第83話 シルバー
翌朝、土魔法で作った物をすべて壊してから湖を後にした。
御者はダンだ。馬が何度も荷台を見るので、俺も御者台に座った。荷台では大声でドワンとジョンが稽古について話しあってる。ゲイルがそばに来たことで馬が機嫌良くカッポカッポと歩く馬車はなんとなく揺れが少ないような気がした。
やっと帰ってきた。日暮れ前に着いた俺たちは魚をすべてドワンに渡して帰る。ここからは徒歩だ。馬に黒砂糖をあげてお別れを言う。
「ありがとうな、お前のお陰で帰りはあんまり揺れ無かったよ」
顔を近付けてくる馬の顔をポンポンと叩いてやる。仲良くなった馬と離れるのはちょっと淋しいけど仕方がない。ブルルルンッと返事した馬にお別れを言って去ろうとするとヒヒンッと鳴き、付いて来ようとする。
「ダメだよ。俺たちは屋敷に帰るからお前も自分の所に帰らないと」
そう言っても付いて来ようとする馬。
「ダン、おやっさん呼んで来て。このままだと付いて来ちゃうから先に借りた所に返しに行こう」
ダンがドワンを呼んで来て、先に馬と荷馬車を返しに行くことにした。西の大きな商店で借りたとの事でそこへ向かって歩き方だす。
「おい、馬と荷馬車を返しに来たぞ」
「これはドワンさん、お早いお帰りで」
そう言った主人らしき男は荷馬車と馬をぐるっと見て確認して問題無いと言った。ドワンが世話になったなと商店の人に挨拶している間に馬との別れを済ませる。
「これでお別れだ。でも同じ街に住んでるからまた会うこともあると思うよ。元気でな」
馬の鼻筋を撫でて別れを済ませた。
3人で商店を後にして帰ろうとすると馬が暴れ出す。
「こら、どうしたんだ?」
商店の主人がどうどうと馬をなだめるが一向に収まらない。取りあえず馬の元に戻ってなだめてみる。
「暴れちゃ危ないじゃないか。お前も怪我するぞ」
俺がそう言うと馬がおとなしくなり顔を近付けてくる。バフーンっと鼻息で俺の前髪を避けて顔を舐める。
やめて、ヨダレだらけになるじゃないか、舐め続けようとする馬の鼻をぐっと押す。
「ドワンさん、馬になんかしたんですか?」
「人聞きの悪いこと言うなっ!何もしとらんわい」
嘘つけっ、荷馬車をかっ飛ばさせた癖に。
「主人、すまんな。馬がぼっちゃんに懐いちまってな。別れを惜しんでるんだろ」
ダンがそういうとわずかな日数でそんなに懐くもんですかとぶつぶつ言う商店の主人。
「じゃ、本当に帰るから、もう暴れちゃダメだよ。俺の言うこと分かるだろ?」
馬を軽く叱るとしょんぼりしたように見えた。
俺たちの姿が見えなくなると悲しげな馬の鳴き声がずっと響いていた。
「なぁ、ダンあの・・・」
「ぼっちゃん、馬は商人にとって貴重な財産だ。金の問題じゃない。このまま別れるのが正解だな」
馬を買うかと言おうとした俺の言葉に被せてダンが俺を諌めた。
「分かってるんだけどね」
「ぼっちゃんは領主様の息子だ。あの馬が欲しいと言えば主人も売るだろう。だが本音はどうかな?領主の息子は気に入った物をなんでも金で奪って行くやつと思われるぞ」
「そうか、そうだよね」
「ただいまぁ~」
屋敷に戻った俺は馬の悲しげな鳴き声がずっと耳から離れなかった。
部屋に戻った俺は小学生になった頃の事を思い出していた。
父親の転勤で田舎に引っ越した時に段ボールに入った捨て猫を拾った。持って帰っても借家で飼えない事が分かっててもすがるように無く子猫を見捨てられ無かったのだ。
