第138話 またか
「で、父さんは何魔法を使いたいの?」
「もちろん火魔法に決まってるだろ」
なんでみんな火魔法をなんだろ?サラマンダーとか火に強い魔物には不利だよな。それに洞窟とかだと自分も熱でやられそうだし、森だと火事の心配をしないといけない。水とか土の方が使い勝手いいと思うんだけど。ファイアボールも土の弾丸に比べてスピード遅いから避けやすそうなんだよね。
「なんで火魔法なの?」
「カッコいいからだ」
さいですか・・・
「アーノルド、ゲイルに魔力量見てもらわなくていいの?」
「あぁ・・・。別にいいかな」
「あら?見られたくないものでもあるのかしら?」
「な、無いぞ!断じてないっ!」
慌てるアーノルド。
「じゃあ見てもらえば?鑑定された経験があったら誰かにコッソリ鑑定されたときにわかるわよ」
鑑定魔法の使い手が見たらもっと詳細が見えるかもしれないな、例えば弱点とか。見られてるのに気付いたらレジスト出来るかもしれないし、アーノルドには鑑定される経験が必要かもね。
「父さん、やましいことないなら見るけど。仮にやましいことが見えても黙っておくから」
「変な心配すんなっ!何も無いっ!」
「じゃあ見るよ。いいよね?」
「お、おーひわかっは」
めっちゃ動揺してんじゃん。隠し子とかいるんじゃないだろうな?
アーノルドは観念してさぁ見ろと言ったので鑑定する。
【名前】アーノルド・ディノスレイヤ
【種族】人
【年齢】36歳
【魔力】3783/3783
【スキル】剣神
ほー、剣神なんてスキルがあるんだ。多分知らずに使ってるんだろうな。スキルは黙っておこう。言ったら喜びそうだが、そうするとアイナのスキルも言わないといけなくなるからな。
魔力も結構あるな。身体強化しか魔法使ってないのに。やっぱり魔物を倒してるのが影響してるんだな。ディノに止め刺したのアーノルドだからかもしれん。
コソッ
(どうだ俺の魔力は。アイナやダンより多いか?)
なーんだ、魔力が人より少なかったら嫌だったから見られたくなかったのか。本当に子供だよなぁ。ベントはこういう所だけ受け継いだのかもしれん。
「父さんの魔力多いよ。俺や母さんよりも多い。3800近くあるよ」
「なにっ?それはホントか?」
「嘘ついてどうすんのさ。ディノ倒した影響じゃないかな?止め刺したの父さんなんでしょ?」
「みんなの力を合わせて倒したが、確かに止めは俺だったな」
「魔力切れもマジックポーションもほとんど飲んでない父さんが一番多いのはその影響だと思うよ。」
「そうか、そうか。俺が一番多いか!聞いたかダン!」
「さっきも説明したけど、魔力量が多いより最適化出来る方が魔法たくさん使えるからね。最悪ファイアボール2~3発しか撃てないかもよ」
調子に乗り過ぎる前に釘を刺しておこう。
「ぐぬぬっ、俺も練習してたくさん使えるようになってやる」
いや、あんたもう使う機会ないじゃん。領民でも燃やすつもりか?
「じゃ、やってみようか。言っとくけど、前みたいに爆発とかさせないでよね」
火魔法は扱いを間違うと危ないからな。ちゃんと言っておかないと。
準備が出来たのでアーノルドに手を触れて魔力を流し始める。
「父さん、ファイアボールを強くイメージして」
アーノルドが集中し始めると身体が金色に包まれていく。
「父さん、身体強化じゃないよ、ファイアボールっ!」
一度魔力を止める。
「すまん、どうも勝手が違うな」
「じゃ、俺が父さんの身体からファイアボール撃つからその感覚を肌で感じて」
俺はもう一度アーノルドに手を置き突き出されたアーノルドの手から小さめのファイアボールを何発か撃った。
「今の感じわかる?はい今見たファイアボールをイメージして撃って」
うぬぬぬっと集中すると今度は金色じゃなくうっすらと赤色に染まり出す。
「いいよ、その調子」
ダンもそうだったが、魔力の放出に難があるみたいだな。魔法を使った事が無い人はこんな感じなのだろう。
俺は誘い水のようにファイアボールを撃とうと魔力を流した瞬間、
「だーーーっ!」
あ、バカっ
どかーーーんっ!
