第24話始動準備開始

ー翌日の朝食ー


「ゲイル、お前ドワンに会ったそうだな」


そういや、ダンが報告しとくって言ってたな。


「おこってた」


「そうか、奴には改めて言うつもりだったんだが、まぁ会ってしまったものは仕方がない」


「上の二人は生まれてすぐに見せたわよね」


「そうなんだよな、あの頃貴族は子供が生まれたことをしばらく隠しておくなんて知らなかったからなぁ」


「ドワンが怒るのも無理ないわね」


そうか、元々平民の両親が貴族の習わしなんか知ってるわけないから、上の二人はすぐに知らせて、その後に貴族の習わしを知って、俺のことはまだ知らせてかなったんだ。忘れてたわけじゃ無かったんだな。


「ねぇ、あなた今度顔見せに行ったほうがいいわよ」


「あぁ、そうする。それと、剣貰ったんだって?」


「ちゅっちゃんいわい」


「ちゅっちゃんいわい?」


「あなた、出産祝いじゃないかしら?」


「あぁ、出産祝いか」


うんうんと頷いておく。


「しかし、出産祝いだったら俺かアイナに渡しそうなもんだが」


「はくじょうものって」


「ふふふ、ドワンらしいわ。きっと薄情ものより直接来たお前にやるのが筋だ、とか言ってたんじゃないかしら」


「あぁ、アイツだったら言いそうだな」


さすが元パーティーメンバーだ。よくわかってる。


「ゲイル、貰った剣を見せてくれ。どんなものかわからんと礼も出来ん」


「だん、だん」


「ダンが持ってるのか?」


しばらく使うこともないのでダンに預かって貰ってるのだ


「おい誰かダンにゲイルの剣を持ってくるように言ってくれ」


「はい、分かりました」


ミーシャが行ってくれるようだ。



しばらくしてダンが剣を持ってきた。


「旦那様、お待たせいたした。こちらでございまする」


相変わらず敬語が下手だな、武士かお前は。


「ありがとうダン。この短剣を貰ったのか。しかし、まだ2歳の子供に剣か。ドワンらしい・・・」


スっと鞘から剣を抜くアーノルド


「こ、この剣・・・」


抜いた剣をジョンとベントも見ている


「あなた・・・」


「あ、あぁ、ゲイル良かったな。お前にはまだ危ないからしばらく預かっておくがいいか?」


剣を鞘に納めながら俺に聞いてくるのでうなずく。


「そうか、いい子だな。ダン、この剣を」


「へい、武器庫にしまっておきやすか?」


「いや、お前が預かっておいてくれ。せっかくドワンがゲイルにくれた物だ。誰かが間違って使ったら申し訳ないからな」


「わかりやした」


ダンの言葉使いが武士から下っぱのチンピラに変わっていく。



「そろそろお前ら学校に行け」


いつもより鋭く言い放つアーノルド


「はーい」


今年からベントも学校に行きだしたので、メイドに連れられて二人とも食堂から出て行った。


「ミーシャ、ゲイルも部屋に」


「はい、分かりました」


「さ、ぼっちゃま、行きましょ」

ミーシャに手を引かれて食堂を出る。


「では、あっしも失礼しやす」


「ダンはちょっと残ってくれ」


「へ、へい」


「ねぇ、あなたその剣・・・」


「あぁ、魔剣だ。しかも短剣とは言えエイブリックの魔剣にも劣らん剣だ。ドワンのやつ、なんちゅう剣をゲイルに渡したんだ。ダン、お前はこの剣を見て魔剣と気付いたか?」


「へい、あっしも驚きやした」


「そうか、さすがだな。お前も魔剣だとすぐに分かったんだな」


「ドワンのおやっさんが旦那様とエイブリック様の役割を一人で出来るんじゃないかと言っておりやした」


その言葉を聞いてアーノルドは少し考える。


「分かった、ダンに頼みがある」


「へい」


「朝は俺が見るから、その後ゲイルに付いてくれないか。様子を見ながら剣も教えてやって欲しい。魔物相手の剣は俺も教えてやれるが対人の剣を教えるのは苦手でな」


「へい、あっしで良ければお任せを。ぼっちゃんを必ず守ってみせやす」


「そうか頼むぞ。お前がやってた仕事は他のものに頼むから、お前はミーシャと一緒にゲイル付きということにする」


「へい。わかりやした。ぼっちゃんにはあっしから話しておきます」


「頼む」


ダンが話を終えて食堂から出ていく。



「あなた・・・」


「あぁ、分かってる。ジョンやベントが同じように魔剣を欲しがっても無理だからな。この剣の事は教えない方がいい」


「そうね、私もそう思ったわ」


「それに俺たちが村の全員と顔みしりだった頃とは違って、今は人がたくさんいるだろ?」


「えぇそうね。もう知らない人の方が圧倒的に多いわ。それに住民でない冒険者もたくさんいるし」


「そうだ。ドワンがゲイルに何かを感じたように、冒険者の中には何かを感じる奴がいてもおかしくない。一瞬でも自分で身を守れたらなんとかなる確率が上がるからな」


「そうね、まだまだ早いとは思うけどゲイルの為ね。私も治癒魔法を教えてみるわ」


「ゲイルに治癒魔法を?」


「えぇ、あの子、2回くらい吐いて気を失った時にあなた魔力切れじゃ無いかって言ってたじゃない!?」


「そうだったな」


「あの時はそんな馬鹿なと言ったけど、実は私もそうなんじゃないかと思ったの。ほら、あの子色々な意味で普通じゃないじゃない?」


「あぁ、そうだな。話し始めたのも驚いたが、こっちの言うことを完璧に理解しているみたいだし。最近わざと子供らしくしゃべってるんじゃないかとすら思っている」


「そう、妙に大人っぽいのよね」


「とにかく、朝の稽古にゲイルも参加させて俺やジョン、ベントが剣を使ってるところを見せようと思う。アイナは治癒魔法を使ってるところを見せてやってくれ」


「分かったわ」


「ダンにはゲイル用の木剣を作って貰って少しずつ振らせてみてもらう」



少し間が開いてから、アイナが考えこんだ様子でアーノルドに訪ねる。


「ねぇ、今から剣を覚えて治癒魔法まで使えるすっごい子に育ったらあなたどうするの?それにあの子、二人よりずっと賢いと思うわ」


「どうするって何がだ?」


「跡継ぎのことよ。ジョンかベントのどちらかが継ぐと思ってたけど、歳の離れた三男がズバ抜けて優秀だともめるわよ」


・・・・

・・・・・

・・・・・・


「そうかもしれんが、本人がどう言い出すかもわからん内に考えても仕方がないだろ」


「そうね、でも頭の片隅にでもいいから考えておいてね」


「分かった。じゃそろそろ俺たちも行こう」


「そうね。遅れるわ」


ー学校に向う長男と次男ー


「兄さん、あの剣っていいやつなのかな?」


次男のベントが長男のジョンに尋ねる。


「知らん」


そっけなく答えるジョン。


「いいなぁ。僕も自分の剣欲しいなぁ。なんでゲイルばっかり・・・」


「ひがむ前に稽古に励め」


ジョンにバッサリ切り捨てるように言われたベントはぶつぶつ言いながら登校するのであった。


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