第60話 米が食えるのはまだ先

うへぇ、身体が痛い。


いつもの時間に目が覚めたら身体中が痛い。この硬いテーブルで寝たからだ。小屋にベッドルームも作れば良かったな。


ミーシャはすでに起きたようで隣にいなかった。


「ぼっちゃまおはようございます、いつの間にか寝ちゃったみたいですね」


コイツ、昨日のこと覚えてねーな。


小屋の外に出ると男4人がくっついて寝ていた。地獄絵図だ。とっとと起こそう。


「おーい、朝だぞ」


4人がんあっと起きる。


「昨日は良く飲んだわい」


あれだけ飲んで二日酔いにもなってないドワーフ兄弟とダン。ブリックだけがちょっと気分悪そうだ。


水に少々の塩とハチミツを入れてレモン汁を垂らす。


「ほれ、これ飲んどけ」


ブリックになんちゃってスポーツドリンクを渡す。


ングング


一気に飲み干すブリック。


「ぼっちゃんこれは・・・」


「ただの水より早く吸収するんだよ。酒が抜けるの早くなるぞ」


「そうなんですか。とっても美味しいです」


「お、なんだ旨そうだな。ワシにもくれ」


ドワーフ兄弟とダンも欲しそうにしている。ったく、お前らは水でいいだろうにと思いながら作ってやった。ついでにミーシャにもハチミツ多めで作って渡した。


「甘くて美味しいです」


へへへとミーシャは嬉しそうに飲んだ。



後片付けはミーシャとドワーフ兄弟にお願いし、ブリックと朝飯を何にするか考える。え~っと残ってるのは、小麦粉、トマト、タマネギ、ベーコン、チーズ・・・


これはもうアレしかないな。そうピザだ。俺は朝っぱらからピザなんぞ食わんけど、みんなタフだからいけるだろ。


俺は焼いたシャケと卵かけご飯が食いた・・・


あ、ミゲルに米の生えてる場所に連れてってもらうんだった。後から聞こう


「ブリック、小麦粉こねて」


「ぼっちゃん、すいませんパン種が・・・」


「使わないからいいよ。前のパンみたいにして、そこにオリーブオイル入れるから。あ、小麦粉こねる前にトマトとタマネギ細かく刻んで炒めてソース作らないとな」


「ぼっちゃん、なんか手伝うことあるか?」


「ダンは土魔法の練習してて、朝飯の準備終わったら俺も剣の稽古するから」


「ぼっちゃん、トマトとタマネギ刻みました」


「じゃ、それを軽く炒めて塩で味付けして。終わったら小麦粉こねてね」


ブリックに手順を指示したあと、オーブンに薪をくべて温め始める


「これくらいですか?」


こねた小麦粉を見せるブリック。


「そのままもう少しこねるよ」


生地にオリーブオイルを加えてさらにこねる。あ、ピザを窯に入れるでっかいヘラみたいのないな。土魔法で作るか。うにょにょんと形を作って硬化させ、ヘラに洗浄魔法かけてから小麦粉を振っておく。


「ブリック、このヘラの上に生地を薄く丸く伸ばして」


薄く丸く伸ばすやり方を教えてヘラに乗せる。ソースを生地に塗って、ベーコンとチーズをパラパラ乗せたらオーブンに入れる。


「オーブンに入れて。入れたら焼きムラが出来ないようにヘラで少しずつ動かしてね」


オーブンの中でチーズがグツグツし出した。


「はい、ちょいちょいっと動かして」


生地のふちに焦げ目が付いてきた。


ミゲルに教えて貰って作ったオーブンは優秀だ。熱の対流がいいのか焼けるのが速い。


「もういいよ!はい、完成。あと2~3枚くらい焼けるから頑張ってね」


とブリックに残りを任して、ミーシャに焼き上がったピザをテーブルへ運んで貰う。


「朝ご飯出来たよ~」


大声で叫ぶとドワーフ兄弟が先にテーブルに着く。遅れてやって来たダンは土まみれだった。


「また爆発させたの?」


と呆れ顔で洗浄魔法をかけてやる。


「土魔法は難しいんだよ」


「火魔法も爆発させたくせに」


そう言われたダンは悔しそうな顔しながらテーブルについた。


「適当に切り分けて食べて」


朝からピザはいらんと思っていたが、旨そうだったので1/8ほどのサイズを一つ食べた。バジルが無いとイマイチだなと思いつつ食べる。


「熱つっっ、けど旨いなこれ」


ダンががっついて口を火傷しながらも頬張る。ミーシャがじっと見ている。



「もうすぐ次が焼けるから」


そう言われてホッとするミーシャ。


「焼けたました!」


ブリックがキッチンから叫ぶので、ミーシャが運んで来て一緒に食べ始めた。


「おいひいでふぅ」


もう突っ込んでやらん。


結構デカ目のピザ、合計4枚があっと言う間に無くなった。みんな朝から良く食うね。


腹ごなしに俺は剣の稽古、ダンは土魔法の練習、他のみんなで後片付けの続きをして貰った。


後片付けもすっかり終わったので剣の稽古も終わるとしよう。


ダンに洗浄魔法をかけた後、ミゲルに米の事を聞くと、ここから歩いて2時間くらいでいけるらしい。往復4時間、向こうでの作業入れたらギリギリ行けそうだ。


「今から連れてってくれる?昼飯抜きになっちゃうけど」


「昨日の晩から食い詰めだからな、飯抜きでも構わんぞ」


ミゲルは了承してくれたので、他のみんなは帰る・・・


付いてくる気満々だね


「じゃみんなで行こう!」



ぞろぞろと米探しに出た。2時間くらい歩くと草原の中にやや泥濘んだ場所がある。


「坊主、ここらへんだ。探してみろ」


そう言われて見回してみるけど米らしきものが見当たらない。こう身体が小さいと見回せる範囲が狭いのだ。



「おーい、坊主。これじゃねーのか?」


ミゲルが呼ぶので、よちよちと走って見に行く。


「あ、これだよこれ!」


そこには夢にまで見た稲が鎮座していた。


しかし・・・


「ほとんど実が落ちてしまってるな」


来る時期が少し遅かったようだ。2割程度しか稲に米が残ってない。


くそっ、ここに米があったというのに・・・


「こっちにもありましたよ~」


ミーシャも見つけてくれたようだが、同じく2割くらいしか残って無かった。


みんなで散々さがして、5キロ程の米が集まった。全員で食べたら一回分くらいしか無い。しかしこれ以上探してもほとんど増えないだろう。


「みんなありがとう。遅くなるしもう帰ろ」


「坊主、これっぽっちで足りるのか?」


「これ食べたら一回で無くなると思う。だから来年までお預けだね」


「来年、もう少し早い時期に取りにくればいいさ」


そうダンが慰めてくれる。


「いや、この米を栽培してみるよ」


「栽培?」


全員の声が揃う。


「田んぼ作って米作れればいつでも食べられるようになるし、新しい酒とか作れるかもしれないし」


「何っ?酒じゃと?」


「作れるかどうかはわからないけど、栽培に成功したら可能性はある」


「よし、人雇って開墾しよう。お前は田んぼとやらを作れ」


ドワンがやる気満々になってくれた。しかし開墾か。自分で開墾したら土地も自分の物になるんだったよな。商会の土地として確保するのもいいかもしれないな。



土地持ちの2歳児


異世界っぽくていいねぇ。


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