第137話 あっちゃぁ

「もうお昼よ。ご飯食べながら話しましょう」


俺とアーノルドはむんずと頭を掴まれたままコクコクと頷いた。


小屋にある食料でお昼ご飯を作る。ホットドッグとジャーマンポテトにした。簡単なお昼ご飯だが好評だった。ドワンは味噌焼きボア丼を食べたかったようだが狩りに行ってないから仕方がない。


「ゲイル、この魔法水ってどうやって作ったか見せてくれる?」


アイナに言われて俺は小さなコップを作って水を入れる。そこに魔力を流して甘い水にした。


「こうやって水に魔力を流すだけだよ。飲んでみて」


アイナはそれをくいっと飲んだ。


「あらホント。甘いわね。マジックポーションよりスッキリした味だわ。もしかして最近朝に出てくるジュースはこれで味付けしているのかしら?


「そうだよ。ブリックには甘味料として渡してある。朝飲んで貰ってるのは魔力総量の底上げになればいいかなと思って」


「魔力総量の底上げ?」


「あ、その話はしとらんかったワイ」


ドワンの説明漏れか。どこまで話したかわからんな。


「魔力の上限を越えて魔力が回復すると、魔力の総量が上がるんだ。朝ならまだ魔力使ってないから一番効率がいいかなと思って」


「言ってる意味がよくわからないわ」


キョトンとするアイナ。


「ゲイル、詳しく説明してくれ」


「人の魔力が増えるのには条件がいくつかあるんだ。成長による増加、魔力を使いきってから回復する事、魔力上限を越えて回復する事、強い魔物を倒すこと。今わかってるのはこれだけ」


「それはどれくらい増えるんだ?」


「自分のは鑑定しながら確認したからわかるけど、人のはわからない。多分個人差があると思う。それに同じ魔法でも人によって魔力使用量が違うからたくさん魔法が使えるから魔力総量が多いとは限らないんだよ」


????


アーノルド、アイナ、シルフィードはちんぷんかんぷんだ。


「例えばダンが魔力100使ってファイアボールを撃ったとするでしょ。俺はダンと同じ威力のファイアボールを撃つのに魔力は1しか使わないんだ。これは同じ魔法を何度も使うことでだんだん魔力使用量が減っていく。火魔法を使い慣れていないダンは魔法の効率がまだ悪いからね」


ドワンとダンがうんうんと頷く。二人とも初めより撃てる弾数が増えてるからね。魔力最適化を実感してるのだろう。


「ゲイル、それは治癒魔法でもおなじかしら?」


「そうだね、治療院の従業員も新人の頃より多くの治療出来るようになってない?」


「そうね、マジックポーションを飲む回数が減っていくわね」


「治療魔法を使いなれて魔力最適化ってのが行われていくんだよ。成長による魔力の増加は少なくて1年や2年でそんなに増えないからね。使う魔力が減ったと考える方が妥当だね。」


「そうなのね。なんとなく分かったわ」


「他にも色々あるかもしれないけど、自分の魔力総量が多いか少ないかもわかんないし、平均とかもわかんない。ただ自分の魔力最適化能力は高いんだと思う。何度か使うだけでどんどん魔力消費が少なくなるから。おやっさんが撃った土魔法攻撃程度なら何発撃ってもほとんど魔力が減らない」


「ぼっちゃんが一番使ってるのが土魔法だからな。硬い柔らかいとか自由自在に出来るしな」


「ちなみに私の魔力はどれくらいあるのかしら?」


「今まで人の鑑定したことなかったんだよ。鑑定魔法はよくわからない事が多くて自分の魔力を確認するくらいしか使ってなかったから。だから人を鑑定したら何が見えるかわからないんだ。その人にとって見られたく無いものまで見えちゃうかもしれないし」


「誰の鑑定もしたこと無いのか?」


「この前、初めてダンを鑑定してみた。ダンが魔力量増やしたいからって。ちゃんとダンの了解の元だよ」


「アーノルド様、ぼっちゃんの言うことは本当ですぜ。俺が頼んだんだ。鑑定されたらなんかくすぐったいような覗き見られて恥ずかしいような感覚がありやした。あんなのは初めての感覚だったんでそれまでぼっちゃんは見たことが無いのは間違いないでヤス」


ちょいちょい口調が前に戻るダン。


「鑑定魔法で見られるってそんな感覚なのね。ちょっとわたしを見てくれる?自分の魔力量がどれくらいあるか興味あるわ」


自分を鑑定しろと言い出すアイナ。


「見られたく無いものまで見えちゃうかもしれないよ!?」


「あら、息子に見られたく無いものなんて無いわ。気にしないで見てちょうだい」


まぁ、本人がいいと言ってるんだ、気にしないでやろう。


「じゃ見るね」


鑑定っと


「きゃっ!」


「どうしたの?」


「ゲイル、あなた母さんの事エッチな目で見てる?」


な、な、な、何を言う出すんだこの派手派手ヤンキー頭の母さんは!?