「子猫なんて拾って来てどうするの?ここでは飼えないのよ」
母親に叱られ、でもでもとしか答えられなかった。父親が帰宅し、元いた所に捨ててこいと怒られて泣きながら子猫を捨てに行った。
捨てに行った翌日に餌を持って子猫の元へ走って行ったら、何かに襲われたのか血塗れになって死んでいた。大声を出して泣き、ぼろぼろになった子猫を埋めた。生まれ変わった今もその血塗れで死んだ子猫を思い出せる。
コンコン
「ぼっちゃま、お帰りなさい。釣りはどうでした?」
ミーシャが部屋にやってきたので、気付かれないように目に貯まった涙を拭って返事をした。
「おやっさんがすっごいの釣ってね」
ドワンと魚の格闘を身分手振りで説明し、ほらこれと不思議な光を放つ大きな鱗を見せた。
「わぁ、キレイですねぇ。何ですかこれ?」
「その魚の鱗だよ。おやっさんが言うには逃がしてやったお礼らしい」
「さすがぼっちゃまですね。魚からお礼を貰えるなんて。でもちょっと生臭いですね」
そう、宝石みたいな美しさを持つが鱗は鱗。生臭いのだ。軽くクリーン魔法をかけたら臭いがマシになった。
晩御飯を食べながらアーノルドとアイナにドワンが借りた馬車が荷馬車であったこと、舌を噛むほど飛ばしたこと、風呂で朝まで寝てた事を話した。
ジョンはドワンが釣った不思議な魚の事を話さない俺を不思議そうに見てたが、余計な事は話さなかった。
食べ終わってから少ししてから鱗を持ってアーノルド達の寝室へ向かった。
コンコン
「父さんいる?」
「なんだゲイル?」
「魚の事で聞きたいんだけどね」
ドワンが釣った不思議な魚の話しをしながら鱗を見せた。
「そんな魚の事は知らないが、冒険しながら各地を回ってるとな、そう言った不思議な話は聞くぞ」
へぇ。
「金色に光る鹿を助けたら片方の角をくれたとか、金色の鳥を助けたら羽根をくれたとかな」
共通しているのは金色の生き物で助けたら身体の一部をくれる。これをくれた魚は銀色かと思ったけど、金色っぽくも見えたしな。
「これな、王都で売ったら金貨100枚くらいの価値があるぞ」
えっ!?金貨100枚?
いちおくえん・・・
「そんな値段になるの?おやっさんに返さなきゃ」
「ドワンは一度渡したものを返せとかケチ臭いこと言わんさ。返さなくても大丈夫だ」
でもなぁ~
「お前はその価値を聞いて売ろうと思ったか?」
ううんと首を横に振る。
「お前がドワンを説得して魚を逃がしてやったんだろ?」
「うん」
「その鱗を売ったら、その魚を探しに湖に人が殺到するだろからドワンに返しても売らんだろ。デカいマス釣って嬉しそうにしてなかったか?」
「めっちゃ喜んでた」
「だろ、そんな大物が釣れる所に人が殺到するのは嫌がるに決まってる。大切にしてやれ。その方が喜ぶだろ」
そうだな。せっかくだし大切に保管しておこう。
明日ドワンとマスパーティーをいつするか決めないとな。釣りに行けなかったミゲルが拗ねるかもしれん。ブリックを連れていかないとダメだしな。次の5の付く日とかかな?また泊まりになるだろうし。
翌日、森で稽古と地下室作りをした帰りに商会に立ち寄った。
「おやっさん、マスパーティーいつにする?」
「坊主いいところに来たな」
「どうしたの?」
「馬を借りた商店に行くぞ」