一気に魔力が放出されて的の向こう側の木々が消し飛ぶ。詰まってたホースのゴミが外れて一気に水が吹き出したみたいな感じだ。
キュウッ
その場で倒れ込むアーノルド。チラッと鑑定するとアーノルドは魔力が0になっていた。
しかし、森の火災の方が心配だ。俺は大量の水を燃える木々にぶっかけて消火した。ほぼ全魔力を投入しないといけないくらいだった。
アーノルドはまったく魔法に向いてない。危険すぎる。まるで安全装置の外れた爆弾みたいなもんだ。
俺は魔力水を舐めて回復し、アーノルドに少しだけ魔力を注いで回復させた。
「父さん、前にも爆発させたよね?」
「す、すまん」
アイナも呆れ顔だ。ドワンもダンもあまりの威力に失敗したアーノルドをからかうことも出来ない。
「ゲ、ゲイル。ダンはどうやって使えるようになったんだ?」
「おやっさんにミスリルで銃を作って貰ったんだ。あれがあれば魔力の放出がスムーズに出来る」
「な、何?始めに見たあれか。あれが銃というやつか?ドワン、俺にも売ってくれ。いくらだ?」
「アーノルド、あれは売り物じゃねぇ」
「お前達は持ってるじゃないか!」
「あれは坊主が考えたもんだ。作ったのはワシじゃがな。春にドワーフの国に行く時の為の保険じゃよ。坊主に万が一の事があってはならんからの。攻撃手段を増やしたまでじゃ」
「そ、そうか・・・」
ほれっ
ドワンはアーノルドに銃を投げ渡した。
「こ、これは?」
「お前のじゃ。売り物じゃねぇと言っただろが。お前も欲しがると思って作っておいたんじゃ。使いたきゃ使え」
「ドワン・・・」
アーノルドに渡された銃はマグナムみたいな感じのやつだった。
「じゃさっそく・・・」
「父さん、魔力ないでしょ。また今度ね」
「そんな殺生な・・・」
魔力水舐めたらいけるけど黙っておこう。俺はアーノルドが吹き飛ばしたところを改造しないといけない。
「アイナとシルフィードもミスリル銃が欲しいか?」
「わたしは大丈夫よ。守ってくれるんでしょアーノルド?」
オークワンパンのアイナなら守る必要ないだろうよ。
いでででで
声に出してないはずなのにアイナクローを食らった。
「わ、私も大丈夫です。ミスリルなんて高価な物を持ってる方が危ないかもしれないので」
それはそうかもしれないな。魔法発動が出来る人には特に必要なものでもないし。
欲しくなったら何時でも言えとドワンは言い残した。
ミスリル銃って買ったらいくらになるんだろ?とてもじゃないけど普通の人は買えないだろうな。それをぽいぽいあげちゃうドワンってすげぇな。
ドワン達はミスリル銃の使い方談義を始めたので俺はアーノルドが燃やした跡地に火種が残ってないか確認に行く。ポテポテとシルフィードも付いてきた。
「ゲイル様、何かされるんですか?」
「火が残ってないか確認しとかないとね。もし燻ってて帰った後に燃えだしたら大変だから」
「私も一緒に確認します」
ありがとうと言って二人で見回りをした。しかしものの見事に木が無くなってるな。4000近い魔力を一気に放出したらこんなことになるんだな。最適化された俺がやったらどうなるんだろうか?果樹園の開墾が一発で出来るかもしれない。
「もう火は大丈夫そうだね。もうどこも熱くないや」
「そうですね。植物魔法で緑に戻しますか?草くらいなら生えますけど。」
「いや、ここを利用して射撃場を作るよ。どうせまた父さん達が火魔法でやらかすかもしれないし」
「射撃場?」
「うん、こんなの」
俺はそういって土魔法で巨大な壁を作りだした。10mくらいの屋根と横壁付きだ。射撃位置から50mくらいのところと壁際にいくつか土魔法で的を作る。射撃位置からだいたい100mくらいか。
ドワンやダンも撃てる数が増えてきたので次はコントロールを良くしていかないとな。
試しにミスリル銃で的を狙って撃ってみる。
スガガガガっ!
