第151話 河原でバーベキューその2
さて、ご飯を炊くか。
シルフィードが手伝ってくれるみたいなので米を研いでもらう。
土鍋を2つ用意して、片方は白ご飯。もう片方は松茸ご飯だ。醤油がないので味噌の上澄みで代用する。
ご飯の火加減をシルフィードに任せた。この前一度炊いてるから大きな失敗はないだろう。俺はその間に仕掛けたエビの捕獲籠を上げていく。空中に籠が浮いて来るのはなかなかシュールだ。
計10個沈めてあったのでなかなかの数が入っていた。気休め程度に水魔法で出した水に生かしておく。河から川になってるので清流な場所だから泥臭さはあまりないだろう。ちょっと食べて様子をみるか。
ご飯を炊いている横でエビに塩をかけて素焼きする。程よく焼けたら殻を剥いて食べ・・・
やべっ!鑑定するんだった。
鑑定っ!
【オオテナガエビ】食用可。美味
こんな風に見えるんだな。美味か、良かった。早速パクっとな。うん、まんまエビだ。旨い。エビを食べてる俺をシルフィードが微妙な顔で見ている。
「それはなんですか?」
「テナガエビだよ。味見してみる?」
「なんか足がいっぱい生えてて虫みたいですね。もしかして虫ですか?」
やっぱりエビを知らないんだな。
「エビは虫じゃないよ。甲殻類ってやつだね。海だともっと大きいのがいるよ」
「うみ??」
あ、山の中で育ったシルフィードは海も知らないか。連れて行ってやれればいいけど無理だろうな。
取りあえず1匹焼いて殻を剥いてやる。
「一口食べてダメだったらやめていいからね」
シルフィードは恐る恐る目をつぶって口に入れた。
「あ、美味しい・・・ 」
「エビは色々な料理に合うからね。気に入ったならもう一度罠を仕掛けておくよ」
もう一度餌を入れて籠を仕掛けておいた。
そろそろ御飯が炊けそうだな。
油を火に掛けて天ぷらの準備を始める。ご飯の土鍋を火から下ろして蒸らしておいてる間にエビの仕込みをする。頭を取って腸をとり、腹側に切り込みを入れてしっぽを切る。その間、シルフィードは野草を洗ってくれていた。
エビの頭で出汁をとって味噌汁に。本シメジを具にする。ショワワワと天ぷらを揚げている間にシルフィードは土鍋を混ぜていた。
「このキノコの入ったご飯、スッゴく良い匂いしますね」
「マッタケご飯だよ。天ぷらと一緒に食べよう」
土鍋と揚げたて天ぷらを皆の所に持っていく。
「おやっさん、ご飯炊けたよ。そのままでもいいけど、この大葉を細かくちぎってご飯に掛けたらより合うよ。大葉の匂いが嫌いならやめてね」
「坊主が旨いというんじゃから掛けるわい」
ドワンは学習した。
タレたっぷりの焼き肉をシソご飯の上でとんとんしてから一緒に掻き込む。
「旨いっ!なんちゅう旨さじゃ!」
それを聞いた皆も同じようにして旨い旨いと絶賛だ。焼き肉にビール、またはご飯。王道だね。
俺はマッタケご飯と海老天、野菜天を塩で食べる。
うまーーーぁ・・・
味噌の上澄みでも懐かしい感じがする。マッタケご飯に海老天。秋万歳だ。シルフィードも幸せそうな顔をして食べている。
「ゲイルは何を食べてるのかしら?」
「マッタケご飯と天ぷらだよ。味噌汁もあるから好きに食べて」
アイナはこちらが気になったようだ。天ぷらも初めてだね。
「あら美味しいわ。それとこのサクサクした物はなんなのかしら?」
「テナガエビだよ。さっき捕まえたんだ。天ぷらにすると旨いよね」
エビ出汁の味噌汁と本シメジの味噌汁も抜群に旨い。口はもっと食べたいけど、もうお腹いっぱいだ。
「この天ぷらってのもエールと良くあうわい。味噌汁も濃厚で旨い」
本当に良く食う男どもだよねっと思ってたらミーシャもシソご飯で焼き肉を堪能したあとなのにマッタケご飯と天ぷらをハフハフしていた。
「いやぁ食った食った。もう食えねえぜ」
