第168話 オークション
アーノルド達が蛇を討伐し、街に戻った頃に王都にその報告が届いていた。
「エイブリック様、ディノスレイヤ領でフォレストグリーンアナコンダが討伐された報告が届きました」
「あの蛇か。討伐されたのは久しぶりだな。それがどうかしたのか?」
「かなりの大物らしく、明日のオークションに掛かるそうです」
「そうか、結構高値が付きそうだな。商人どもが騒いでるだろう」
「はい、王も内密でオークションに参加されるとのこと」
「は?父上が? そこまで珍しいものではないだろう?」
「討伐されたのは2匹。うち一匹はすでに解体され、皮と魔石になっております。肉は領民に振る舞われるとのことでございます。もう一匹はほとんど傷も無く、まるで生きているかのようだと」
「討伐したのは誰だ?」
「アーノルド様、ドワン様、ダン、そしてゲイル様のパーティーです。冒険者の中に討伐出来る者がおらずアーノルド様自ら討伐されたとのこと」
「アーノルドが絡んでるのか。父上はアーノルドのファンだからな。蛇をコレクションするつもりか」
「それと、解体された方の頭が研究所に寄贈されます。なにやら石化の魔法を使ったとのことで調べて欲しいと」
「何っ?あの蛇が石化の魔法を?そんなこと聞いたことないぞ」
「であるからして調査依頼が入ったのでしょう。それと気になる物もオークションに出ます」
「何が出るんだ?」
「卵です」
「あの蛇のか?」
「おそらく。生きているのかどうか不明ですが研究所もオークションに出るようです」
「卵か・・・。俺も明日のオークションを見に行く。父上は来るのか?」
「王がオークションに出れば不成立になる可能性が高いとのことで他の者に代行させるようです。アーノルド様の出品なのでまっとうに競り落とすと」
「下手したら青天井のオークションになりそうだな。素直に献上すれば良いものを」
「フォレストグリーンアナコンダは献上するほどのものではないとお考えだったのではないでしょうか?」
「まぁそうだな。ディノじゃあるまいし、そこまで珍しいものじゃないから当然か。わかった。討伐した内容も調べておいてくれ。アイツがあのまだ小さい子供を連れて行った事が気になる」
「はっ、かしこまりました」
オークション当日
おい、フォレストグリーンアナコンダが競りに出てくるの久しぶりだな。
ああ、見てみろよあの皮。傷一つないぜ。討伐した奴は見事な腕前だな。
それがあのアーノルドらしいぜ。
あのアーノルドか、さすがだな。しかし今はアーノルド・ディノスレイヤになって領主様だろ?まだ討伐とかやってんのか?
どうやら討伐出来る冒険者がいなくて自ら出るしか無かったみたいだぜ。
王都はフォレストグリーンアナコンダの話題一色になっていた。噂は千里を走るとはこのことですでに多くの民がそこそこの情報を得ていた。
おいおい見ろよ。もう一匹出て来たぞ。それも丸ままだ。まだ生きてんじゃねーか?
いや、死んでるだろうけどよ。どこにも傷が見当たらないぞ。どうやって討伐したんだ?
ざわつくオークション会場。
「では次の出品。フォレストグリーンアナコンダです。まずはこちらの腹側の皮。傷一つ無い逸品です。金貨3枚からのスタートです」
4枚!4枚と銀貨50!
わぁーわぁーっ!
「もうありませんか?いいですか?それでは腹側の皮、金貨10枚で落札です」
おーーー!
大手武具屋が落札し、会場から拍手がおこる。
「次は背中側の皮です。ご覧下さい。傷もなくこの美しい模様。まさに至極の皮と言えましょう。最低落札価格金貨10枚からのスタートです」
12枚!20枚!50!55!
