第206話 束の間の凪
余計な事をするな・・・か。エイブリックの奴どこまで気付いてるのやら、クックック。
しかし感づかれた隠密は魔力を吸われたと思われるか、リッチの魔法まで操るとは少々驚きだな。さすがはアーノルドの息子だと今は誉めておいてやろう。
姿を見せずに報告をし終わると気配も消えた。軍の暗部すら知らないダッセルの隠密。草と呼ばれる存在であった。
ー王室の秘密訓練所ー
「勘違いで怒鳴って悪かったな」
王子が我々に頭を・・・?
「いえ、ゲイル様に落とされたのは我々の失態でございます。王子よりそのようなお言葉を頂く訳には参りません」
隠密がそう答えると、フッとエイブリックが笑った。
「これを渡しておく」
魔銃を渡された二人。見た目と違って非常に軽い。
「これは?」
「魔道具だ。魔銃というらしい」
エイブリックは性能と使い方を説明する。
「使ってみろ。但し安全装置は外すな」
隠密二人は高速詠唱を唱え、的に向かって撃つ。
「こ、これは・・・」
今まで経験したことがないほどスムーズに魔法が発動する。
「ゲイルからのプレゼントだ。今日中に使い方を完璧にしろ。魔力使用量が1/7になるそうだ。逆に言えば威力が7倍になると言うことだな」
7倍・・・!?
「こ、この様な魔道具、我々には・・・」
「ミーシャとシルフィードを必ず守れというゲイルからのメッセージだ。心しておけ」
かしこまりましたと返事をするが、魔道武器というより魔道兵器と呼ぶのが相応しい魔銃は軽いのにとても重く感じたのだった。
ー王室護衛訓練所ー
「そうだお前は何としても襲撃者を止めろ!それだけを果たせ!」
これが魔王直伝の護衛方法か。王が待避するのは後ろに任せて俺たちは敵を止めるだけに集中するっ!
「よし、襲撃役と応戦役、盾役を交代してもう一度だ。一番向いている担当を決めて行くからな」
おー!
ーアーノルドの寝室ー
「ゲイルは私より気配察知が出来るようになったのかしら?私には殺気とかないと解らないわ」
「アイナでも分からなかったか。ゲイルが見つけた気配は囮かゲイルの能力を試されたかどっちかだな」
「他にもいるのね」
「かなり手強い。エイブリックも気が付いてるかどうかわからん」
「それはゲイルに付いてるの?」
「それが良くわからん。ゲイルなのか王なのか・・・ただ遠くから見てるだけだ」
「ゲイルは何か感じてあんなに警戒してたのかしら?」
「気配は察知出来てないだろう。ただ自分が察知出来ていない事を知ってるからこそ他にもいると推測して警戒してたってとこだな。王の馬車馬が攻撃される可能性を読んでダンに指示してたからな。ゲイルが警戒の気配を出していなければそうなった可能性は否定出来ない」
「これからどうするの?」
「中途半端に気配が察知出来るとずっと警戒しなきゃならんからな。ちょっと実戦を積ませる。」
「どうするの?」
「ベントの入学式が終わったらダンジョンに連れていく。その間、領主代行を頼めないか?」
「実務はセバスに任せるわよ。」
「それで構わん。それとシルフィードの朝稽古も頼む。ダンも連れて行くからな」
「わかったわ」
しかしあの気配・・・、俺を見ていたのかも知れんな。
ドン爺達が帰った後、俺は泥の様に眠り、翌日の昼過ぎに目が覚めた。自分が想像してたより精神が疲れていたみたいだ。しかし、まだ眠れるだけ良かったと思う。
昼飯の時間は過ぎているので直接厨房へ行く。ちょうど使用人達の昼飯の時間なのでここも誰もいなかった。
なんか作るのも面倒なので、牛乳にハチミツを入れたホットミルクを作って飲む。
あー、旨ぇ。身体も疲れてたんだな。甘いホットミルクが妙に旨く感じる。これにあんパンでもあったら良かったのに。こんど小豆を探してみるか。
甘いホットミルクで胃を刺激したのか何か食べたくなってきたからフレンチトーストでも作るか。誰もいないのでミルクと卵は魔法で混ぜる。早くて便利だ。
食パンに卵液を十分吸わせたらバターで焼いていく。よしこんなもんだな。
皿に乗せてハチミツかけて、さぁいっただっきまー・・・
「いい匂いが・・・、あ、ぼっちゃまお早うございます。何を作ったんですか?」
ミーシャの美味しい物気配察知能力は天下一品だな。
「食べたい?」
返事の代わりに、にっこり笑うミーシャ。今昼飯食って来たんじゃないのか?
「じゃ、これ食べろ。俺のはもう一度作るから」
おいしーでふぅと遠慮なく先に食べるミーシャを見て、何か嫌な予感がしたので4枚追加して焼く。
「あ、ぼっちゃんお昼どうしますか?」
「ゲイルちゃまがなんか作ってるー」
「お、ぼっちゃん。旨そうな匂いだな」
ブリック、ポポ、ダンが来た。俺の気配察知も捨てたもんじゃないね。
みんな昼飯食った後なのに残さずペロッと食べた。甘いものは別腹とは良く言ったもんだ。
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