第216話 閑話 ドワーフの国に行くまで
ドワンに報告が終わったあと屋敷に戻った。エイブリック邸からの荷物が届いているらしいので確認する。多分スパイスだろうと思い厨房へ向かった。
「ブリック、俺宛に荷物届いてないか?」
「ぼっちゃんお帰りなさい。なんか大量に来てましたよ。手紙も預かってます」
ブリックに案内されて食料保管庫に行くと大量のスパイスと砂糖が積み上げあられていた。
「ぼっちゃんこんなに買ったんですか?」
「いや、王家からのお礼というか褒美だよ。こっちの袋は白砂糖だからスパイスと別に保管しておいて。臭いが移るから」
「えっ?褒美?白砂糖・・・って」
「これ一袋で金貨1枚くらいするんじゃない?」
30キロくらい入ってる袋が20個くらい積まれてた。この世界の白砂糖は超貴重品なのだ。それに金があっても買えない。
アワアワするブリック。スパイスの類いも貴重品だ。それぞれ別の保管庫に入れて管理して貰うことにした。
部屋に戻って手紙を読むとエイブリックからだった。
内容は社交会が大盛況であったことへの礼とレシピの取り扱いについてだった。料理のレシピ全般に販売希望が入り、特に女性から絶賛されたデザートのレシピ販売希望が殺到しているらしい。料理のレシピは社交シーズンが終われば領内で広めても良いがデザート系は来年の社交シーズンが終わるまで待って欲しいとの事だった。白砂糖の増産も生産地に指示してあるので流通量が増えるらしい。
俺が提供したレシピの売上は全て俺にくれるとのことだった。
最後にドワーフの国に行く前に王都に是非寄って欲しいと書かれていた。なにやら用事があるらしい。
俺は社交会成功のお祝いとスパイスと白砂糖のお礼、急遽修業に出てしまった為、ロドリゲス商会の支店についての連絡不備のお詫びを手紙に書いた。連絡を忘れていたのでは無く不備なのだ。不備・・・便利な言葉だ。これで良しと。
明日ザックの所へ持っていこう。
翌日からシルフィードは俺達と森で剣と魔法の修行をすることになった。エルフの里探しに向けて自衛能力を上げていかねばならない。
火魔法、土魔法での攻撃をベースにやっていく。魔力が無くなれば剣の稽古、復活すれば魔法攻撃とスパルタな特訓だ。ダンは剣を教えてる間、気配を消したり出したりをコウモリのように繰り返しながらやっている。俺に気配能力で劣ってしまった事が相当ショックだったらしい。シルフィードもそのうちダンが気配の稽古をしていることに気が付くかも知れないな。
ダンと交代したらせっせと蒸留酒を作っていく。前と同じやり方にしているが蒸留器は10個に増やした。去年のペースだと終わらないのだ。
修行に行ってる間にミゲルに頼んでいた温室が完成した。カカオ用のは無駄になってしまったがまたその内カカオ豆が手に入るだろうからそれからでもいい。
領の空いている土地に闘技場建設も始まった。建設場所には足場が組まれて布で覆われている。俺が基礎工事をするためだ。森に向かう前と帰りに土魔法で基礎を作っていく。ドワーフの国に行く前に完成させろよとのことで俺も突貫工事だ。上物に使う木は果樹園予定地からせっせと切り出して準備を進めているらしい。木材に使えない木は全て炭小屋に持って行ってくれてるようだ。炭用の木の保管庫が足りないとの事だったので、それも作りに行った。ゲイルゼネコン大繁盛である。
ドワーフの国に行く日程が決まった。4月初旬だ。3月下旬にぶちょー商会の新型馬車のテストを兼ねて釣りに行き(ミゲルの為)、問題が無ければ出発だ。予定では3ヶ月間の旅だ。帰ってくる頃には夏だろうな。
