第148話 仲良くお買い物

森に行けなくなると一気にすることがなくなるな。おやっさんも忙しそうだし。ミーシャを誘って買い物にでも行くか。ボロン村への準備もあるしね。


俺は厨房へと向かった。


「あ、ゲイルちゃま。こんにちは」


「ポポ、おはよう。ミーシャいる?」


「ぼっちゃんおはようございます。ミーシャですか?呼んで来ますね」


とブリックが言うと、


「ポポがいくー!」


そう言ってポポはトテトテと走ってミーシャを探しに行ってくれた。


「ぼっちゃん、どうしたんですか?」


「あの森の奥に大きな蛇が出てね。退治されるまで森には行けないんだよ」


「蛇くらいぼっちゃんならイチコロなんじゃないですか?」


「蛇って言ってもこんなデカいボアを丸飲みするようなやつだぞ。」


「そうだぞブリック。かなりやべぇやつだ。お前なんか格好の餌だな」


カッカッカと笑いながらダンがやって来た。


「ぼっちゃん、今日からどうする?」


「今日はミーシャを連れて買い物に行こうと思うんだ。ほらボロン村に行く予定だから準備しとかないと」


「来週だっけか?蛇退治があるから無理なんじゃねぇか?」


「あれ?父さん冒険者ギルドに話しに行ってるよね?討伐依頼出して終わりじゃないの?」


「あれを退治出来る冒険者がいるかねぇ?巣穴を攻めるのは難しいんだぞ。あの場所だと剣で戦うの無理だろ?短剣なら使えるがアイツに致命傷負わせるのは無理だしな」


「どうやって攻めるのがセオリーなの?」


「おびき出すか、魔法を使うしかねぇな。おびき出すには誰かが囮になって巣穴に入らにゃならんからな、やりたがる奴はおらんだろ」


「じゃ、魔法を使える冒険者中心で討伐に行くしかないんだね?」


「それが無難だな。しかしあいつを倒すには何人必要かわからんな。中途半端な攻撃だと暴れて手が付けられなくなるから一斉攻撃か一撃で倒すかだ」


「ダンは倒したことあるの?」


「一度だけあるぜ。俺の場合は森で遭遇したから巣穴じゃねぇけどな。首を中心に切って頭を落としたんだ。あいつの皮は高額で売れるからな。なるべく傷を付けないように倒さないと丸損だ」


そうか、討伐するだけなら燃やせばいいけど、冒険者は素材を回収して利益出さないといけないからな。


「じゃあ火魔法で燃やすのは良くないんだね?」


「命あってのものだからな。危険な時は素材うんぬん言ってられねぇから燃やすのが一番だな」


「冒険者ギルドに傷付けず倒せる魔法使いはいるのかな?」


「どうだろうな。俺もどんなヤツがいるかわからないからな。アーノルド様が帰ってきたらどうなるか分かるさ」



「ぼっちゃま、お呼びですか?」


呼んできたー!というポポを撫でてお礼を言う。


「ミーシャ、今から買い物に行くけど一緒に行く?」


「はい、行きます!」


「ブリック、薄力粉を買い占めようと思うんだが置いとける場所はあるか?」


「大丈夫です。あ、もしよかったらご一緒してもいいですか?」


「いいけど何か買うのか?」


「食材を買うのですがポポも連れていこうかと思いまして」


「いいよ。それなら皆で行こう」


馬車で行くのも何だし馬に乗るには人数が多すぎだな。歩いて行こう。どうせ今日は暇だ。のんびりでも構わない。


「ブリック、今日の昼御飯はサンドイッチか何かにして勝手に食べて貰え。俺達は外で食おう」


ブリックは慌てて昼御飯を作り、他の使用人に伝言を残した。



皆の準備が整ったので出発だ。ポポはダンに肩車をしてもらい歩いて商店街へ向かった。


「ぼっちゃん、買い物終わったら串肉食おうぜ。それともどこかの食堂にでも入るか?」


「皆どうする?」


串肉~!と声が揃った。肉食系ばかりだな。まずザックのいるロドリゲス商会に向かう。


「あ、ぼっちゃん。いつもありがとうございます。先日はありがとうございました。」


「それはいいんだけどさ、お前俺の名前を誰かに教えたか?」


「あ、はい。あの後色々な人から聞かれましたので」


やっぱりな。まぁ仕方がないか。秘密にしろとか言ってなかったからな。


「あの小麦粉はどうした?」


「はい、順調に・・・」


しまった、売れてしまったのか?


「売れ残っております・・・」


脅かすなっ。


「なら在庫全部買ってやる。次も仕入れといてくれ。あと麦のまま手に入れる事は可能か?」


「栽培されるんですか?」


「ここじゃ無いけどな。なかなかここまで買いにこれないところで栽培してみようかと思ってる。うちはお前の所からちゃんと正規の金額で買うから安心しろ」


「わかりました。在庫が100袋くらいあるんですが・・・」


「ブリック、倉庫に入れとけるか?」


「はいなんとか」


「なら全部運んでおいてくれ。」


「ありがとうございます。本当に助かります。ところでそれだけ買って頂けるところをみると使い道がわかったので?」


「まだ秘密だ。来年か再来年にはいつもの小麦粉と変わらんぐらい売れると思うから仕入れ先をきっちり押さえとけよ。売れ出したらほかの商会に奪われるぞ」


「これはこれはゲイル様。いつもご贔屓ありがとうございます。」


なんか恰幅のいい中年親父が出てきたぞ?


