第97話 魔石

オークの解体を進めていくと心臓の近くに洗っても取れない血の塊みたいなものがあった。強めに水をかけても取れないので手で取ることに。


ゴム手袋欲しい・・・


手で掴むとあっけなく取れた。水かけても取れなかったのに不思議だ。


マジマジとその塊を見ているとアーノルドが、


「そいつは魔石だぞ。小さくて使い道はないがな」


と教えてくれた。へぇ、本当に魔物に魔石があるんだな。


「大きいボアとかには無かったのにオークにはあるんだね」


「ボアにもウサギにもあるぞ。小さくて見えないか気が付かないだけだ。洗ってるときに流れたりしてるんだろ」


なるほどね。このデカいオークでもパチンコ玉くらいしかないからな。


「これ貰っていい?」


「何するの?使い道なんてないわよ」


「別になんとなくだけど初めて見たから持っておこうかなと思っただけ」


「そういうのは自分で狩りをして初めて倒したやつの物を持っておいた方がいいんじゃない?」


記念品に持っておくならアイナの言う通りだ。すでにゴブリンを倒してる俺には今さらの話だ。


「母さんが久々に倒した獲物の記念として持っておくよ」


そう言ったら、まぁっゲイルったらと嬉しそうにした。



だいたい解体も終わったので調理をすることにする


「何か食べたいものはある?と言っても何も準備してないから出来るもの限られてるけど」


「昨日の味噌は残ってるのか?味噌焼きがいいな」


ドワンがリクエストしてきた。


「味噌はあるけど漬け込んでないから、昨日食べたボアみたいにならないけどそれでもいい?」


かまわんぞとのことなので、焼き肉サイズに切って貰って味噌に漬けるというか塗るだな。


あとはボアのラードが大量に残ってるからそれで揚げるカツにでもするか。ミゲルに硬くなったパンを細かく砕いてもらって、肉に塩胡椒して小麦粉と卵を混ぜた液でパン粉を付ける。ダンもブリックもいないので手伝いはミゲルだ。バーベキューコンロの方はアーノルド達に任せておこう。


ラードをフライパンに入れて油にしていく。ミゲルは意外と器用になんでもやってくれる。大工だからかな?


しょわわわっと良い音がしだした。もう少ししょわわの音が高くなれば出来上がりだ。


「親方、もう揚がったから油から出していって、次の揚げるよ」


大人の手の平サイズが一人2枚も有ればいいだろ。焼き肉もあるしな。


「お待たせ~」


ミゲルにカツを運んで貰った。


「味噌焼きはやっぱり漬け込んだ奴の方が旨いな。香ばしくて旨いのは旨いんだが」


「肉は新鮮なものより少し寝かして熟成した方が美味しくなるし、味噌に漬け込むと違う旨さが足されるからね」


「ほう、そうなのか」


「気温が高いと腐っちゃうから、冷たい所で置いておく必要があるけどね。肉はまだまだ大量にあるから味噌漬けにしとく?おやっさん達のお土産用に」


「それいいな。頼む」


後で作っておこう。


「このカツって奴は旨いな」


ミゲルが言った。


あれ?カツは作ったことあるはずなんだけどな。誰に食べさせたか覚えてないや。


「今日は油にボアの脂肪を使ったから香ばしく揚がってるよ。冷めたら脂っこくなるから熱いうちに食べてね」


焼き肉とカツを食べながら5人でワイワイと楽しく話をした。



「じゃ、そろそろ戻るか」


食べ終わってお腹も落ち着いたので帰ることに。ミゲルが馬に乗りたいと子共みたいなことを言い出した


「わがまま言いやがって、仕方がねぇやつだな。坊主、お前はワシが肩車してやるから、ミゲルに馬を貸してやってくれ。ハートなら自分で乗れるだろ。シルバーにはアーノルドとアイナが乗れ」