「ゲイル、こんな旨い飯ならいつでも作っていいぞ」
「ブリックにも教えておくよ。エビも凍らせて持って帰るから。母さん、採って来てくれた大葉の生えてる場所教えて。株ごと持って帰って庭に植えるから」
ご飯も一段落したところでふと思い出した。
「おやっさん、寝かした酒飲んだ?少し匂いを嗅ぎたかったんだけど」
「そうじゃった!あれを飲まんといかん」
おやっさんはグラスに注いでいく。アーノルド、アイナ、ミゲル、ダンが飲むようだ。
くっとクチに入れる。
「ずいぶん角が取れたというかなんというか、蒸留したてと違う酒じゃな」
俺はグラスに残った酒の匂いを嗅いでみた。まだまだだけどほんのりとブランデーの香りがする。このまま寝かして行けば良いブランデーになるだろう。
「ゲイル、これは寝かしている年数がもっと長いともっと旨くなっていくんだな?」
「うん、上手く熟成が進んでるね。このまま寝かして行くともっと色が濃くなってまろやかさと香りが出てくるはずだよ」
皆が余韻を楽しむように飲んだ。
「まだ食べられるならもう一品作るけど。その酒に合いそうなの」
よし作れとドワンが言うので作ることにした。
「ゲイル様、あのお酒は特別なものなんですか?」
次の料理の準備をしていたらシルフィードが聞いてきた。
「あれ、ボロン村のワインだよ。蒸留して違う酒に作り変えたんだよ」
蒸留???
「今年も作るから、小屋に行けるようになったら説明するね。作ってるところを見た方がわかりやすいから」
俺は話しながらエビの処理を終えた。
作るのはテナガエビのアヒージョだ。頭と長い手は素揚げにして塩を振る。
「出来たよ。テナガエビのアヒージョと頭と手の素揚げ。エールにも合うからどっちでも好きな方を飲んで」
うめぇ、おいひでふの声が聞こえる。
「シルフィードもまだ食べられるなら食べといで。俺はもうお腹いっぱいだから」
はいと答えたシルフィードは皆に混じって食べ出した。
満腹の俺は後片付け出来るところだけ進めておくことにする。
流石に満腹になったようで、飲み食いも終わり、アイナが飲む水を出していた。
エビの仕掛けを上げるとさっきよりは少なかったがまた入っていた。誰も獲らないからたくさんいるのかもしれない。泥抜きも必要なかったので、クリーン魔法をかけてから瞬間冷凍し、おやっさんの持ってきたクーラーに入れておいた。
帰りに大葉の株を5本ほど抜いて持って帰る。
「やっぱり外で食う飯は旨いなぁ!?アイナ」
「そうね、ドワンもいるから冒険者時代みたいね」
「外で食う飯が旨いのは確かじゃがこんな旨いことはなかったぞ。アイナのスープと比べちゃいかん」
「なんですってぇ!!」
前にも似たような会話してたな。歳食って飲んだら同じ話をするのは世界中が変わっても同じだな。それに馬で来ていて良かったなドワン。歩きだったらスキル怪力でアイナクローの餌食だったぞ。
「ぼっちゃま、とっても美味しかったですぅ」
俺の後ろに乗るミーシャがいやにべたべたしてくる・・ん?酒臭いぞ
「ダン、ミーシャに飲ませたのか?」
「あの寝かした酒をちょっとだけな。あんまりじっと見つめてくるもんでよ。ほんとに少しだぞ」
はぁ、皆があんなほぅっとした顔で飲んでたら興味がわくか。
「あーミーシャちゃんだけゲイル様にべたべたしてずるいっ!」
シルフィードも様子が変だぞ?
「ダンっ?」
「少しだ、ほんとに少しだっ!」
シルフィードも飲んだのか。しかしエルフの二十歳って成人してるのか?
その後もワイワイ話しながら、俺はミーシャに頭やらなんやら撫でられ、シルフィードがずるいと言い続けながら屋敷に戻ったのだった。
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