第174話 ゲイル王都へその4

「火魔法でやるぞ」


「わかった。じゃ、銃を構えて」


エイブリックに銃を構えさせる。


「今からエイブリックさんの身体を通してファイアボール撃つからそのイメージを強く持ってて。じゃ行くよ」


ボゥ ボゥ


「はい、銃から火の玉が飛ぶイメージで魔力を流して」


エイブリックの腕が赤色の光が出た。その光にあわせて俺の魔力も少し流す。


「はい、撃って」


ボゥ


「はい次っ」


ボゥ


ボゥ


ゲイルは魔力を流すのを止める。


「次々撃って」


ボゥ ボゥ ボゥ ボゥ


「さすが火の魔剣使いだね。もう自分の魔力だけで撃ててるよ」


「何っ?」


「はい撃って撃って」


ボゥ ボゥ ボゥ


「うぉぉおー!出来たぞ。今まで散々やっても出来なかった事がこんなに簡単にっ」


「ちっ、なんでそんな簡単に出来るんだよっ!」


拗ねるアーノルド。


「ダン、おやっさんから魔剣貰おうと思ったらこれくらいスムーズに扱えないと無理だね」


「くそっ!そうかも知れん。だが後少しだ!」


そうだね。本当はもう貰えるくらいになってると思うよ。


「エイブリックさん、慣れたら銃無しで撃てるようになるから。料理のレシピを説明している間、その銃を預けとくから父さんと練習してて。レシピを早くしないと全部伝えきれなくなるよ」


「そうだな。じゃあ料理人の所に案内しよう。持ってきた道具と食材はもう運んであるからな」


エイブリック超ニッコニコ。



「この度はわざわざありがとうございます。コック長をしておりますヨルドと申します」


「ゲイルです。宜しくお願いします」


エイブリックに案内されたのはこの家の厨房だ。めちゃくちゃ広いしすべて最新の設備が揃っている。


(おい、なんであんなガキにコック長が頭下げてんだよ)

(俺達に料理教えるんだとよ)

(何様だと思ってんだよ。ままごとじゃねーぞ)


うん、完全にアウェイだね。料理人って職人だからな。こうなるのは当然だろう。


「ヨルドさん、レシピだけ渡して帰ってもいいんだけど、どうする?みんな俺が子供だから不満あるでしょ?渡しただけで作れるならこっちも楽でいいけど」


職人に対して下手したてに出ても無駄だ。それをするとマウントを取りにくるだけだからな。教えるならこっちがマウントを取る。嫌なら帰るそれだけだ。


「失礼致しました。エイブリック様より教えを請えと命令されておりますので是非ご教授を」


コック長は丁寧に対応してくれているけど、はらわた煮えくり返ってるんだろうな。そりゃプライドもあるだろう。


「じゃあ、誰かと俺とステーキを焼いて食べ比べする?味付けは塩胡椒だけで。それで判断したらいいよ。誰か自信ある人いる?」


(調子に乗りやがって)

(おい、思い知らせてやれ。)

(ステーキなんかで腕がわかる訳ないだろ)


ステーキなんかねぇ。あいつはダメだなまったく分かってない。


「おい、ジーム、お前が焼け。ゲイルさん、うちのナンバー2のジームです。この者で宜しいですか?」


(おい、ジームさんが焼くんだと)

(これであのガキなにもせずに帰ることになって恥かくぜ)


「誰でもいいよ。誰がどんな腕前か知らないし」


「では牛肉はどの部位を」


「そっちで決めてくれたらいい」


「ではこちらの部位で」


サーロインか。王道だな。Tボーンとか出してくるかと思った。


俺は肉の筋きりをして肉の温度が常温になっているかを確認する


ジームは・・・?もう塩胡椒をすり込んでるのか。肉汁なくなるぞ?