昼頃に商店の主人が来て、馬をなんとかしてくれとの事だった。俺達が帰った後、まったく元気が無くなり餌も食べないし水すら飲まないらしい。怪我や病気をしている様子も無く、俺達が原因としか考えられないとの事だった。
「おい、坊主を連れて来たぞ」
主人に馬の所へ案内されると、馬が脚をカッカッカとダンスするように出迎えた
「ご飯も食べて無いんだって?ダメじゃないか」
頭を下げてくる馬の鼻筋を撫でてやると目を瞑る馬。ひとしきり撫でると満足したのか頭を上げる。
「さ、水飲んでご飯食べるんだよ」
そう言ったら水をがっふがっふと飲んでからカイバを食べ始めた。
良かった。食欲はあるようだ。
「こりゃ驚きました。まったく言う事を聞かなくなって元気が無かったのに」
驚く商店の主人。
「ドワンさん、この馬どうにかしてくれませんか?このままこの子供を毎日連れてくる訳にもいかんでしょ」
「そうだな、お前はこいつを手放すつもりがあるのか?」
「このままだと餌食べずに死んじまいますからね。新しい馬と交換するか、売った金で新しい馬買うしかないでしょ」
まだこの主人は俺が領主の息子だと言うことは知らない。このまま交渉しても対等な交渉だ。
「新しい馬の手配は無理だから、お金払って買うしかないんだけど、いくらぐらいするの?」
俺が馬の値段を聞いたことに驚きつつも、銀板50枚だと言った。高いのか妥当なのか安いのかまったく見当が付かない。
チラッとダンを見ると頷いた。妥当な値段なんだろう。
「おやっさん、馬買って」
自分のお金でも買えるが、あえてドワンにお願いする。領主の息子が無理矢理買っていったと噂されないようにだ。元々、商店の主人がドワンに買ってくれと言ってきたので問題ないだろう
「まったく、お前は串肉を買うような感じで言いおってからに」
ぶつぶつ言いながらも馬を買うことにしてくれた。商店の主人もニコニコしてたから、悪い取引でもなかったのだろう。
「今日からお前も俺達の仲間だよ。ちゃんと言う事を聞くんだよ」
そう言うと頭をぶんぶんと振って、前脚を曲げて頭を下げる。乗れってとことだ。商店の主人がいる前で魔法で浮かぶ事は出来ないのでダンに頼む。
「ダン、背中に乗れって言ってるから乗せて」
ダンに抱き抱えられて馬に乗った。
えっ!?と驚く商店の主人。
乗馬用に訓練していない馬が人を乗せることはまずない。しかも自分から前脚を曲げて乗れみたいな姿勢を取ることはありえない。
「おやっさんありがとう。このまま乗っていくよ」
驚く主人を後にしてポコポコと歩き出した。
「おやっさん、お金ちゃんと払うからね」
「金はいらん。また春になったらそいつに釣りに連れてってもらうからな」
ちょっと照れたような感じでそう言った。ドワンも馬の事を気に入ってたのかもしれない。
ドワンにお礼とマスパーティーの日を決めておいてと言って別れた。
馬を手に入れたのはいいが、馬は飼った事がない。なんとなくイメージは出来るけど実際に飼うとなると違うからな。
「ダンは馬の世話出来る?」
「問題ないぞ。カイバとか蹄鉄の点検をどこかに手配しないとダメだがな。アーノルド様に聞けば分かると思うぞ」
蹄鉄か。雪積もったら滑り止め付きの蹄鉄とかにするのかな?
「ゲイル、馬に名前は付けてやらんのか?」
ジョンが聞いてくる。
そうだね。名前をつけてあげないと。
馬の名前と言われたらコレしかない
「お前の名前はシルバーだよ。今日からお前はシルバーだ!」
ハイヨー シルバー!
