第144話 めぐみアゲイン
その日の夜、この世界の管理人というか神というかプレイヤーのめぐみを呼び出すことにした。
魔力を込めて呼び出す 。
(めぐみー!めぐみー!おーい!聞こえてるか?)
「何よっ」
あ、来た。
「久しぶりなのに冷たいな。」
「久しぶりって、さっきも呼んだじゃないっ」
「さっきて・・・呼んだの3年ぶりくらいだぞ」
こいつの3年って3時間くらいの感覚なのだろうか?
「そういやちょっと大きくなってるわね?で何?」
「お前、この世界に俺の居た世界からどれくらいの人数連れてきた?」
「さぁ?」
ちっ。
「じゃあ記憶を残した奴はどれくらいいる?」
「最近はあんただけよ」
こいつの最近はかなりの年数経ってるのだろうか?シルフィードの母親はざっくり40年前だろうからな。これは2日くらいの感覚なのか?いやさっぱりわからん。
「最近ってこの世界でどれくらいの年数だ?」
「多分2~300年くらいかな」
300年前が最近か。やっぱり古代遺跡の者は転生者が作った物の可能性が高いな。
ん?
しかし待てよ、俺が居た時代だと小説やアニメで魔法や魔道具とかは知ってるというか空想の産物で誰でも知ってると思うが、2~300年前にそんなものは無かったんじゃないか?
「なぁ、2~300年前に送り込んだ魂って俺の居た時代の人か?」
「なんの事を言ってるのかよくわかんないわ」
あー、知力が足らんからなあぁ。スッと話が通じないのはイラッとする。
「もし、今誰か連れて来たら300年前のこの世界に送り込めるのか」
「もう無理ね。スタートキットの中に好きな時代に送り込めるオプションがあったけど全部使いきっちゃった。ゼウちゃんに追い付きたかったから同じ時代に送り込んだんだけど、発展しかけて全滅しちゃったのよねぇ」
あー、よくわからんけど、初心者ボーナスみたいなあれか。しかし、他の世界の魂を送り込むのは反則じゃなかったっけ?こいつの話はテキトーだからなぁ。
まさか今ここにいる魂を過去に送るオプション、すなわち未来を知る魂を過去に送るためのシステムを悪用したのじゃなかろうか?元の世界でも現在の知識を持った人間がゴソッと過去に送り込まれたら急速に発展する可能性があるからな。この世界がゲームだとしたらオプションとして用意されててもおかしくない。まぁ、知らないことを想像しても仕方がない。
「あと、魂は同じ種類にしか生まれ変わらないといってたけど、人間がエルフに生まれ変わったり、ドワーフになったりする?」
「それは無いわ。エルフはエルフ、人間は人間よ。例えばエルフと人間の間に生まれた魂は見た目は混じってるかもしれないけど、魂はどちらかよ」
「見た目はハーフでも中身はエルフか人間のどちらかってことか?」
「そうね」
「で、エルフに転生した魂は無いってことで間違いないな?」
「あんたの居た世界にエルフは居なかったでしょ?」
「多分ね」
「そゆこと。じゃーねー!」
あ、帰りやがった。まぁ聞きたい事が聞けたからいいか。地球の記憶を持ったエルフが居ないと分かっただけで良しだ。
しかし、ハーフでも中身はどちらかなんだ。シルフィードの魂は確実にエルフだな。もう20歳なのに10歳くらいにしか見えない。成長の遅さに納得したわ。
その頃のアーノルド達の寝室。
二人はヒソヒソと話をしていた。
「それって本当なの?」
「あぁ、ゲイルの実験も上手く行ったからな」
「この件は私達だけの秘密にしておくの?それともエイブリックにも話すの?」
「国として備える必要があるのはわかるが、この話がエイブリックだけに留まるわけじゃないだろ?」
「そうね、備えるには宮廷魔道士や軍を巻き込むわね」
「軍部が暴走したらエルフの里を探しだして先に攻撃を仕掛けようとするかもしれないからな」
「そうなれば最悪ね」
「そうなんだ。シルフィードの事もあるし俺はエルフの里を探そうと思っている。エルフ達の文明というか武力を確認しておきたいのもあるが、何よりエルフは人間に対してどう思ってるのか確認したいんだ」
「そうね、でもあなたが探しに行ったら領地はどうするの?実務はセバスが代行するとしても判断は無理よ。」
「そこなんだよな。アイナがやってくれないか?」
「無理よ。治療院もあるし、政治はやったことないもの。あなたが探しに行くのは現実的ではないわ。それにあなたがエルフの里を見つけられたとして上手く交渉出来るのかしら?」
「腹を割って話せばなんとか・・・」
「人間を警戒しているエルフが腹を割るわけないでしょ。それにエルフ達が兵器を作ってたとしてもあなたじゃ見てもわからないじゃない」
「それはそうだが・・・」
「ねぇ、ゲイルに行ってもらう?あの子なら上手く話も出来るし、魔道具の鑑定も出来るんじゃないかしら?シルフィードもずいぶんゲイルを信頼してるしね」
「しかし危険過ぎるぞ。ゲイルはまだこの領地以外の場所は湖とボロン村しか知らないんだぞ」
「そうね、私も心配よ。でも事が事だけに対策は早くした方がいいわ」
「しかし・・・」
「なら、春にドワーフの国へ行った結果を見てからにしましょ。問題無く帰って来たらエルフの里を探しに行くのも大丈夫だと思うわ」
「危険な魔物に遭遇するかもしれないんだぞ」
「ゲイルとダン、それにドワンがいたらあなた勝てる?」
「か、勝てるさ!」
「ゲイルが魔法攻撃しながらドワンが盾になってダンが切り込んでくる。怪我してもすぐに回復して、あなたが距離を取ってもゲイルに加えドワンやダンが銃で攻撃してくる。あなたの顔は水の玉に包まれてるわ。どう対応するのかしら?」
何でアイナが水の玉に包まれている俺を知ってるんだ・・・
「あぁ、確かに厳しいな」
「ね、信じられないけどあの子はもうそんなに強くなってるのよ。対人戦で負けることなんて考えられないし、ディノ相手でも勝てるんじゃないかしら?」
「何っ?ディノを」
「あの子離れてても無詠唱で魔力吸えるのよ。あらゆる魔法攻撃をしながら魔力吸って回復して攻撃出来るなんて回避無理よ」
・・・・・
「そうか、あいつはもう俺より強いのか・・・」
「そういうのとちょっと違うわ。あの子は何かを成す為にこの世に生まれてきたんだもの。単純に強い弱いじゃなくてね。いずれ領主もゲイルがしてくれたらいいけど、あの子はこの領に収まる器じゃないわ。」
「そうか、そうだな。ゲイルは否定しているが神の使徒として生まれてきたんだ。もっと大きな世界で活躍して貰わないとな」
「そうよ。それとエルフの里探しはシルフィードも連れて行く事になるでしょ?」
「グリムナがエルフの里にいるならそうしたほうがいいな」
「ならボロン村のダートスにも話を通しておいた方がいいと思うわ。冬の間はシルフィードが居なくても困らないだろうから、春までここにいて剣の稽古はあなたに、魔法の稽古はゲイルにして貰って自衛能力を少しでも上げておかないと」
「なら、ベントの合格祝い旅行をボロン村にするか?ベントが喜びそうな場所はわからんからな。シルフィードの事も気になってるみたいだし、出身地に連れていってやったら喜ぶだろ」
「そうかもしれないわね。シルフィードと旅行出来ていいかもね。モテモテねシルフィードは」
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