運びこまれた調理器具から鉄板焼用のフタと酒を持ってくる。これは赤ワインから作られた方で香りが少ないけど仕方ない。


鉄板を強火にして牛脂を載せる。


ジームはもう焼き出すのか。


牛脂がじゅるっと溶け出し煙が少し上がりだす。よし肉に胡椒をまんべんなく振って鉄板に載せる。


しゅうぅぅぅ。


さっとひっくり返してもう片面もしゅうぅぅぅ。


厚目の肉だから側面もくるくる動かして焼いて行く。こんなもんかな。


塩を振って、酒をざっと肉の周りにかけて火を点ける。


ボワッ


蓋をして鉄板の火を消す。あとは余熱で中までゆっくり熱を通すだけだ。


「コック長焼き上がりました」


「冷めると美味しくないだろうから、先にそっち食べて」


ジームは5つに切り分けて4人のコックに試食させる。1つは俺のだ。案の定、中までしっかり火が通った超ウエルダンだ。硬い。


よし、こんなもんか。


蓋を開けて、さっさっさっとこっちも5つに切り分けた。


「はい食べて」


(おい、中まで焼けてないぞ。)

(へん、失敗しやがった。偉そうにしてたくせに)


「ゲイルさんこれは?」


「赤いけど熱は通ってるから。食べたくなければ食べなくてもいいよ」


コック長に挑発するように言うと、黙って皆が口に肉を運んだ。


「ぬっ? こ、これは・・・」


ぬぉ、ぐっ


口に肉を運んだコック達がうなる


「それが本来の肉の旨さだよ」


「ゲイル様、申し訳ありませんでした。是非ご教授願います」


食べたコック全員が頭を下げた。


(ど、どういうことだ?)

(ジームさんが負けたのか?)


「じゃ、今のは何が違うか説明するね」


俺は肉の焼き方の基本や旨味の生かし方。それは素材によって異なることなどを話した。コック達はメモを取り、見習いらしき陰口を叩いてたやつらはボーッと聞いていた。


「再現出来ないって言ってたのはハンバーグだっけ?じゃあそれを作ってお昼ご飯に出そうか。エイブリックさんも食べたがってたし」


俺はミンサーを出してきて見習いに使い方を教えて牛肉と豚肉のミンチを作らせた。指導はダンだ。


「おい、そこの陰口叩いてたやつ。お前はタマネギをみじん切りにしろ。それくらい出来るだろ。ヨルドさん、スパイスは何があるか見せて」


スパイスの壺の所に案内される。


うぉぉおー。めっちゃある。これカレー作れちゃうんじゃないか?


「これ、好きに使っていいの? 」


「かまいませんよ。ハンバーグとやらに使うのですか?」


「ハンバーグにはこのナツメグだけ。他に作りたいものあるから後で使わせて。皆が好きそうならレシピにするから」


おっと先にハンバーグだな。


刻んだタマネギを軽く炒めて冷ましておく。牛と豚ミンチを半々にして、ナツメグ、塩、胡椒、冷ましたタマネギを投入。これを見てるやつに混ぜてもらう。


よし、そんなもんだろ。


「今から成形するからみててね」


両手に油を塗り、丸めたタネを左右にパンパンとして空気を抜いたら真ん中をへこませて成形完了。


同じ事をコックにやってもらう。


ほどよく熱した鉄板に乗せて両面を焼いたら水を周りにかけて蓋をする。透明な肉汁が外に出始めたら焼き上がりだ。


「はい皆で試食して。お昼ご飯にこれ出すから」


うめぇ、

なんだこの柔らかさは

中から汁があふれでてくるぞ


「ヨルドさん、これお昼ご飯に出して問題ないかな?」


「驚きました。これがハンバーグというものなのですね」


「アルが気に入って沢山食べてたよ。付け合わせにポテトサラダを作ろう」


マヨネーズはダン担当だ。任せておこう。スープは何にするかな?お昼だし簡単なやつでいいか。


持ってきたベーコンを切り、じゃがいもと人参を入れて煮込んで塩胡椒味を整えて終わり。


「ゲイル様、それは干し肉ですか?」


「これはベーコンって言ってね、豚肉のアバラ肉に塩をして熟成させたあとに煙りで燻してあるんだよ。生肉より保存はきくけど、干し肉みたいに長期保存は無理だね。食べてみる?」


薄切りにしたベーコンを焼き、その油で目玉焼きを作る。


「ベーコンだけでも美味しんだけど、目玉焼きの黄身を付けて食べると抜群だよ」


ヨルドはベーコンの匂いをかぎ、目玉焼きの黄身を付けて食べて驚愕の表情を浮かべる。


「このベーコンの作り方は教えて貰えるのですか?」


「作り方は難しくないんだけど、燻製室と燻製チップがいるんだよね。ここに無いでしょ?」


後で設計図描くか。


しかし、この調子だといつ終わんの?


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