第164話 蛇退治完結
ヤバいヤバいヤバい。
ゲイルの中の警報器がけたたましく鳴る。
「アーノルドっ!」
ゲイルの叫び声が聞こえて斬り掛かろうとしたアーノルドはバッと後ろに飛んだ。
そっちはダメだ!
後ろに飛んだアーノルドを見てもゲイルの中の警報器が鳴り止まない
くそっ!
俺は念動力でアーノルドを真横に吹き飛ばした。とっさのことで力加減が出来ず、ぶっ飛ばされたアーノルドは地面に叩き付けられた。
痛ってぇ、ゲイルの野郎なにしやがるんだ。
そう思った瞬間に蛇の目が光り、アーノルドが居た場所が一瞬で石化した。
なっ!?
「アーノルド、一旦引けっ!ヤバいぞ。そこから離れるんじゃっ!」
ドワンも叫ぶ。その声を聞いたアーノルドとダンはザッと蛇から距離を取った。
「坊主、今じゃっ!」
ゲイルはありったけの魔力を込めてブリザードを蛇に吹き付けた。
パリパリパリっと音が鳴り、一瞬で辺り一帯が凍り付き蛇の動きが止まる。
ザシュッ
その隙を見逃すはずがないアーノルドとダンの剣がクロスするように蛇の首を跳ねた。
ドサッ
蛇の頭が地面に落ちる。
やった!
「坊主、よくやったぞ。誰も怪我も無く討伐成功じゃ」
ゲイルはその言葉を聞いてフワフワと下に降りる。
「終わったの?」
「あぁ、首を落としたからな。もう動いてはおらん」
俺とドワンはアーノルド達の元へと向かった。
凍った周りはもう溶け出していた。自然に凍るのと魔法で凍らせるのはちょっと違うのかもしれない。
「ぼっちゃん、助かったぜ」
「ゲイル、俺を吹っ飛ばしやがった時になにしやがんだと思ったが、まさかこいつが石化魔法を使いやがるとは知らなかったぜ。あれ食らってたらお陀仏だったな」
チラッと石化された場所は蛇が死んでも解除されずに石のままだった。
「父さん、これ復活とか再生したりしないよね?」
「アンデッドじゃあるまいしちゃんと死んでるぞ」
ホントに死んでるんだろうか?魔法って死んでも解除されないものなのか?
「父さん、石化魔法を食らったら、魔法をかけたヤツが死んでも解除されないの?」
「ぼっちゃん、石化魔法を使う魔物にバジリスクってヤツがいるんだがな、一度石化されたらそいつを倒しても石化は解けねぇ。こいつも同じだろう」
バジリスク?確か想像上の蛇の王様だっけ?そんなのが実在するんだな・・・
俺は念のため蛇を鑑定しておく。
【フォレストグリーンアナコンダ】オス
【状態】死亡
ほっ、ちゃんと死んでた。
改めて蛇の近くに来ると大きさが良く分かる。胴体も太く長い割りに鱗は小さくて細かく、様々な緑色で模様が構成され妖しげな艶がある。なにか惹かれる美しさだ。高値で売れるのもよく分かる。
「これどうやって持って帰るの?」
「お前が魔法で浮かせろ。それを引っ張れば楽だし傷もつかん」
こいつ、初めから俺を重機扱いするつもりだったのか。まぁ傷の事を考えればそれが一番合理的なんだけど、なんとなく腑に落ちない。
「頭はどうするの?」
「それも持って帰る。こいつが石化魔法を使うのは新発見だったしな。王都で調査してもらう必要がある」
「分かった。あと巣穴の調査はどうするの?一旦戻ってからまた来るの?」
「それも面倒だな。一度にやっちまうか」
「了解。じゃ壁崩すよ」
「おう頼む」
壁に手をあてゆっくりと崩していく。
「ゲイル離れろっ!」
えっ?
壁を崩した先には大きな蛇の口が開いていた。
俺はすでに口の中にいる。
「うわわわわっ!」
ザシュッ
ドタンっ ドタンっ
蛇が暴れる振動で身体が揺れる。
その様子を見てアーノルド達ははぁーっとため息を吐いていた。
「早く助けてよっ!食われるっ!」
「もうすぐ静かになるからちょっと待て」
「なんだよそれっ」
くそっ、手袋に火魔法を纏って蛇の口を攻撃しようとしたが、いつまで経っても振動が伝わってくるだけで口は開いたままだ。
あれ?これ口じゃないのか?
振動が収まったので俺はゆっくり口と思われる所から離れた。
そこには土の槍みたいなもので口の中から脳天を貫かれた蛇が居た。
【フォレストグリーンアナコンダ】メス
【状態】死亡
「ゲイル、やっぱりお前が囮で巣穴に入るのが一番早かったじゃねーか。あんなに苦労した蛇を瞬殺しやがって」
そんなの知らん。
「ぼっちゃん、その蛇を巣穴から出してくんねーかな」
ダンも呆れ気味だ。
俺は言われた通りに魔法で浮かせて蛇を巣穴から出した。
「ちっ、俺達が倒した奴よりデカいじゃねーか」
巣穴から出した蛇はさっきのより一回り大きかった。
もういないとは思うが念のため隊列を組んで巣穴に入り、魔法で明かりを点けながら進む。
一番奥までくるとひしゃげた剣や防具とともに卵があった。
「こいつが孵ってたらヤバかったな」
「あぁ、この森が蛇だらけになるところだ」
「卵どうするの?」
「こいつも持っていく。研究所が高値で買うだろう」
持って帰る途中で孵化したりしないだろうな?
卵は割れないように土魔法でケースを作り、落ち葉を敷き詰めてクッションにした。
それから冒険者のものと思われる遺品を袋に詰めてドワンが持つ。卵はアーノルドが持ち、蛇2匹と頭を浮かせて俺達は戻った。すっかり日が暮れてしまったので小屋で一泊してから帰ることに。
翌朝ドワンがミゲルを呼びに行き、ウイスキーと材木を運ぶ荷馬車で迎えに来てくれた。手伝いはロロだ。
ドワンがガサッと遺品を広げる。
「ロロ、この中に親父さんの物はあるか?」
ロロは一つの粗末なひしゃげた剣を手に取った。
「父さん・・・」
ロロの顔から涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。アーノルドがロロの頭をグシャグシャと触りながら、
「仇は取ってやった。その剣は大事に持っとけ。ロロやポポを守ろうとした証だ」
「はい・・・ありがとうございました・・・。領主様に仇を討って貰えた父は喜んでいると思います」
そして何も言わない剣を抱き締めてロロはしばらく泣いていたのであった。
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