第121話 捕らぬ狸の皮算用
「ちょ、ちょっとぼっちゃん、新人って」
「新人のポポだ。じゃ、あと宜しく~!」
「ちょ、ちょっと~ぼっちゃ~ん。あ、ひでぇ、さっさと行っちゃったよ・・・」
「ブリックさん、私も一緒にやりますから」
「ブリックのおじちゃん、ポポだよ」
お、おじちゃん・・・
「ポポ、お、おじちゃんはやめてくれないかな・・・」
「え~っ じゃあブリックおにぃちゃん」
ズキューーーン
お、おにぃちゃん・・・
「も、もう一度言ってくれないかな?」
「ん?ブリックおにぃちゃん!?」
はうぅ
「ポポちゃん一緒に頑張ろうね」
「うんっ!」
ブリックは陥落した。
「ロロは馬に乗れるか?」
「いえ、乗ったことありせん」
「じゃあダンと一緒に乗って」
「ゲイル様は一人で乗るんですか?」
「乗れるよ。うちの馬達は賢いからね。」
ゲイルはひょいとしゃがむシルバーによじ登った。ロロはその様子を目を見開いて見ている。
「おやっさん、親方は来てる?」
「おう来とるぞ。お、あの時の小僧じゃねーか」
「ロロです。しばらくゲイル様の所でお世話になることになりました。」
ロロはうるさい強面の冒険者を殴り倒したドワンにビビりながら挨拶をした。
「ワシはドワンだ。おいミゲルこっちへ来い」
「なんだ? お、坊主なんだそいつは?」
「うちでしばらく面倒を見ることになったロロだよ。ロロ、大工のミゲル親方だ。」
ロロはミゲルにも挨拶をした。
「親方、果樹園を作りたくて良い場所見つけたんだけど、ものすごく木が生えてるんだ。開拓するのにどれくらいかかるか見てくんない?」
「かまわんぞ。その小僧も連れていくのか?」
「ロロには畑とか手伝ってもらう予定だから一緒に連れていくよ。田んぼの開拓の手伝いとかもしてもらうからね」
「よし、じゃ今から行こう。兄貴も来るか?」
「そうじゃな、あの梨を作る所じゃろ?それなら見とかんとな」
そういうとダンがおやっさんを乗せてウォッカを連れに行った。
それぞれの馬に乗り現地へ向かう。
「おい坊主、こりゃあ時間かかるぞ。年単位で開拓していって10年はかかるんじゃねーか? それに他の木を植えて行くんだろ?根も掘り出さないとダメだからな」
「やっぱりそうだよねぇ。街から歩いて来れて、陽当たりの良い傾斜がある場所ってここしか無いんだよ」
「地道にやってくしかねぇんじゃねぇか?」
「仮に土が柔らかくて簡単に木が引き抜けたらどれくらいかかる?」
「そうだな、掘らずに抜けるなら1~2年でなんとかなるかもしれんな」
「費用はどれくらいかかる?」
「そうだな、木が建築に使えるとして、それをこちらが買い取りに回しても1年間で金貨200枚は必要だな。2年で400枚、これが最低ラインだな」
年間金貨200枚だと2億か。合計4億。まぁ、5億は必要だろうな。凄い金額だけど親方の事だ、利益抜きの経費だけの金額だろう。
「最低金貨400枚か。500枚は覚悟しとかないとダメだね。とてもじゃないけど払えないや。ありがとう親方。ちょっとどうするか考えてみるよ。開拓するにしても来年の春以降にしか無理だしね」
「そうじゃな。さすがに今言われてもワシも無理だ」
「おい坊主、自分で払うつもりじゃないだろうな?」
ドワンが聞いて来た。
「え?そのつもりだったんだけど」
「そんなもん無理に決まっとるじゃろが。この規模の開拓は本来領地がやるもんじゃ」
「まだ成功するかどうかわかんないのに父さんを巻き込むのもどうかと思ってね。果物の栽培を軌道に乗せるの難しいんだよ。」
「アーノルドを巻き込めと言ってるんじゃない。商会を使えと言っとるんじゃ」
「え?いいの?」
「当たり前じゃ、誰の商会だと思っとるんじゃ。坊主がやるつもりならこの開拓に投資すればいい。全額前払いは無理じゃが月々払っていけばいけるじゃろ」
「そんなに儲かってるの?」
「儲ければいいんじゃ」
あー、はい。分かりました。
「じゃ、取りあえず去年出来なかった片栗粉の販売をしよう。王都で需要があれば数でるよね?」
「そうじゃな。領で売るより高値になるからな。じゃがいもは確保してあるが追加で手配しておくわい」
「宜しく。俺はもっと簡単に大量に作れる方法を考えるよ」
ワイワイとそんな話をしているのをロロはじっと聞いていた。
商会に戻り今後の流れを確認。シルフィードが手伝いに来てくれて、すぐに実が成るようになることが前提の打ち合わせだ。捕らぬ狸の皮算用にならないようにしないとな。
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