全弾命中。次は銃無しで
スガガガガっ!
こっちも問題ないな。100mくらいの距離ならもう動かない的で外しようが無い。
「あ、あのゲイル様」
俺の射撃を見ていたシルフィードが話しかけてきた。
「あ、あの、私も鑑定していただけませんか?」
「いいけど、自分の魔力を知りたいの?」
「はい。自分の魔力が少ないのか最適化っていうのが出来てないのか知りたいんです。魔力量が少ないのなら仕方がないと思うんですが、最適化が出来てないならもっと工夫出来る可能性がありますから」
「じゃあ、もう一度苗作りながら見てみようか。そうすれば魔力量もわかるし、植物魔法にどれくらい使ってるのかわかるから。でもいいの?何が見えちゃうかわかんないよ」
「はい、構いません。自分の事を自分もよくわかってませんので、何か見えたら教えて欲しいんです」
父親の記憶がほとんどなく、母も10歳くらいの時に亡くなり、住んでた所も捨てて逃げてきたんだったな。何も分からないのは当然か。
「それは知りたくなかった事も含めて全部?」
「はい。何も知らないよりいいですから」
「分かった。じゃ、植木鉢作って種植えよう。前と同じ5個でやるからね。商会でやってもらった時はそれで限界だったから」
「はい、それでお願いします」
一旦小屋に戻って予備に持ってきておいた種を取りに行く。
「お、ぼっちゃん。何やってたんだ?」
「父さんが燃やした森の後始末だよ。消し漏れがないかの確認」
アーノルドはそれを聞いてポリポリと頭を掻いた。
「火魔法の練習しても大丈夫なようにしてきたから見てきたら?」
それを聞いたアーノルドはよし行くぞと掛け声をし、皆走っていった。
「もう、親と子供の役割逆転してるわね」
そう呟きながらアイナも見に行った
「じゃ、やろうか。」
植木鉢に種を植えて準備完了だ。
「じゃ見るよ」
シルフィードはコクンと頷いた
鑑定っと
【名前】シルフィード・グローリア
【種族】ハーフエルフ
【年齢】20歳
【魔力】6120/6120
ブッ!なんだこの魔力。それに家名・・・?
はっとシルフィードを見ると胸を隠してモジモジしていた。
「ど、どうしたの?」
「は は・・・」
真っ赤になるシルフィード。
「は、なに?」
「は、裸を見られてるような感覚が・・・」
「み、見えてないっ見えてない!鑑定は名前とかが見えるだけだからっ!」
「そ、そうなんですね。すいません。変な事を言って」
自分で自分を見てもそんな感覚がないからな。自分で自分をくすぐるようなものかもしれん。
「じゃ、苗にしてみて」
「は、はい」
恥ずかしそうに胸を隠してた手を外して植木鉢に向ける。
ぶつぶつぶつと詠唱を始め、緑色の光が植木鉢に注がれ、するすると30cm程の苗になった。
【魔力】5720/6120
使用魔力は400。植木鉢1つに付き80か。俺の倍使ってるからまだまだ最適化する事が出来るだろう。
俺は鑑定を止めた。
「シルフィード、魔力が無くなりそうな感覚はあるか?」
「はい、半日もすれば元に戻りますが、今はもうダメです」
どういうことだ?おれの魔力量の倍近くある。それはさすがエルフの血を引いているとしか言いようがない。
が、魔力が6000以上あって400使っただけで魔力が切れそうに感じるとは?
昔の充電式の電池みたいなものなのか?バッテリーが無くならないうちに充電を繰り返すとメモリー機能が働いて性能が発揮出来なくなるというやつ。
いや、アーノルドやダンは身体強化を少し使っては回復してたはずだ。それなら魔力を持っててもほとんど使えなくなってしまうはずだ。メモリー機能の線は薄い。
となると、精神的なものか、何かエルフやハーフエルフ特有の制限とかあるのか・・・
ぶつぶつぶつ。
「ゲイル様っ!ゲイル様?」
シルフィードが必死にゲイルに呼び掛けるがゲイルの耳には届いていなかったのだった。
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