第108話 アルファランメル森デビュー
朝飯前、馬に乗りに来たらジョンとアルはもう来ていた。
「おはよう、早いね」
「あぁ、待ちきれなくてな」
馬の世話人達が牧場に馬を放牧しに来たのでシルバーを呼ぶ。
「シルバーおはよう、今日はジョン達を乗せてあげてくれる?」
ブンブン
「いいよ、だって。どっちから乗る?」
「アルから乗ったらどうだ?楽しみだったんだろ?」
「いいのか?お前も楽しみだったんだろ?」
「構わんよ、先に乗れ」
そう言われたアルは嬉しそうな顔でシルバーに乗りに行った。
「踏み台はあるか?」
「このあぶみに足掛けて乗ってみて」
あぶみの使い方と乗り方を教えて自分で乗ってもらう。シルバーはじっと待っててくれるので乗りやすいはずだ。
「よっ! の、乗れたぞ。踏み台無しで乗れた!」
喜ぶアルファランメル。
「シルバー、ゆっくりコースに出て軽く走っておいで」
シルバーは言われた通りにポコポコ歩いてコースに向かう。
「おう、ジョン帰って来ておったのか」
「あ、おやっさん。お久しぶりです。昨日帰って来ました」
ドワンも馬に乗りに来たようだ。
「今シルバーに乗っとるのは誰じゃ?友達か?」
「騎士学校の友人でアルファランメルです」
「アルファランメル? エイブリックの息子か?」
「知ってるんですか?」
「小さい頃にな。お前と同じ歳じゃったか」
フムフムとアルを眺めるドワン。
「アルのやつ中々上手く乗れてるじゃないか」
アーノルドとアイナがやって来た時にコースを軽く一周してアルが戻って来た。
「このあぶみってのがあると乗りやすいな。一人で馬にも乗れるし俺も欲しいぞ」
「それ作ってくれたのおやっさんだよ。今は販売もしてるから」
おやっさん?
「エイブリックの息子よ、久しぶりじゃの。ワシの事は分かるか?」
「父さんの事を知ってるドワーフ・・・」
「アル、ドワンだ」
アーノルドが紹介する。
「あ、アーノルドさん、アイナさんおはようございます。あの方はドワンさん・・・!あ、父さん達とパーティーメンバーだった・・!?」
「そうじゃ、お前とは坊主くらいの時に会っとるが覚えとらんのも無理はないの」
「すいません」
ちょっと気まずそうな顔で笑うアル。
「それが普通じゃ、坊主みたいな奴は特殊じゃからの」
ドワンがそういうとみんなが笑った。
それぞれが自分の馬に乗り、軽くコースを走らせ、戻って来たジョンに話しかける。
「アルが来た歓迎会しないとね。何かリクエストがあったらブリックに言っておくけど」
「いや、森で歓迎会をしたいな。アルを驚かせたい」
森か・・・。ドワン達も呼びたいけどベントがなぁ。
「ジョン、森もいいけど、まず屋敷でちゃんとした歓迎会をしたら?まだ到着したばかりで疲れてるでしょうし」
アイナが屋敷でやったらとジョンに言う。屋敷でまずはディノスレイヤ家としての歓迎会という意味だろう。
「そうですね。じゃあ、鉄板焼が良いです」
「わかった、ブリックに頼んでおくよ」
今晩、アルの歓迎会をすることに決まった。
「じゃあ、昼飯を森で食おう。自分で狩った獲物を食うんだ」
「お前がいつも言ってたやつか?」
「そうそう、稽古とぜんぜん違うからアルも勉強になるぞ」
「ワシも久しぶりに行こうかの」
ドワンも行くとのことなので、朝飯食ったら迎えに行くことに。
朝御飯はホットドッグだった。アルは初めて食べるソーセージが気に入ったようでモリモリ食べていた。
ジョンとアルはソックスとブランを借りてそれぞれ馬に乗って行く。昼飯を作るのに一人じゃ大変なのでミーシャも同伴だ。シルバーにタンデムしてドワンを誘い森に向かった。
「ここはなんだ?柵にゲイルの家と書いてあるが」
「この柵は魔物が入って来ないようにしてあるんだよ。看板は人避け。誰か来ても勝手に入らないようにって」
そう説明してから小屋に到着。
土で作られた小屋が珍しいのか、アルはあちこちをペタペタと触っていた。
「ダン、狩りに行こう!」
わくわくした顔で早速狩りに行こうとジョンが言い出す。
「俺はここに残るよ。おやっさんはどうする?」
「ワシも残るぞ。3人で行ってこい」
ドワンは俺の作った地下室が見たいようだ。ここに来るのも久しぶりだしな。ダン達が狩りに行ったので、ドワンを地下室に案内する。
保管小屋の中に地下室への入り口があり、荷車でも入れるように作ってある地下へ続く道は広い。壁は魔法で固めてありかっちりとしたトンネルのようだ。
魔法で照らしながらずんずんと奥へ進む。
「ずいぶんと深く掘ってあるんじゃな。あと広さはどれくらいじゃ?」
まだ9樽しか置かれてない地下室はがらんとしている。
「俺はまだまだ飲める年齢じゃないから10年以上寝かせるのに深く掘ってあるんだよ。200樽くらい保存出来るよ」
地下室も木の枠では無くかっちりと土魔法で固めてある。それを見ながらドワンは感心していた。
ここは寒いので、早々と地上へと戻った
