第36話アーノルド、それは違うぞ

今日は東の商店街にミーシャも連れて3人でお買い物だ。


「何買うんですか?」


「鉄網を買うんだよ」


「鉄網ですか?」


「そう、森の稽古の時のお昼ご飯に使うんだ」


ダンにウサギを捕って貰って食べたこと、稽古場にバーベキューコンロを作った事をミーシャに話した。


ぽそっ


「ズルいです・・・」


「え?」


「なんでもありません・・・」


丁度いい大きさの網を見つけて買った。重いのでダンが網を背負い、俺は自分で歩いてゆっくり帰った。



森へ向かう途中、


「なんかミーシャ、元気なかったな」


「そうだな、もしかしたら森に来たかったんじゃないか?」


「剣、振ってるだけの所に来てもつまんないだろ?」


「ぼっちゃん、ウサギ食った話したろ? それに竈の事も」


「うん」


「羨ましかったんじゃねーか? 楽しそうだし。それにミーシャは串肉好きじゃねーか」


「そういやどの肉も旨そうに食ってるな」


「ミーシャの親父さん、冒険者だったんだろ? 肉焼いたのとか小さい頃から食ってたんじゃねーかな?」


「そうかもね。肉と甘いもの食ってる時のミーシャ幸せそうだもんな。でも森に連れてくるの危ないよね?」


「そうだな、ぼっちゃんとミーシャが同時に危ない目にあったら片方しか守れんからな。せめて小屋があれば安全なんだが」


小屋か・・・


「さ、着いたぞ。剣の稽古してから獲物を狩りに行こう」


剣を丁寧に左右に振る稽古してから昨日のように狩りに行った。


今日も獲物はウサギだ。ダンがさばいてくれてる間にコンロを改造する。


コンロの横壁に突起を出して薪の台になる土網を乗せられるようにする。別の土で薪を乗せる縦線だけの網を作ってと。よし出来た。


ふんぬっ!


ダメだ持ち上がらんな。ダンに乗せて貰おう。


ではコンロの上に買ってきた網を・・・、網を・・・


ふんぬっ!