ヒヒヒンッと返事した。
元ネタはよく知らんが、馬の名前はシルバーと決まっている。黒馬だけど、競走馬じゃないからゲイルブラックとかにはしない。
馬に名前を付けるとうっすら光ったような気がしたが、誰も何も言わないから気のせいだろう。
「シルバーか、良い名前だ。短い間だが宜しくな」
もうすぐ王都に行くジョンはシルバーに挨拶をした。それにぶんぶんと首を縦に振って答えるシルバー。
屋敷に戻ると馬に乗った俺を見て驚く使用人達。
「ぼっちゃま、馬に乗れたんですねぇ」
ミーシャが屋敷から出てきた。
「シルバー、この娘はミーシャ。俺の仲間だよ」
ミーシャをフンフンと嗅ぎ挨拶をするシルバー。
「かわいい馬ですねぇ。シルバーって言うんですか?宜しくね」
馬の横顔をポンポンと叩くミーシャ。さすがだ、馬をまったく怖がることもない。
屋敷の裏側まで移動する。
「ぼっちゃん、ここに小屋作りたいんだが、森じゃないから俺が作るか親方に頼むしかないよな・・・」
魔法だとあっという間に出来る馬小屋だが屋敷で魔法を使うのはまだ無理だ。
「ダン、あれから土魔法使えるようになった?」
俺のカモフラージュ用に土魔法を覚えて貰っていたのだが、
「爆発してもいいならやってみるぞ」
あぁ、ダメって事ね。ミゲルに頼もう。
仕方がない。今日は繋いでおくだけにしよう。餌のカイバも無いから野菜あげたらいいか。
ブリックに野菜を色々もらって、水桶と餌用の桶を準備してあとはダンに任せた。
「小屋はすぐに用意するけど、今日は我慢してね」
そうシルバーに言うとぶんぶんと首を縦に振った。
晩御飯の時にアーノルドとアイナにドワンに馬を買って貰ったことを報告しても驚かれただけで、ダメとは言わなかった
捨てて来いとか言われなくて良かった。
晩御飯を食べた後にアーノルド、アイナ、ベントをシルバーに紹介する。ベントはアイナの後ろに隠れていた。
「見事な黒馬だな、いくら払ったんだ?」
「おやっさんが銀板50枚払ってくれた」
「銀板50枚か、思ったより安いな。値切ったのか?」
「向こうの言い値だよ。馬の値段なんてわかんないし。おやっさんもなにも言わなかった。普通はいくらくらいするの?」
「荷馬車用の馬なら年齢にもよるが3~40枚が相場だな」
おぅ、相場より高いな。足元見られたのかな?でもダンも何も言わなかったし。
「この馬はドワンが荷馬車を飛ばした時の馬だろ? ものすごいスピード出なかったか?」
「前にも言ったけど、舌噛むかと思った。ダンとジョンは荷台で中腰になって耐えてたよ」
「そうだろうな。こいつは騎馬隊とかが使う馬だ。脚が早いし力も強い。王都で買うと最低でも金貨1枚はする。そんな馬が何で商人の荷馬車で使われてたのかわからんがな」
「えっ?そうなの?じゃあ商人の所に言って差額払った方がいいかな?」
「いや金貨1枚以上と言ってもな、騎馬として訓練された馬だからこそだ。荷馬車に使われてたらそこまで価値は無いだろう。差額を払いに行くほどでもないから大丈夫だ」
そうか、だからドワンもダンも何も言わなかったのか。荷馬車の馬としては高いが、馬の種類としては安い。つまり妥当な値段だと。
へぇ、お前は騎馬になれたかもしれないんだな。でも戦いに連れて行かれるより荷馬車の方が安全だしな。何が幸せかわからん。
「荷馬車用に育てられたみたいだから乗る事は出来んが、大切にしてやれ」
「え?シルバーは乗れるよ」
あれ?俺が馬に乗って帰って来たの知らないのかな?ダンに繋いであるシルバーを放して貰う。
「シルバー、こっちに来て」
そう言うとポコポコと俺に近付いて来て膝を曲げて頭を下げる。
「父さん、シルバーに俺を乗せて」
「お前、馬に乗れるのか?」
驚きながら馬に乗せてくれた。
ゲイルが乗るとすくっと立ち上がるシルバー。
「シルバーはね、すっごく賢いんだよ。俺が行きたい方向に言えば行ってくれる」
え?と驚くアーノルドとアイナ。
「シルバー、その場で回って、父さんと母さんに挨拶して」
