第70話 パーティーメンバーが増える
ウサギを食べ尽くした5人はミーシャに後片付けを任せて稽古場に移動した。
「ゲイル、お前魔法でウサギを狩ったんだってな。どうやったんだ?」
ジョンも気になっていたことを聞くアーノルド。
「木の上から魔法で倒したんだよ」
やって見せてくれないかと言われたので、ウサギに見立てた丸太を置いて貰い、ザシュッと串刺しにした。
「いきなり死角から串が飛び出すのか。ウサギが避けれんはずだ」
ジョンは驚いた。魔法とはこんな攻撃が出来るのかと。
「ゲイル、他にも出来るのか?」
ジョンがゲイルに問う。
「ぼっちゃん、火魔法の奴がいいと思うぞ」
ダンに言われて丸太を燃やす。いきなりボンっと燃えた丸太を見て唖然とするジョン。
「父上、こんな攻撃をされたらどうやって防げばいいのですか?」
アーノルドに聞くジョン。
「俺でも避けようがないな。耐えて突進してゲイルを斬るしかない。ゲイルの魔力がもっと上がったら一瞬で丸焦げだ」
そんな父上でも・・・
「ジョン、お前ゲイルが魔法使ってるの見て何か気付かなかったか?」
魔法での攻撃を初めて見たジョンは何かさっぱり見当が付かない。
「普通、魔法ってのは呪文を唱えるんだ。威力を上げようとすればその呪文も長くなる。剣士はその呪文詠唱の時に攻撃するんだよ。それに火魔法ってのはいきなり燃え上がる攻撃じゃない」
「ゲイル、俺に向かってファイアボールを撃ってみてくれないか?」
絶対いきなり燃やすなよ、燃やすんじゃねーぞとアーノルドは言ったけど、フリじゃないよね?
ファイアボールってやったことないんだよね。上手く出来るかな?
目の前に火のボールを出すこれくらいか?バランスボールくらいの大きさにしてみた。大きい方が避けやすいだろう
「待て待て待てっ!そんなデカイのはダメだ!これくらいのだ」
手でドッジボールくらいの大きさを指定してくる。大きいほうが避けやすいのに。
「あともう少し離れろ」
へいへい
俺とアーノルドはお互いに後ろへ下がった。
「お前、無詠唱でいきなり撃つな。詠唱の代わりに合図しろ」
注文が多いな・・・
剣を構えるアーノルド。
「さ、来いっ!」
「じゃ、行くからね。ファイアボールっ」
俺はスリングショットをイメージして火の玉を打ち出した。地を這うように飛んで行く火の玉。自分で想像してたより速い。
アーノルドが下段に構えて火の玉を切る動作に入った瞬間、グッと火の玉が伸びを見せて顔を目掛けるように軌道を変えた。
「危ねっ!」
アーノルドはのけ反りながら剣を振り上げて火の玉を切った
「お、お、お前、俺を殺す気かっ!」
アーノルド激おこ。
「ごめんごめん、初めてファイアボール撃ったからあんな風になるとは思わなかったんだよ」
まだぶつぶつ怒ってるアーノルド。お前が撃てって言ったじゃないか。
「少々ハプニングがあったからなんだが、通常ああやって魔法を切ったり、避けたりすることは可能なんだ」
ジョンに魔法攻撃に対処出来ると説明する。
「でもいきなり燃やされたら・・・」
「ゲイルの魔法は特別だ。今までの常識を遥かに越えるものなんだよ。俺はさんざん魔物と戦ってきたし、魔法を使う冒険者を見て来たが無詠唱かついきなり燃やす魔法なんて見たことがない」
父上ですら見たことがない・・・
「だから心配するな。それと同時に絶対他の奴には言うな。こんな事が知れ渡ったらどうなるか想像もつかん。次は詠唱中に攻撃する方法だ。ダン、お前は盾役やってくれ」
俺の少し前にダンが立つ。
「パーティーに魔法使いがいると詠唱中は無防備になるから、盾役と呼ばれる魔法使いを守る役目がいるんだ。俺達のパーティーではドワンがその役割だな」
盾役の説明をするアーノルド。
「じゃ、ゲイル。お前は詠唱するふりをしてくれ。俺はダンを避けてお前を攻撃するから。剣は当てずに止めるから絶対火魔法使うなよ」
絶対火魔法使うなよと念押しするアーノルド。これもフリじゃないよね?
「詠唱するふりをしてくれ」
そう言われてぶつぶつと言い出した瞬間アーノルドの身体がブンッと揺れて消える。
わっ
と思った瞬間思わず自分の前に土壁を作って防御してしまった。
バンッ
すっごい音がした。
「お前なぁ~」
壁の向こう側に鼻血を出した激おこのアーノルドが居た。
ヒールっ!アーノルドに治癒魔法をかける。
「お前、あんなことしたらジョンの勉強にならんだろがっ!」
まだプンプンするアーノルド。
「ひ、火魔法は使ってないよ」
「そういう問題じゃねぇ」
「クックック アーハッハッハ」
ジョンが大声で笑い声だした。
「ど、どうしたジョン?」
気でも狂ったのかと心配する。
「いや、だって父上の壁にぶつかった姿と顔・・・」
アーハッハッハ ヒッヒッヒッと声にならない笑い声を上げるジョン。
ビタッと蛙のように壁にぶつかったアーノルドがジョンのツボにはまったらしい。
ジョンの笑い声に怒気を抜かれるアーノルド。
「父上、決めました。僕もこのパーティーに入れて下さい。こんなに笑ったのは生まれて初めてです」
どうやら、ジョンはアーノルドの素を見た事が無かったらしい。父として領主として、そして剣の師匠としてのアーノルドしか知らなかった。それがこの森に来て初めてアーノルドという素の姿を見られて嬉しかったのだ。
「ゲイル、俺も仲間に入れてくれるか?」
「勿論だよ。これからも宜しくね」
「ダンやミーシャもいいかな?俺にもゲイルと同じように接してくれて構わない」
「わかったぜジョン!」
親指を立ててウインクするダン。
「はい、一緒に美味しいもの食べたいです」
食にぶれないミーシャ。
「良かったなジョン。お前も父上でなく父さんでいいんだぞ。それにダン、お前も俺のことアーノルドでいいぞ」
「さすがにそこまでは・・・」
頭を掻くダン。
「まぁ、好きに呼んでくれ。俺達はパーティーだからな」
そう言ってあっはっはっはと笑うアーノルドにみんなもつられて笑った。
てれれてってってぇ~♪
光してジョンが仲間に加わったのだった。
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