も取らずに出発する。
ジャック達が起きてきた。
「えっ!?もう出るのか?」
「ワシらは急いでるでの、達者でな」
「いや一緒に・・・」
「雇い主はそれを望んでおるのか?確かに一緒に行動する方が安全かもしれんが雇い主の意向を汲んでからにしろ。どうじゃ?」
「そ、それは・・・」
「そういうことじゃ。昨日はご馳走になったな」
ドワンはそう言ってさっさと出発した。
「あれ?もう行っちゃったの?」
「あぁ、先を急ぐらしい」
「結局何も聞けなかったね」
「そうだな。まさか飯も食わずに出発しやがるとは。昨日のワイバーン討伐、あいつらは魔法を使ってたわけじゃねぇ。使ってたのは魔道具だ。きっとドワーフ国の新型の魔道具に違えねぇ」
「あの馬車も凄いわよ。ほら、全然荷台が揺れてない」
「ほんとだ。乗り心地良さそうだね」
「あの草からは魔法の臭いがした。あの子供と同じ臭い」
「子供から?どう言うことだ?」
「多分、植物魔法」
「植物魔法?あいつはエルフか?」
「多分人間」
「多分?人間じゃないかもしれないって事か?」
「波長は人間だけど気配が凄く薄いからわからない」
「なんだよ行っちまったのか?肉を多めに渡して仲良くなる作戦とやらはどうなったんだ?」
「あのぼっちゃん、肉食べてなかったわよ」
「解体の時も強ばった顔してたからなあの僕」
「オークじゃない方が良かったんじゃないか?」
「鹿かなんかにした方が良かったんじゃない?」
「言うな、今さらだ。まぁいい。行く先は同じ所だ。向こうで会うだろう。あんな馬車すぐに見つかるさ」
「だと良いわね」
「おい、お前らのせいだからな。こそこそしやがるから警戒させちまっただろうが」
「も、申し訳ありませんジャック様・・・」
休息ポイントでシルバー達に草を食べさせて回復魔法を掛ける。
「ごめんねシルバー。今日は夜まで走り続けるから」
黒砂糖をあげて顔を撫でてやる。
ダンもドワンも馬に黒砂糖をあげてヨシヨシしていた。
「さ、ワシらも軽く食うぞ。」
干肉がもう無いので根菜のみのベジタリアンカレースープを食べる。竈も組まずに魔法で加熱してさっさと作った。
「おやっさん、次のポイントで何か狩れる?」
「少し崖を登らにゃならんが大丈夫じゃ」
「後どれくらい?」
「次のポイントで泊まってから3日じゃな」
ギリ食糧が無くなりそうだな。
またがっつり飛ばして次のポイントに着いた。
ドワンが獲物狩ってくると言ってさっさとどこかへ行った。馬に水をやってから牧草を生やす。次にプランターを作ってジャガイモ人参玉ねぎを育てた。食糧ギリギリだと心配だしね。
生野菜もいっとくか。キャベツとレタスを追加する。
竈とバーベキューコンロを作りドワンの帰りを待った。
ドワンがボアを狩って来た。この時期だとまだ臭くなってないだろう。
さっさと解体していき、焼肉用とベーコン用、ジャーキー用に分けていく。
「焼肉のタレと味噌とどっちがいい?」
「味噌じゃ」
ドワンのリクエストは味噌ボアどんぶりだった。せっかくパン焼いたのに・・・
ボアの肉に味噌を塗り、しばらく置いておく。急いで米を炊き始めて後はダンに任せた。
その間にベーコンとジャーキーの味付けをしてキャベツを千切りにしていく。
じゅ~
ダンが焼肉を焼きだした。とり合えず塩胡椒で食べるみたいだ。
ご飯がもうすぐ炊き上がる頃にドワンが味噌焼きを焼き出す。こっちも準備完了だ。
炊けたご飯をどんぶりに入れてキャベツの千切りをワサッと乗せて二人に渡す。そこへ香ばしく焼けた味噌焼きをドバドバっと乗せていく。自分のは小さめどんぶりだ。
「やっぱり坊主の飯は旨いのう」
ドワンとダンは蒸留酒の炭酸割を飲みながら味噌豚丼を頬張り、塩胡椒の焼肉を食べる。
「人がいるとこんなご飯作れないからね。後で小屋と風呂作るから、ゆっくり休もう」
ここに着いてからずっと気配を探っているが後ろからは付いてきてはいない。盗賊もこの辺りでは出ないらしい。ドワーフ国へ向かう馬車は空荷だし、みな護衛も付けている。武器をねらう盗賊が出るとしたらあの村から2つ目のポイントまでとのこと。
まずドワンに風呂に入って貰う。おれはその間せっせと薄切り肉をタレで焼いて壺に入れていく。残った肉は冷凍してクーラーに入れた。朝晩魔法を掛けたらドワーフ国までもう狩りをする必要はない。
次にダンに風呂へ行って貰う。ジャーキーと簡易ベーコンのスモークをしないといけない。風呂出てからするのが嫌なのだ。
ようやく全部の仕込みが終わった頃にダンが出てきた。ドワンはダンが来たから寝に行った。
風呂に浸かると疲れが取れる。炭酸水を飲みながら空を見上げると綺麗な星が降ってくるように思えた。
朝食は昨日食べなかったパンに薄切り焼肉とキャベツを挟んだ物だ。スープはもういいとのことだったので白湯だけ飲む。
ダンもドワンも見張り中気配を探っても誰もいなかったらしい。
その後3日でドワーフ国が見えてきた。
木々の少ない高い山々に囲まれたドワーフ国。そこへの入り口はトンネルを通っていくらしい。
入り口が見えて来た時にぎょっとした。
トンネルの前にいる門番の他に俺達を見下ろすように大きな犬?・・・
顔が3つある・・・
ケルベロスじゃねーか?
「おやっさん、ドワーフ国って冥界なの?」
「そんな訳あるかっ!」
いやだってケルベロスが入り口にいるとこなんて冥界しかないだろう?
「襲って来ないよね?」
「不埒なやつらしか襲われん。心配するな」
「止まれ!見慣れぬ馬車だな?」
門番に止められる俺達。
「ワシじゃ」
「えっ?ど、ドワンさん!?」
「そうじゃ。客人を連れて来とるから通るぞ」
「は、はいっ!お帰りなさいませドワンさん」
門番がドワンに敬礼した。
「おやっさん、有名人なの?」
「なぁに、ドワーフは人間ほど数がおらんし長生きじゃからの。顔見知りが多いだけじゃ」
そうなのか?
まあそうかもしれん。
トンネルに入ると真っ暗なのでライトを点けて馬車はすすんだのだった。
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