ドワンが肩車してくれるのか。俺ぐらいなら軽いもんだろうけど。


よっはっとか言いながらハートに乗ったミゲルは嬉しそうだ。アーノルドとアイナもタンデムで嬉しそうだ


ドワンが先頭を歩き、それに合わせて馬達もゆっくり進む。



「おい、坊主。今日はありがとうな」


「ん?味噌漬けのこと?」


「いや、アーノルドとアイナのことじゃ。お前さんが連れて来てくれたんじゃろ?」


「俺は自分がシルバーに乗る道具を作ってもらいに来たんだよ。父さんと母さんは休みだったからついでだよ」


「そうか、ついでか」


「そう、ついで」


それを聞いてうわっはっはっはと笑ったドワンは俺を肩車して店まで帰った。



「坊主の馬に乗る道具じゃが、座る所と背もたれにスプリングクッション入れるか?」


「それいいねぇ、是非お願いしたい」


「じゃあ、縫いもんは他の職人に頼むから少し時間が掛かるぞ」


「大丈夫。そんなに急いでる訳でもないから。あとついでに一人用のスプリングベッドを作っておいてくれない?ジョンの餞別に持って行って貰うから」


「じゃあ、そっちが急ぎだな。わかった」


味噌漬けの肉は一週間ぐらい後が食べ頃だよと言ってドワン達と別れた。



「ゲイル、今日はありがとうね。お陰で元通り話せるようになったわ」


「おやっさんもきっと元通りになりたかったんだよ。だからその辺の店でお昼ご飯食べずに森に行ったんだと思うよ。俺は一緒に行こうって誘っただけだから」


「そう、誘ってくれただけなのね。ゲイルらしい言い方ね」


フフフとアイナは笑う。


「ドワンが狩りに行くと言い出した時は驚いたぞ。狩りに行くつもりなかったから俺しか剣を持ってなかったしな。まぁ、その剣もいらなかったんだがな」


「あれ、母さんがグーで倒したんでしょ。頭蓋骨割れてたよ。聖女様って強いんだね」


「そんな意地悪言うもんじゃありません。それにオークぐらいなら素手で良いのよ」


それが強いって言ってるのだ。ボロン村に出た熊も素手でいけそうだな。



屋敷に着いてシルバーとハートをトムに任せた。他の皆は休みがあっても生き物相手の仕事だとトムは休め無いことになるな。最低でもあと一人は馬担当が必要だよなぁ。後でアーノルドに言っておこう、恐らく春に馬が増えるときに増員しようとか思ってそうだからな。



部屋に戻って魔石を眺める。こんな物が生き物の身体から出てくるなんで不思議だよな。


ある程度の大きさの魔石ならコンロとか水道とかの魔法陣を動かす動力みたいな物になるんだよな?


元の世界で言うとバッテリーとか電池みたいなもんか。


ん?待てよ動力代わりの魔力が魔石から流れるわけだから、人も魔石から魔力補給出来るんじゃないかな?


魔石を持っていたら予備バッテリーみたいな使い道があるかもしれない。あとはどうやって確認するかだな。


久しぶりに魔力を見てみる。



【魔力】90/91


少し増えてるな。魔石を握って魔力を吸ってみる。


【魔力】91/91


やった!やっぱり魔石は予備バッテリーみたいな使い方出来るじゃん。後はこの魔石がどれくらいの容量があるのかと、魔力が残ってるかだな。確か鑑定って物にも使えるんだっけか?一回もやってなかったな。


試しに魔石をじっと見つめて情報開示するように念じる。


ポワッとウインドウみたいなものが現れた


・魔石 オーク産 【魔力】1/3


お、見えた。しかしこの魔石、容量もショボいし残り魔力も1だ。せめて容量が50くらいないとポーション代わりにもならない。アイナの言ってた通り使い道ないな。


魔力100とかの魔石は何から取れるんだろう?簡単に取れるか安くで売ってたらいいんだけどな。明日、ダンに聞いてみよ。


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