第196話 鴨の生け捕り

肉屋に鴨のローストスモークをスライスした物と、ソーセージ、ベーコンをもって行く。


「おっちゃん、お土産持ってきたよ」


「お、何を持って来てくれたんだい?」


「スモーク各種だよ。これが鴨、コレがソーセージでこいつはベーコン」


その場で鴨のスモークを味見するおっちゃん。


「こんな食べ方があるのか?めちゃくちゃ旨いな」


「少し皮を炙ってやっても美味しいよ」


「へぇ、それにこれソーセージって腸詰のことだろ?こんなに上手くよく詰めてあるな」


「ぶちょー商会に作って貰った機械があってね、それを使うんだよ。肉を細かく潰す機械なんだけどね、腸詰め、ソーセージを作ることもできるんだよ」


「そんな便利な物があるんだな。知らなかったよ」


「おっちゃんとこさ、このソーセージとベーコンとか作って売る気ない?」


「こいつを俺が?」


「そう、肉のことは勿論、味もちゃんと分かってくれてるし、作れると思うんだ。他にも作ったら売れる物も教えるよ」


「作るとしても、人手がなぁ・・・」


「年明けたら就職相談所が出来るからそこで人を募集したらいいよ。どんどん人が増えてるからイイ人見つかると思うよ。おっちゃんところはレシピ料無しでいいから。あ、でもね始める時期は年明けてちょっと過ぎてからになるよ。王都の社交会で発表してからじゃないとダメなんだ」


「王都の社交会?」


「そう、王子様の所で出すんだって。これ内緒ね。だから王都でも広がって行くと思うけど、それはまだ先の話だから事実上この店が一番初めに売り出すことになるかな?」


「そ、そんなこといいのかよ?」


「大丈夫、大丈夫。そのベーコンとソーセージを家で食べてみて。それで決めてくれたらいいから」


「お、おう・・・・」


俺に押しきられた肉屋のおっちゃん。そのうちこの領で一番美味しい肉を売る店として評判になるだろう。そうすればいつでもホルモンも手に入るようになるだろうし、スモークもここで買えばいい。Win-Winだ。



さて、鴨の生け捕りをする前に繁殖場の確保だ。鴨を捕まえる算段はついている。まず間違いなく成功する。


田んぼの近くに溜池のような窪みを作る。手前は浅く奧はやや深めに。川から水を引いて水を貯める。ここは田んぼの用水池としても使おう。ミゲルに鳥小屋を作ってもらい、中に敷きワラを引いておく。今は土が剥き出しだが、春には草が生えてくるだろう。ここに簡単に捕まえられる鴨がいると解ったら盗みに来るやつがいるかもしれないから、家の名前を利用する。池の周りを柵で囲い、ディノスレイヤ家の鴨繁殖場に付き関係者以外立ち入り禁止の看板も設置した。


完成するまで3日を費やしたが普通にやってたらもっとかかるだろう。土魔法バンザイだ。


ここが上手く行けば第二繁殖場をボロン村に作ろう。馬、牛、鶏、鴨と様々な家畜が増えて行けば生活も豊かになって人も増えていくだろうからね。



「おやっさん、明日、鴨の生け捕りをしに行くからよろしくね。捕まえるのは俺がやるから運ぶの手伝って欲しいんだ。捕れるだけ捕るから」


「それはいいけど、どうやって運ぶんじゃ?」


「土魔法で檻作るからそれに入れて荷車で運ぶよ」


それならミゲルにも手伝わせるとのことでウィスキーの出番となった。



俺、ダン、ドワン、ミゲルと4人での鴨生け捕り大作戦だ。


肉屋に教えてもらった鴨のいる池と湖の間くらいのポイントに着いた。俺が知らないだけでこんなところ沢山あるんだろな。


「ぼっちゃん、沢山いるけど池の真ん中辺りに固まってるぞ。どうすんだ?」


「まぁ見てて」


ゲイルは気配を消して水辺に近づく。


池に魔力を捨てて一気に鴨の魔力を吸った。


鴨はグアッと一瞬苦しそうに声をあげ、すぐに気絶した。鴨の魔力なんてしれたもの。離れた所にたくさんいても一瞬で吸えるのだ。


風魔法を操り、手前まで寄せて来た。


「ほら、気絶してる間に回収して」


ダン達は慌てて鴨を回収していく。土魔法の檻に入れたら蓋を閉めてウィスキーの荷馬車に運ぶ。これを繰り返して100羽くらい捕まえた。


「坊主、なんちゅう恐ろしい狩りをするんじゃ・・・」


生け捕りにするならぴったりだけどね。


捕まえた鴨は羽を切って飛べないようにしていこう。


また群れが来たのでどんどん捕まえていってはを繰り返した。今回捕獲したのは300羽くらい。これくらいいれば繁殖していけるだろう。


グワッグワッ鳴く鴨を荷台に乗せて作った繁殖場に放鳥した。一斉に飛ぼうとするが飛べない。慌てて用水池に入って真ん中にかたまった。出来たばかりの池には餌がない。鴨小屋の前で餌をやりだしたらそのうち近づいて来るようになるだろう。意外と鴨は人に慣れる。自分は愛着がわかないように、ドワンに人を手配してもらわないとな。


「あの池の鴨を捕り尽くしまったんじゃねーか?」


「鴨はたくさんいるからこれくらいの数大丈夫だよ」


「いや、あそこを狩り場にしてた冒険者が困るんじゃねーか?」


あっ・・・


やっちまったなぁ・・・



と、俺らの心配とは裏腹に次の群れが飛来していたのだった。

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