ダメだ。これも重くて持ち上がらん。まるで鉄格子だな。こんなものを平然と持ってたのかダンのやつ。



「おーい、ぼっちゃん。水で洗ってくれ」


ウサギがさばけたようだ。


「ほーい!」


昨日のように水を出して血を洗い流し、ダンに薪を乗せる土網と鉄網を乗せて貰って薪をセットしてもらい、ボッと火を点けたら少し待つ。


「ぼっちゃん、いい具合に出来てるじゃねーか」


「網もピッタリだったね」


「これでなんでも焼けるし、鍋持ってきたらスープも作れるな」


そうこう言っている内にじゅうじゅうと肉が焼ける音がし、良い匂いが漂い出した。棒に肉を差して食べながら考える


「ミーシャ、寂しそうだったよな」


「そうだな」


・・・・

・・・・・

・・・・・・


「なぁ、小屋作ったらミーシャも来れる?」


「あぁ、安全を確保出来るような場所が作れるなら連れて来れるぞ」


「ちょっと時間掛かるかもしれないけど小屋作ろうか?」


「魔法で作って行くのか?」


「そう、床とか無くても壁と屋根だけなら出来ると思う」


「扉とかどうするんだ?」


「ミゲルの親方に頼んでみようかと思って」


「まぁ、木だけ用意しておけば扉だけならすぐに出来るだろうな」


「じゃあ、これから少しずつ作っていくよ」


「そうか、頑張ってみろよ」


うんとうなずき稽古場から少し離れた所に移動する。


大きさは6畳2間くらいでいいか。


イメージはコンテナだ。まるっきり箱を作って、後から出入口を開ければいい。


ぐぐっと箱形の土を盛り上げて行くことに。10cmくらい盛り上げたことで残り魔力を確かめる


【魔力】7/62


やべっ、魔力切らすとこだったな


「ダン、これくらいで今日は終わりにする」


「このぼこっと盛り上げったのが小屋になるのか?」


「そのつもりだけど」


「まだまだ先は遠そうだな」


「出来るだけ頑張るけど」


「ぼっちゃん、トイレはどうすんだ?女の子が来るなら必要だろ?」


おぉ、そうか。そうだな。


「まぁ、形がどうにでもなるなら後から足してもいいんじゃないか?小屋に作るよりちょいと離してもいいかもしれんし」


「そうだね、考えとくよ」


小屋作りはここまでにして、剣の稽古を再開した。



翌日に森へ行く前に住宅街でミゲルの親方を探して小屋に扉を付けるお願いをしておいた。



ー1ヶ月近く過ぎた家での朝稽古ー


鎧に慣れたジョンはもうベントに1本も取られることが無くなった。


「よし、もう鎧を着けてても以前と同じように動けるな」


「はい、父上」


元気に答えるジョン。うつむくベント。


「では今日から闘気を教える。ただしこれは模擬戦では使うな。相手を殺してしまう恐れがある。いざという時にしか使ってはならん。約束出来るか?」


「父上、分かりました」


へぇ闘気なんてあるんだな。


「と、父さん。ぼ、僕は・・・」


「ベント、お前にはまだ早い。ジョンにも教えるか迷ったぐらいだからな」


「でも・・・」


「ジョンは騎士学校を受けるだろ?その試験の時に闘気を使って来る奴がいるかもしれんから必要なんだ。闘気を使わないのと使えないのでは対処の仕方が異なるからな」


「ぼ、僕だって・・・」


「いいか、ベント。お前も来年騎士学校を受けるか、受けないのであれば成人する時には教えてやる。だから今は見るだけだ。わかったな」


「は・・・い」


涙目になりながらうつむくベント。


またベントの僕も僕も病か・・・

いくら言われても性格は直らんな。


「ジョンこっちへ来い」


ジョンを呼び寄せるとアーノルドが集中しだした。


ぽわっとアーノルドが金色のモヤに包まれる。


ブンっ


えっ!?


アーノルドがブレたかと思ったらその場から居なくなり、先ほど居た場所から10m程離れた所に立っている。


アーノルドはさらに集中し、体に包まれた金色の光を剣にまで伸ばしていく


「フンッ」


そばにある丸太に向かって剣を振るアーノルド。


スパンっ


あぉ、丸太が真っ二つになった。


フッとアーノルドが力を抜くと金色の光が消えた。


「これが闘気だ。ジョンは試験までにこれを覚えてもらう」


「はい、父上」


しかし、闘気って凄いな。一流の剣士はみんな使えるのかな?


アーノルドがジョンの後ろから抱きしめるような形で両手を掴み、先ほどのように闘気を出し始めた。


「ジョン、何か感じるか?」


「父上から圧力のような物を感じます」


「それが闘気だ。今まで真剣に稽古をしてきたお前にも同じような物がもう備わってるはずだ」


ジョンが集中しだすと微かに金色の光が出てくる。


フッと光が消える


あっ・・・


「集中力が切れたか? 余計な事を考えると上手く出来んぞ」


なるほど、剣を隙間に通すコツと似ているな。俺にも出来るかな?


ゲイルはアーノルドの闘気を思い出す。そして剣を隙間に通す時のように心を落ち着けて・・・・


しゅぼぼぼ


おっ、金色の光が出てきた。全体にその光を纏うようにイメージを・・・


おぉ、身体が光に包まれると力が溢れ出てくるようだ。


ゲイルは近くに落ちていた棒切れを拾ってそのまま棒まで光を伸ばしていく。


シュババババッ


やった棒から凄まじく光が出る。


フッ


あっ!?


ゲロゲロゲロゲロ~ うぇ、ぎもぢわるい~ めまいがめまいが~


なんじゃこれは?


アーノルド、これ闘気じゃねーよっ。魔法じゃねーかっ!!



「わぁーっ!ゲイルが吐いてる~!!」


ゲイルはベントの叫び声を聞きながら気を失ったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る