俺のいない間に米作りが始まるのでミゲルにくれぐれもよろしくと頼んだ。イチゴの苗も届いたので温室に植えておいた。イチゴの株を増やすためにつぼみが付いたら花が咲く前に全て切っておいてもらう。そちらに栄養が行かず株を元気にするためだ。帰ってくる頃にはランナーが伸びて株分け出来るだろう。管理はミーシャとポポにお願いをしておいた。
先日から肉屋でソーセージ、ベーコン、ハムの販売が始まった。まず大工達が連日買い漁り、作っても作っても追い付かないらしい。近々店を大きくして人を追加で雇いミンサーも追加で発注して、スモーク室も大きくするとのこと。忙しくて肉の質を落とさないでねと言っておいた。
ザックの所も薄力粉や片栗粉、蒸留酒が売れ始めたらしい。店のショーウインドウの所に薄力粉を飾る訳にもいかず、何かいいもの無いかと聞かれたので調理器具を陳列しておけと言っておいた。そのうちミンサーや泡立て器、食パンの型とか売れ出すだろう。
「それ良いですね。さっそくそうします」
「使い方を色々と聞かれると思うけど、使い方を説明出来る様になっておけよ」
「えっ?」
「当たり前だろ?他に無い商品なんだから。聞かれるに決まってるし、この料理に使う調理器具をくれとも言われるぞ。俺は近々旅に出ていなくなるから頑張れよ」
「ちょちょちょちょっと待って下さいよぉ!そんなの分からないじゃないですか。どうするんですか?」
「お前が勉強して大番頭に教えてやればいいだろ?早い方がいいぞ。すでに問い合わせが来てるかもしれんからな。調理器具は物によっては製作に時間掛かるからな」
「誰に教えて貰えばいいんですか?」
「さあ?」
「お、教えて下さいよぉぉぉ!」
ザックをからかうと面白い。
「ブリックが全部知ってるぞ」
ダンが助け船を出してやる。
頑張って使い方覚えろよーと言い残して俺達は帰った。
今年の蒸留作業も終わったので蒸留器を消しておく。邪魔だからな。
シルフィードの稽古も進んでいる。魔法攻撃もかなり数が撃てるようになってきているしまずまずだな。
数日後、ドワーフ兄弟とダン、ミーシャ、シルフィードとで釣りに行った。そこそこ釣れて、俺は又あの鱗を手にいれた。
ボロン村からシド達がやって来た。牛、鶏、鴨を村に持って帰るのだ。薄力粉の籾種も渡しておく。是非栽培に成功して欲しい。他にも果物の苗とか荷物満載だ。馬車2台で来て正解だったね。
他の買い出しをしてから帰るという事で3日後に出発となる。シルフィードともしばしのお別れだ。
シルフィードが帰る前日、いつもの特訓をして屋敷に戻る途中で果物の売り子に声をかけられる。売り子なんて珍しいな。声をかけられたのも初めてだ。
「そこの優しそうなぼっちゃん。果物はどうですか?」
小柄で可愛い女の子二人だ。髪の毛の色は違うが同じ顔をしている。双子だろう。
別に買ってもいいんだけど、色んな物をこれから売り付ける奴が増えるたら面倒くさいな。悪いけど断るか。
「ごめんね、今日はいいかな」
「あら、残念。でももう今日はこれだけしか残ってないので差し上げますね!」
そう言って果物の入った深いザルのような物を俺に差し出してくる。新手の詐欺だろうか?
差し出された手をみて気付く。
「ありがとう。じゃあ遠慮なく貰うね」
俺はそう言って二人の手の腕輪に治癒魔法をスッと充填した。
「今度はちゃんと買うから、いつでも持って来てね」
笑顔でハイッと答える二人に手を振って別れた。
「ゲイル様、可愛い売り子でしたね」
「そうだね。双子かな?そっくりだったよね。今度はちゃんと買ってあげないとね」
シルフィードが帰ったら俺達もすぐに出発だ。修行みたいに辛くないといいけど・・・
ドワーフの国、どんな感じなんだろうな。
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