器用に脚を動かしてその場で回るしるばー。
アーノルドの方を向いて首を上下に振ったあと、アイナに顔を近付けた。シルバーの鼻筋を撫でてやるアイナ。
「あら、シルバーはとっても賢いのね。これからゲイルを助けてあげてね」
そう言うとぶんぶんと首を上下に振った
「ね、賢いでしょ。こっちが言うこと理解してるんだ」
訓練されてない馬が人を乗せたこと、言うことを理解している事に驚いていたが、アーノルドもアイナも家族が増えたと喜んでくれた。
翌朝シルバーのフンをこそっとクリーン魔法で処理して、アーノルドに教えて貰った馬と馬車を貸し出している所へ向かう。蹄鉄を付けたり、馬の手綱とかも販売してたので購入して、カイバと敷きワラは今日中に屋敷に届けて貰うことにした。
ダンがシルバーに手綱と鞍を着けていく。鞍というより魔物の皮を乗せただけみたいな感じだ。あぶみは無い。あっても届かないけど。
「なぁ、ダンはシルバーが騎馬と分かってたのか?」
「荷馬車用の馬にしては背も高いし細いからな。それに荷台も小さかったろ? 他の荷馬より重い荷物を引けなかったんじゃないか」
そうか、荷馬は力重視、騎馬はスピード重視ということか。ドワンも分かっててスピードの出そうな馬を選んで貸して貰ったのかもしれん。商店の主人はスピードが出る馬より力のある馬の方が使い勝手がいい。いくらスピードを出せても荷台があんなに揺れたら商品が壊れてしまうので意味が無い。荷馬としては高値で売れ、その金で荷馬を買い直し出来るのでWin-Winの取引だったんだろうな。
一旦屋敷に戻るとミゲルが来ていた。
「親方どうしたの? ちょうど話があったから良かったけど」
「お前さん、馬買ったんじゃろ?小屋作りに来てやった」
ドワンがミゲルに言ってくれたみたいだ。
「良かった、それをお願いしに行こうと思ってたんだよ」
「どこに作るんじゃ?」
ほとんど会話がないまま小屋を作り出してくれた。今日中に作ってくれるとのこと。さすがミゲルだ。
今日は森に行くのを止めて、ミゲルの仕事をダンが手伝った。
俺は厨房に向かい、ブリックに昼飯をミゲルの分も作ってもらうように言いにいった。
「ブリック、昼飯追加になった」
「あ、ぼっちゃん。何にしますか?」
「豚肉の柔らかいところある?」
「ヒレで良ければありますよ」
「それをカツにしよう」
「カツって何ですか?」
「この前、ザリガニで海老フライ作ったろ?あれの豚肉版だ」
作り方を簡単に説明してカツを作っていく。次はキャベツを千切りにしてもらいトマトソースと炒める。ソースが無いのでその代わりだ。食パンにマスタードを塗ってトマトソースキャベツ、カツを挟んで完成。簡単な食べ物だが、ガッツリ食べられるカツサンドはミゲルが好きそうだ。
「これはカツサンドって言うんだよ。昼飯にぴったりだろ?」
試食したブリックは大きく頷いた。
カツサンド3人分と野菜をブリックに運んで貰う。シルバーにブリックを紹介し、挨拶がわりに野菜をあげてもらったら仲良くなったようだ。
「親方、お昼ご飯にしよう」
「お、こいつは旨そうだ。何が挟んであるんだ?」
「豚肉をカツにしてあるんだよ」
「カツとは初めて食うが旨いぞ」
良かった、いつもの親方だ。
「親方、機嫌悪そうだったけど、何かあったの?」
それがなと昨晩の事を話だした。ドワンが湖の主を釣り上げたことや大型のマスがたくさん釣れた事を盛大に自慢したらしい。
仕事を押し付けて自分だけ遊びに行った挙げ句に自慢されまくったら、そりゃ腹立つわな。ミゲルにも春になったら釣りに行こうと約束した。
夕食を前に小屋が完成したのでご飯食べていくかと聞いたが、帰って食うとのことだった。
ミゲルはシルバーの鼻筋を撫でてから帰って行った。
早速出来た小屋を確認するシルバー。ぶんぶんと首を振る。どうやら気に入ってくれたようだ。
敷きワラもカイバも届いたので、後はダンに任せたのだった。
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