外に出ると一気に暑い。この中で狩りをしてたら汗だくだろうから、3人の為に小型プールくらいの水風呂を作っておいてやる。
「わぁ、これは何ですか?」
俺が水風呂を作っているのを見てミーシャが聞いて来た。
「狩りに行ったら汗だくになって帰ってくるだろ?身体冷やして汗を流すのに水風呂を作ってるんだよ」
「私も入りたいです。もう汗だくです」
ポテトサラダ用のじゃがいもを煮ていたミーシャも暑かったようだ。
「じゃあ、屋根の上の風呂に壁を作って周りから見られないようにしておくからそこに入ればいいよ」
ぼっちゃまも一緒にというお誘いを断っておいた。こんなに明るい時に入ったら丸見えだからな。
残念そうな顔のミーシャにはキュウリの薄切りを頼んでおく。
「戻ったぞ」
ダン達がそれぞれウサギを持って帰ってきた。アルのウサギはボロボロだった。
手分けしてウサギを解体していく。アルはウサギの血とか平気のようだ。
「食べ方にリクエストある?」
ダン達は任せる、ドワンは味噌焼きが良いとリクエストした。
「そこに水風呂を作っておいたから、食べる前にさっぱりしてきなよ」
「おっ、ぼっちゃん気が利くねぇ。汗だくだったんだ」
汗だくの3人は喜んで水風呂に入りに行った。汗でびしょびしょの服はクリーン魔法をかけて乾かしておいてやる。
さて、調理をしよう。
味噌焼き用の肉に味噌を塗っておく、もう1つはマヨ焼きだ。ジョンが好きだからな。軽くオーブンで肉を焼いたあとにマヨネーズを塗ってもう一度焼く。次は潰したじゃがいもにキュウリの薄?・・・切ったものを入れてマヨネーズであえる。
ドワンにはバーベキューコンロを任せてある。ジョンのリクエストで外で食べることになったからだ。味噌、マヨ、それと残った肉は塩胡椒でいいな。
「おやっさん、味噌焼きと塩胡椒の肉はここで焼くから宜しくね」
おう、とドワンが返事する。以前の様に強火で一気に焼かないようになってる。味噌は焦げやすいからね。
ダン達がさっぱりしてテーブルに座ったらミーシャがロールパンとポテトサラダを持ってくる。マヨ焼きもそろそろかな?
「これはじゃがいもか?」
「はい、ポテトサラダです。お肉が焼き上がるまで先にこちらをどうぞ」
ミーシャが笑顔でアルにポテトサラダを勧める。
「む、なんだこの味は?じゃがいもを潰しただけかと思っていたが、こうなんというか濃厚な味わいだ」
がつがつとポテトサラダを食うアル。マヨ味を気に入ってくれたみたいだ。
「旨いぞ!これはお前が作ったのか?」
「はい、言われた通りに作っただけですけど」
ミーシャよ、言われた通りに作ったならキュウリはもっと薄いはずだ。
「お肉も焼けました」
マヨ焼きを持って来たミーシャが俺の隣に座った。ぎょっとするアルファランメル
「頂きま~す」
肉食系ミーシャはマヨ焼きを頬張った。ジョンも嬉しそうにマヨ焼きを食べ始めるとダンもドワンも食べだした。
「ミーシャとやらはメイドではなく、ディノスレイヤ家の者だったのか?」
むぐむぐしながらミーシャが答える。
「メイドですよ。ぼっちゃま付きの」
「なっ!ジョン、お前の所はメイドも一緒に飯を食うのか?」
驚くアル。
「屋敷では別々だが、ここでは一緒に食うぞ。ゲイルにとってはミーシャも家族みたいなもんだしな」
「メイドが家族?」
「そうだ。俺も初めは驚いたがゲイルはそういうやつだ。それに俺達は同じパーティーメンバーだからな、一緒に飯を食うのは当たり前だ」
唖然とするアルファランメル。
「アル、早く食わんと冷めるぞ」
ダンがずいぶんとフランクに接するようになってる。狩りでなんかあったんだろうな。
「ここはなゲイルの家だ。坊主の決めた事に従うべきじゃろう。それに飯はみんなで食った方が旨い」
ドワンはそう言って味噌焼きと塩胡椒焼きをアルに渡した。
「おひいでふよ」
ミーシャにそう言われてアルもマヨ焼きを口に入れた。
「旨い・・・」
次に味噌焼きを口にする。
「これも香ばしくて旨いっ!」
最後に塩胡椒焼きだ。
「これはただ塩胡椒で焼いただけの肉だが旨い。ウサギとはこんなに旨いものなのか」
「自分で狩った獲物は格別だろ?」
「ああ、旨い。ジョンが森へ行くと言った意味がよくわかったぞ」
ミーシャと一緒に旨い!おひいでふ!と言い合いながら食べるアルファランメルだった。
「アルはどんな様子だ?」
「はっ、ディノスレイヤ家に無事到着された後、牧場の見学をされ、馬の賢さに驚かれてました」
「アルが驚くほどなのか?」
「はい、ディノスレイヤ家の馬は言葉を理解しているようで、ゲイル様の言葉に従っておりました」
「何っ?言葉を理解するだと?」
「はい、ディノスレイヤ家は色々と秘密があるようです。明日は森に向かうとのことです」
「わかった、引き続き頼む」
「はっ」
アーノルドの三男、ゲイルか。一度見ておきたいもんだな。
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