第149話 冒険者ギルドの実態

「うわっ、全然違いますね」


屋敷に戻った俺達は牛肉の食べ比べをしていた。ブリックが味見してるのはポポの選んだ肉ともう一つの肉だ。肉の味を確める為に味付けは塩のみ。


俺達も食べ比べる。


「どっちもおいひでふ」


ミーシャは肉なら何でもいいんだろな。


「ポポの選んだ肉の方が味が濃いな。もう片方はスッキリとした味というかちょい物足りない感じだな。何が違うんだ?」


「熟成と言ってね、肉や魚は死んだあと適切な温度で置いておくと旨味成分てのが増えていくんだよ。行きすぎると腐るけど」


「おい、ポポ。そんなの知ってたのか?」


「しらなーい。おいしそうなにおいがするほうをえらんだだけー」


「ブリック、ポポは料理のセンスがあるかもしれんぞ。なんの知識も無く匂いだけで選べるんだから」


「そうですね。自分も驚きました」


「凄い料理人に育てるか普通になってしまうか責任重大だな」


ブリックにちょっとプレッシャーかけたらひくひくしていた。


「みんなは好きに食べといて。ブリック、もう3品作るぞ」


鶏ガラスープと牛肉の切れ端やいらないところで違うスープというか出汁をとる。その間にササミを一口サイズに切って、玉ねぎをスライスする。厚切りと薄切りに。


鶏ガラと牛肉スープの灰汁を取ってどちらも冷ましておく。鶏ガラスープはすぐに使うから魔法で冷まそう。卵を溶いてザルで濾す。そこに鶏ガラスープを入れて塩を加えて容器に注ぎ、ササミ、キノコ、銀杏を入れた。


「ブリック、これをゆっくり蒸して。高温にしちゃダメだよ。次はこの氷水に卵入れてまぜたら薄力粉を入れてまたざっくり混ぜる」


油を温めて溶かした薄力粉をちょっと入れてと。しゅわわわっ。よし良い感じに温まったな。


「ブリック、ササミをこの溶かした粉を付けて油で揚げるぞ。シュワシュワした音が高くなってきたら揚がってるから。それが終わったら薄切り玉ねぎを溶かした粉とまぜて、お玉でそっと油に投入してくれ」


「ダン、この蒸してるやつをちょっと覗いてみて。表面が固まって、傾けて透明な汁が出たら出来てるから」


出来てるらしいのでテーブルに乗せていく。天ぷらも続々と揚がってきた。


みんな見たこと無いものなので興味津々だ。


「ぼっちゃん、揚げ終わりました」


「じゃ食べようか。揚げ物は塩付けて食べて」


いっただきまーす


サクッ


「うわっ、うめえなこれ。ブリックエールくれ!」


もう昼間っから・・・。まぁたまにはいいか。炭酸を強化しておいてやろう。


「熱っ!でもとろとろでおいしー」


「ぼっひゃんこれなんてりょうひでふか」


ミーシャ、ハフハフしながらしゃべってもわからんぞ。


「揚げたものは天ぷら。もう一つのは茶碗蒸し。もう一つのは明後日用だね。じっくり長時間煮込む必要があるから」


「ぼっちゃん、この天ぷらは他の具材でも美味しいと思います」


「そうだよ。なんでもいいんだ。野菜や魚なんかがオススメだね」


「唐揚げやカツは作ってたのに、なぜこれは今まで作らなかったんですか?」


「薄力粉がなかったからね。自分で試してみるといいよ。いつもの小麦粉と薄力粉で。そうすれば俺がなぜ教えなかったかわかるよ」


答えをすぐに言わずに自分で試していくといい。全部俺が教えてあげられるわけじゃないからね。


最後にタンシチューを仕込んでおいた。


俺のお楽しみ用に厚切りタンは味噌漬け、残りは薄切りで塩タン用に準備したけど、小屋に行けないじゃん。明日おやっさんにどこか網焼きが出来るところ教えてもらおう。



夕食後にダンと一緒に執務室に呼ばれた。アイナもいる。


「蛇退治はボロン村から帰って来てから行うことになった。冒険者ギルドと打ち合わせたが、奴の巣穴に攻め込んで戦えるような奴はいないかもしれないとのことだ」


冒険者の街なのにずいぶんとお寒い話だな。


「ダンにも教えて貰ったけど巣穴に囮で入る能力がある人はいないの?」


「優秀な斥候がいるらしいんだが女の子でな。蛇はどうしても嫌だそうだ」


「魔法使いは?」


「いるにはいるんだが、人数が必要だしな。中途半端だと余計に危ない」


「冒険者の街なのにろくな冒険者いないんだね。まずくない?」


「あぁ、まずいな。ここまで酷いと思わなかったな」


「前におやっさんがスタンピードとか言ってたけど、魔物が急激に増えて溢れ出してくることだよね?領軍を編成してないのは冒険者が防いでくれる前提だよね?大丈夫?」


「アーノルド様、今回の蛇でやすがそのスタンピードの前兆とかじゃないでやすよね?森の奥とはいえ、こんな所まで出てくる原因がわかんねぇでやすね」


「蛇退治と共に異常がないか調査する必要があるかもしれんな」


「冒険者学校は進んでるんでしょ?」


「進んでるぞ」


「そこそこの冒険者の底上げとかはしないの?中途半端に実力があると変なプライドで学校へは行かないだろうし」


「そうなんだよな。弱ぇくせにプライド高いやつ多いんだよ」


「俺が対戦しても勝てそうなくらい?」


「ぼっちゃん、魔法ありなら余裕だ。剣のみでも良い勝負出来ると思うぜ」


3歳児の剣と良い勝負・・・

期待するだけ無駄だな。


「ま、ギルドも討伐隊を募ることになってるし、帰ってきてメンバー見てから考えるか」


「そうだね。今考えても無駄だね。母さん、シルフィードはどう?」


「そうね、まだ発動してないわ」


「水魔法は1日で出来たんだけどね。ミスリル棒を使ってみれば?」


「明日ダメだったらそうするわ。」


そっか、まだ発動すらしてないのか?疲れてるのかもしれないな。明後日は治療院も休みだから、牛タンパーティーでもするか。



翌日は午前中シルバーに乗ってオーバルコースを走った。俺もある程度のスピードで乗れるようになってきたのが嬉しい。



昼過ぎてから商会へ向かう。


「なに、フォレストグリーンアナコンダがあの森の奥にいたじゃと?」


「姿は見てないんだけどね」


「おやっさん、間違いないぜ。デカいボアを丸飲みするくらいのやつだ」


「討伐はいつするんじゃ?」


「もうすぐ俺達はボロン村に旅行するからそれから帰って来てからだね。冒険者ギルドがその間に討伐隊を編成する予定」


「そうか、ならいいんじゃが」


「おやっさん、明日どこかで網焼きしたいんだけどいいところないかな?蛇退治が終わるまで小屋にも行けないんだよ。いいもの仕込んであるんだけどね」


「酒に合うのか?」


「キンキンに冷やしたエールに合うと思うよ」


「よし、河原にでも行くか」


河原でバーベキューか。懐かしいな。子供が小さい頃よく行ったな。


「じゃ決まりだね。網作っておいてね。竈は俺が作るから。親方も休めるようなら誘っておいて」


牛タン楽しみだな。牛肉とソーセージとベーコンも用意しておこう。焼き肉のタレっぽいのも味噌ベースで作って持っていくかな。



ゲイルは屋敷に戻ってからあーでもないこーでも無いと焼き肉のタレ作りに没頭したのだった。


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