「げ、ゲイル。おまおまおまっ 母さんをそんな目で・・・」


「違うっ!さっきダンが言ってたでしょ。くすぐったいような変な感覚があるってっ!」


「あ、そうだったわね。鑑定されるってこんな感じなのね。初めて知ったわ。ごめんねゲイル。続けて頂戴」


まったくもー。


もう一度鑑定っと。


【名前】アイナ・ディノスレイヤ

【種族】人

【年齢】33歳

【魔力】3312/3312

【スキル】怪力



ぶっ スキルとかあるんだ。それが怪力って・・・


魔力も俺と同じくらいあるな。強い魔物を倒したり、マジックポーションをしょっちゅう飲んでるせいかな?それとも成長による伸びが高いんだろうか?


あと33歳か・・・意外と歳いってたな


ゴッ


痛った 殴られた。


「誰が歳いってるのよっ!」


あ、声に出てたのか・・・


「いや、母さんは25歳くらいだと思ってたから・・・」


バシっ!


いっだぁぁあ!


「やあねぇ、そんなに若いわけないでしょ。いくつでジョンを生んだと思ってんのよ」


照れ隠しに叩くのは止めてくれ。【スキル】怪力があるんだから。


「で、どうだった?」


「魔力が3300くらいあったよ。俺と同じくらいだね」


「それは多いのかしら?」


「多分。冒険者時代に強い魔物を倒してたのと治療院でマジックポーションを飲む機会が多かったからだと思う。成長での魔力の伸びが高かった可能性もあるけど」


「ゲイルはもう私と同じくらいあるの?」


「うん、毎日魔力底上げの訓練してるからね。」


「お前、そんなことしてたのか?」


「小屋作ったり、地下室作ったりするのにすぐ魔力切れになるから魔力がたくさん必要だったんだよ。多過ぎて困るもんじゃないし」


「何やってたんだ?」


「魔力を0にしてすぐ回復の繰り返しだよ」


「それをすると魔力はどれくらい増えるんだ?」


「魔力0→回復で1増える。」


「あの気持ち悪い思いをしてたったの1しか増えないのか?」


「魔石を使うと気持ち悪くなる前に回復するから、0→1、0→1を繰り返すんだよ。夜寝る前に水に残ってる魔力を1になるまで捨てて、そこからやるんだよ。魔力水は魔力を捨ててた副産物」


「魔石を使う?」


「俺は魔石に魔力を入れることも吸うことも出来るからね。マジックポーションだと魔力無くなると飲めなくなるかもしれないし、回復にもタイムラグがあるし、必要以上に回復してしまうから効率が悪いんだ。魔石を使うのが一番効率がいい」


「魔石は魔道具や魔法陣の起動に遣うもんだろ?そんな使い方ができるのか?」


「人の魔力吸ったりするより簡単だよ。さっき切り株でやってみたら出来たから何からでも吸えるんじゃないかな?」


「「「「切り株から?」」」」


全員の声が揃った。


「ゲイル様がさっき、切り株を全部枯らされました」


切り株から魔力を吸って枯らすのを見ていたシルフィードが説明すると、ダンが外に飛び出して確認しに行く。


「な、無いっ!さっきまであんなに力を入れても抜けなかった切り株が無くなって整地されている・・・」


全員で外に出て見に行く。


「坊主、どうやったんじゃ?」


「ダン、どれか木を切って」


ズバンと木を切ってくれたので、その木をどかして切り株に手をやる。


ズズズズズッ


あっという間に朽ち果てる切り株。そこを土魔法で整地した。


「はい終わり。植物魔法の応用だね」


「グリムナでもこんなこと出来んかもしれん。それに植物魔法なんていつ覚えたんだ?」


グリムナ?誰?ま、いいか。


「植物魔法はこの前シルフィードに教えて貰ったんだよ」


「どうやって?お前、古代エルフ語を知ってたのか?」


アーノルドは植物魔法の詠唱が古代エルフ語なの知ってたのか。


「いや知らないよ。シルフィードの詠唱も何言ってるかさっぱりわかんなかった。でも魔法に詠唱要らないって前に説明したじゃん」


「そ、それはそうだが、見ただけで出来るようになったのか?」


「いや、シルフィードの植物魔法を俺の身体を通して使って貰ったんだよ。流れる魔力の感じを覚えて使えるようになった。あ、後で母さんにも治癒魔法を教えてもらいたいんだ。俺のは欠損部位まで治らないだろ?母さんのと何が違うかやってみて欲しいんだ」


「そ、それは構わないけど・・・」


「ゲイル、俺にも魔法を流すことで使えるようになるのか?・・・いや出来るんだな?あっ、ドワン、ダン!お前らさては・・・ちくしょう!汚ねーぞ!コッソリ自分等だけやりやがって」


あちゃー、もうばれちゃったよ。もう少し引っ張って何かねだろうと思ってたのに。





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