「ぼっちゃん、うちの親父で・・・」


ゴスッ


「店では商会長と呼べと言っただろうが。コホンっ、お見苦しい所をお見せしてしまいました。私はこの商会の商会長をしておりますロドリゲスと申します。いつもザックの尻拭いをして頂きまして誠に申し訳ありません。」


「あー、商会長。そんなに頭を下げないでくれ。ザックのミスはこちらにも面白い発見があったからな」


「いえ、先日はトラブルを収めて頂いた上に商人の心構えまで教育して下さり、商会長としても親としても深くお礼を申し上げたいのです。ゲイル様があの場におられなければうちは不良品を騙して売る店だと思われていたことでしょう。お詫びとお礼を兼ねて本日お買い上げ頂いた小麦粉はサービスさせて頂きます」


サービス?ただってこと?


「いやいや、商会長がわざわざ頭を下げてくれたことで十分だよ。ちゃんと代金は払うよ」


「いえ、代金はザックの給与から差し引きますので、どうぞお受け取り下さい」


いや、それでも・・・


「ぼっちゃん、ここは素直に受けとれ。商会長の面子もあるからな。」


そうなのか?


「わかった。今回は商会長のお言葉に甘えさせてもらうよ」


「はい、今後とも宜しくお願い申し上げます」


商会長が頭を下げるとザックも血の気が引いた顔で頭を下げた。



「ダン、仕入値くらいは払ってやっても良かったんじゃないか?」


「ロドリゲス商会としてあれを受け取ってもらえないと許して貰えてない事になるからな。断ったら余計に大事になる」


「許すも何も俺はあの件でなんとも思ってないぞ」


「ぼっちゃんはそうだろうがな、商売人仲間から見たらそうじゃないんだよ。自分の所のミスで揉めた客がぼっちゃんに無礼を働いたんだ。商会にも責任がある。それを放置したままだとあそこは領主と揉めた所だとかになりかねんからな。詫びを受け取ることで目に見えた和解成立ってやつだ」


そんなもんなのか。元々貴族がどうこうとかの感覚がないからな。よくわかんないや


「じゃ薄力粉は手に入ったし、次は服を買いに行こう。ミーシャ、シルフィードのコートとか見繕ってくれるか?ミーシャのも一緒に買っていいから」


やったー!と喜ぶミーシャ。少し背も伸びたから新しいのが必要だろう。


「ポポも温かい服を買ってあげようか?」


「ポポのも?本当に買ってくれるの?やったー!」


「ダンとブリックはどうする?」


俺達は遠慮するぜとのことだったので、俺達は俺の冬服とロロの仕事用冬服を買うことにした。ロロのは動きやすい皮のジャンパーとズボンを選んでおいた。これなら材木を運んでてもそうは破れないだろう。


「ブリック、待ってる間に肉とか仕入れにいくか?」


「ポポにも仕入れをするところを見せたいと思いますので待ってます」


へぇ、ちゃんと教育っぽいことしてるんだね。


「ぼっちゃま、お待たせしました」


ミーシャは大きな包みを二つ。ポポも1つ袋を持っていた。ミーシャもポポも嬉しそうだ。


肉屋に移動する。


「毎度!ブリックさん。今日は大勢だね。あ、ぼっちゃんお久しぶりです。今日は特別な買い物ですか?」


「他に買うものあったから一緒に来ただけだよ。ブリックは何買うの?」


「牛肉を中心に豚と鶏ですね。」


あ、そうだ。


「ブリック、それ以外に鶏ガラとササミも買っておいて。あと牛タンはあるかな?」


「牛タンですか?」


「ぼっちゃん、牛タンありますよ。いいとこ選んどきますね。」


あるじゃん!やった!シチューと味噌漬け、塩タンだな。


「ブリックさん牛肉はどれにしますか?」


「これがいいー!」


ポポが一つの牛肉の塊を選んだ。


「ポポ、どうしてこっちを選んだんだ?」


「こっちの方が美味しそうな匂いがするの」


匂い?俺はフンフンと匂いを嗅ぐがいまいちわからない。


「お、嬢ちゃん目利きだね。これは今が食べ頃だよ。今すぐ食べないならこっちだね」


なるほど熟成具合が違うのか。よくわかったな。


「ブリック、どっちを買うんだ?」


「ぼっちゃん、両方買ってもいいですか?」


「かまわないけど。どうすんの?」


「食べ比べしたいんです」


「じゃあ串肉やめて屋敷で焼いて皆で食べ比べする?」


さんせーい!


届けますか?と言われたがブリックは自分で持って帰るらしい。それぞれ荷物を抱えてえっちらおっちら屋敷に戻った。


みんなお腹が空いてるから牛肉の食べ比べからだな。そのあとちょっと違うもの作ろう。

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