第93話 鍋パーティーが始まる
今日は鍋パーティーだ。屋敷で鶏肉をミンチにしてから森へ向かう。
シルバーにミーシャと俺、ハートにジョン、ウィスキーにダンとトムが乗りゾロゾロと馬を進めると街の人達が何事かと見ていた。
「馬に乗った人ってそんなに珍しくないよね?」
「騎馬用、荷馬車用、珍しいデカい馬、こんなバラエティーに富んだ一行はそりゃ珍しいさ」
「そうか、馬の見本市みたいなもんか」
「そういうこったな」
「やっぱり森の小屋を住宅街登録する事にして良かったよね」
「あぁ、何があるんだろうと見に来る奴が出て来るのは間違いないな。柵の所に看板立てようか。ゲイル・ディノスレイヤの家に付き立ち入り禁止とな」
「家の名前出すの?」
「その方が効果が高いからな」
「じゃあ、料理の準備している間に作って建てといて」
「じゃ、何ヵ所かに建てとくわ」
小屋に着いたので、俺とミーシャは料理の準備中だ。ダンは看板作り、ジョンとトムは馬の世話だ。
「まずは鶏の骨がらスープを作るからミーシャお願いね」
「お肉は切らなくていいんですか?」
ミーシャが切ると極厚切りになるからブリックが来てからにした方が良いとは言えない。
「お肉は後でいいよ。骨のスープ作ったら白菜をお願い」
時期的にもうキノコもないし、鍋に使える葉物野菜は白菜くらいしかない。後は彩り用に人参を入れるくらいだ。
俺は土鍋を作らねば。
今日の参加者は全部で11人か。小屋のテーブルに詰めて座るか、外でやるか迷うな。肉の味噌焼きもするから外でもいいんだけど、寒いかなぁ?いやボロン村でも外で食べたし、寒い中の鍋って旨いからな。やっぱり外にしよう
取りあえず土鍋は4つでいいかな。味噌ベースと塩ニンニクベースが2つずつ。6人と5人に分かれよう。
バーベキューコンロの横に鍋用の竈を作って周りをテーブルみたいにしてこれで卓上コンロみたいな感じだな
6人用テーブルを2箇所作り好きな所に座って貰おう。土の椅子は冷たいから大量にあるウサギの毛皮を敷いておく。うん、なかなかおしゃれだ。
ここまで準備してお昼になった。朝に作って貰ったサンドイッチを食べる。晩飯をもりもり食う予定なので軽めに済ませておこう。
「ぼっちゃん、食い終わったら看板見てくれ」
ダンは午前中に看板を付け終わってた。
「えっ?」
小屋の周りの柵にこれでもかという数の看板が建ててあった。
「多くない?」
「これくらいしといたら、気付きませんでしたとか言い訳きかねぇからな」
まぁ、そうだけど、この看板の数は圧迫感があるよな。○○建設反対とかの立て看板みたいだ。洋風のコジャレた看板をイメージしてたのに。
看板を見て回っていると、ブリックがやって来た。
「お待たせしました。わっ、すっごいですね」
何がすごいか言わないブリック。すごいって便利な言葉だよな。
ーゲイルの思い出ー
あれは姉が成人式の時だった。姉の友人の母親が一緒に車で成人式の会場まで送ってくれるとの事で家まで来てくれた。
車の後ろに乗っていた着物を着た姉の友人はふくよかな人だった。初めて見た人なんだけど、なんかこう見たことあるような・・・
姉は友人の着物姿を見て、
「○○ちゃん、すっごいね」
と言った。
ありがとうと喜んだ友人だが、姉は何がすごいのかは言わなかった。恐らく力士みたいですっごいね。だったのでは無いかと思う。
俺が見たことあると思ったのは地方巡業だった。
あぁ、いかん。またトリップしてたな。ブリックに肉の仕込みをしてもらわないと。
「ブリック、この肉を薄切りにして、こっちはもっと薄切りね」
「どちらか私が切り・・・」
「後はブリックに任せるから大丈夫」
阻止だ。ミーシャの好意はありがたいが鍋に極厚の肉は不要なのだ。
スライスした肉を更に並べていくのに、ブリックに並べ方を教える。
「こうやって並べていくと花みたいになるだろ?見た目も味のうちだからね」
「ただ並べるより綺麗ですね」
「こうやって並べると牡丹って花みたいに見えるから牡丹鍋とも言われるんだよ」
ほぅと感心するブリック。
「おい、坊主。頼まれたの作って来てやったぞ」
ドワンとミゲルが来た。
「おやっさんありがとー」
おろし金参上だ。
一緒に来たミゲルはウィスキーの所に一目散に走って行った。
ドワンがおろし金を使うところがみたいと言うから、ブリックにすりおろしニンニクを作ってもらった。
「なるほどな、こんな風になるのか」
「ミーシャ、大きい方で大根もやって見て」
指まですりおろすなよと注意してからやってもらう。しゃこしゃこしゃこ
「こうやって野菜をすりおろして料理に入れたり、そのまま食べたりするんだよ。便利でしょ」
「そうだな、まぁ何が良いかわからんが」
あまりよく分かってないドワン。鍋の具材と一緒に食べて大根おろしの素晴らしさを思い知るがいい。
あとはブリックにタマネギのみじん切りとすりおろしニンニクを混ぜて鶏だんごを作ってもらえば準備完了だ。酒はエールの炭酸強化とドワンの作ったほぼアルコールをお湯割りにでもしたらいいか。
「おう、準備出来たか?」
アーノルド、アイナ、ベントがやって来た。
「父さん、ここ何?ゲイルの家だと看板が建ってるけど」
なんとなくしかめっ面をしたベントが看板を見てアーノルドに尋ねた。
「ここはな、ドワンとミゲルが作ってくれた小屋なんだ」
「それが何でゲイルの家なの?」
「あー、それはだな・・・」
設定が甘いぞアーノルド。
「ドワン達の遊び場を作ってたのよ。ディノスレイヤ家の名前付けといたら悪いやつも来ないでしょ」
アイナが設定を作った。
「じゃあ、父さんの名前でいいじゃない」
少しは頭が回るようになってきたベント。
「アーノルドの名前付けたら、領主がこんな森の中で何をやってるんだとかなっちゃうでしょ?だからゲイルの名前を使ったの」
アイナの設定補足説明。
「ふーん」
一応納得したみたいだけど、やっぱり不審がってるな。
「きょ、今日は外で食べるのか?」
誤魔化すアーノルド。
「人数多いから小屋だと狭いでしょ?寒くても鍋食べたらあったまるし外で食べよう」
「そうだな、外で食う飯は旨いからな。いいアイデアだ」
誤魔化したのか本気なのかよくわからんけどまぁいいか。
「じゃ、そろそろ鍋を火に掛けるから好きな場所に座って」
わかったと返事した皆はそれぞれに別れて座ろうと動いたのだった。
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