どんどん競り上がる値段。ついに金貨500枚を越える。宝飾屋と皮製品専門店の一騎討ちになりどちらも引くに引けず値段が吊り上がる。王都で一番はうちだと言わんばかりに。
「もういいですか?宜しいですか? それでは金貨600枚で落札です。おめでとうございます」
ザワザワザワ
皮製品専門店が意地で競り落とした。
「続きましては魔石です。このような大きな魔石は珍しく貴重なものとなります。金貨10枚からのスタートです」
100!
シーン・・・・
「え~、他どなたかおられますか?では金貨100枚で落札です」
王宮がいきなり100を宣言し、他は誰も声をあげなかった。巨大魔石は民間では使い道がなく、軍事利用される恐れもあるので王宮以外入札するものはほとんどいない。それが分かっているためいきなり100で決着を付けた。
「続きまして、世にも珍しい卵で・・・、え?先に丸ままの方を? え~大変失礼致しました。次はこのフォレストグリーンアナコンダです。いったいどうやって討伐されたのか?もしかしてまだ生きてるのでは無いかと思われるほど美しいです。先程の皮のものより大きく、過去最大クラスではないでしょうか?こちらは解体せず、このままの出品となります。なお、落札された方が希望されれば無料で解体いたします。では金貨200枚からのスタートです」
500!600!650!
・・・・
1000!
「おーっと、ここで1000枚が出ました。ついに大台突破です」
1100!
1200!
「もうありませんか?大丈夫ですか?。では金貨1200枚で落札です!」
おーーー!
おいおいおい、1200枚だってよ。落札したの誰だ?
いやわからんな、あの競ってたやつらは東の辺境伯の関係者っぽいぞ。
それに競り勝つ奴ってどんなやつなんだ?
ザワザワザワ
「父上のやつ、1200も出しやがって。しかし、ホントに傷が見当たらんな。どうやって倒したか気になるな。後で見せてくれと伝えておいてくれ」
貴賓席からエイブリックがオークションの様子を眺めていた。
「では本日最後の出品となります。世にも珍しい卵でございます。11個まとめての出品です。あの討伐されたフォレストグリーンアナコンダの巣穴にあったものですが、フォレストグリーンアナコンダのものかどうかは不明です。なぜならまだ誰も見たことが無いからです。また生死は不明です。その事を踏まえて入札をお願いします。金貨1枚からのスタートです」
確かに珍しいけどよ、あの1200枚の後じゃしらけるよなぁ。
出す順番間違ってるんじゃないのか?
一般客から次々と不満の声が上がるなか卵のオークションが始まった。
「父上の時間の都合で順番を変えたんだろ。しらける事をするもんだ」
「仕方がありません。予定時間を大幅に過ぎておりますから」
「そうだな、こんな盛り上がるオークションも久々だからな」
2枚!3枚!5枚!
なんの卵かハッキリしないものでも物好きがいるようで大勢が入札にはいる。
12枚!13枚!
金貨10枚を越えてから脱落者が増える。今競りに参加しているのは3人だ。
50!
「お、らちがあかんと研究所が予算いっぱいで落としにかかったな。卵が金貨50枚か。高くついたな」
100!
「何っ?誰だ今入札している奴は?」
「見たことがない者共です」
「おーっと、なんと100が出ました。もうありませんか?」
「おい嫌な予感がする。あいつらに卵を渡すなっ!競り落とせ!」
「それでは100で・・・」
200!
「えっと・・・」
200だ!
「えっ?続行で?はい。落札宣言前でしたので続行です。200入りました」
(ちっ、邪魔がはいった。大人しく落札されてればいいものを・・・)
300!
400!
600!
「何なんだあいつらは?卵にそんな価値があるのか?」
「私も何やら不穏な動きを感じます。あの者共の内偵の指示を出しました」
「良かろう。いくら掛かっても構わん。必ず競り落とせ」
結局、卵はエイブリックが金貨1500枚で競り落とした。
フォレストグリーンアナコンダ2匹と魔石、卵の落札価格合計金貨3410枚。一人の出品者が出した過去最高記録となったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます