第19話バレた
自分の部屋に戻ってきた二人。
「これでもうベントぼっちゃまのお部屋には入ること出来なくなりましたからねっ!」
え?それは困る。
「ぼっちゃまのせいじゃないですか!サラさん怖いんですよっ」
確かに怖かったな。
うんうんとうなずく。
「分かってます?というか分かってますよね・・・?」
・・・・
「私の言ってることちゃんと理解出来てますよね?」
・・・・
「分からないふりしてもダメですよ」
・・・・
「それに本当はしゃべれるんじゃないですか?」
ま、まずい。どうしたんだ今日のミーシャはグイグイ来るぞ。
「目線そらしたってダメです」
ムギュッ
両手でほっぺた押さえられて正面を向かされる
「しゃべれますよねっ!?」
近い!顔が近いぞミーシャ!
「誰にも言いませんから、教えて下さい。私が話してることも理解してるし、話すことも出来るんですよね!?」
あ、涙目だ。このまましらばっくれてもいいんだが、なんか可哀想そうだな。俺のせいで怒られたりしてるし・・・
どうすべか?
このままだとベントの部屋にも行くことも出来なさそうだし、ちゃんと話してミーシャを巻き込んだ方が早いかもしれん。
「ぼっちゃまっ!」
・・・・
「へへへ、バレた?」
「きゃあぁぁぁぁ!」
あ、ミーシャが逃げた。なんだよ、知ってたんじゃないのかよ?
「はぁっ はぁっ はぁっ」
あ、ミーシャが戻って来た。
「知ってたんじゃないのか?」
ビクッ
「ま、ま、まさかとは思ってましたけど、本当にしゃべれるとは思いませんでした」
「ちゃんと話すからとりあえずドアを閉めて」
「は、は、はい」
バタンっ
なんかビビってるな。そりゃそうか。1歳児がいきなり普通に話し出したら怖いわな。
「どうして黙ってたんですか?もう話せるなんて凄いじゃないですか」
「そりゃ、どうしてか分かるだろ?ミーシャも震えてるじゃないか」
「それは・・・」
「誰だって1歳児が話し出したら気味が悪いだろ?それが分かってたから黙ってたんだよ」
・・・・・
「いつから話せるようになってたんですか?」
「それはまだ最近だよ、半年くらい前まではみんな何しゃべってるか全くわかんなかったし」
「え!? そんな頃から分からないって事が分かってたんですか?」
やべっ
「い、いや、最近しゃべれるようになって、あーあの頃は分かんなかったなぁって思って・・・」
「どうしてそんな流暢に話せるんですか? もしかしてしゃべれるんじゃないかと思ってましたけど、もっと赤ちゃん言葉だと・・・」
「あー、それは・・・、ミーシャがよく話し掛けてくれてたから、りゅ、流暢に話せるようになったんじゃないか?」
「私、そんな旦那様みたいなしゃべり方してませんけど」
しまった。ミーシャは俺に対して常に敬語使ってるじゃないか。ミスったぁ、ミーシャ思ったより賢いじゃないか。
何か良い言い訳が・・・
「も、もしかしたら魔法のおかげじゃないかな? なんか魔法使えるみたいなんだよね」
魔法が使える事もバラしちゃった方がこの後も話がしやすいしな。
良い言い訳だ。
「魔法ですか?」
「そうそう、魔法、魔法のおかげ!」
「誰も魔法があるなんて教えてないのになんで魔法って知ってるんですか」
・・・・
いかん、話せば話す程どつぼにはまっていく。ミーシャより俺の方が知力低いんじゃないだろうか・・・
はっ!
ミーシャの頭にビックリマークが出た。
「もしかしてぼっちゃまはお父さんなんですか? 私を残して死んで心配になって生まれ変わってくれたんじゃ・・・ ウグッ ウグッ うわーん お父さ~ん」
ガバッとミーシャに泣きながら抱き付かれる
「違う 違う 違うからっ」
「ウグッ 違うのですか? 話し方がお父さんそっくりです」
スマン、ミーシャ。違うのだ。
「残念ながら俺はミーシャのお父さんじゃない。期待させてスマン」
「でも、でも・・・」
働き出しているとはいえ、ミーシャはまだ子供だ。両親が早くに死んで淋しかったのだろう。なんか可哀想なことしたな。
しかし、どこまで正直に話すかな。異世界のことは黙っておいたほうがいいに決まってるしなぁ。めぐみの事を少し濁して話したらいけるか。
「ミーシャ、今から言うことを良く聞いて」
「はい、お父さ・・・ ぼっちゃま」
だから違うって
「実は生まれてから半年たった時に神様からお告げがあったんだ」
「お告げですか?」
「そう、お告げ。あなたは魔法が使えるから、その力を使ってこの世界に役立てなさいって」
「あわわわ、ぼっちゃまは神様の使者だったんですか お父さんとか呼んで申し訳ありませんっっ」
違う
すっごいのはすっごいのっ!とか知力の足りない説明をするような奴の使者ではない。ただの人事異動だ。
「そんなたいそうなもんじゃないから畏まらなくていいぞ」
「でも・・・」
「俺はただのゲイル・スレイヤという1歳児だ。お父さんでも神様の使者でもない。少し魔法が使えて普通より話すのが早いだけの人間だ」
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
「そうですか。よく分かりませんが、分かりました」
ふぅ、なんとか乗り切ったな。
「それで使者じゃないけど、力を役立てなさいって言われちゃったから早く色々知りたいんだよ。ミーシャも手伝ってくれるよね?」
「は、はい、私に何が出来るか分かりませんが頑張ります」
「ありがとう。ミーシャはいい子だね」
「へへへっ」
照れたように笑うミーシャ。
いかん、ホントに親子みたいになってしまった。
「まず、文字の読み書きが出来るようになりたいんだけど、ミーシャは字を書ける?」
「はい、もちろんです。学校で習いましたので」
おお、貴族だけでなく平民にも学校があるのか。それは良いことだ。
「では何か書くもの借りてきますね」
「宜しく! あ、それと俺のことは内緒ね」
「分かってます。というより言っても誰も信じませんよ」
フフフっと笑いながら書くものを取りにいくミーシャだった。
しばらくして石盤みたいなものを持ってミーシャが戻ってくる。
「お待たせしました。これに書いてみますね」
つらつらつらと文字を書くミーシャ
これは・・・
ベントの部屋で見たお手本の文字・・・
見間違いじゃなかった。まんまアルファベットじゃないか!?
数字も元の世界と全く同じだ。これはどういうことだ?
「文字はコレだけです。読み方は・・・」
「あー、ミーシャ。これが「あ」でこれが「い」、そしてこれが「か」であってるか?」
「え? もう覚えたんですか?」
まぁ、覚えたというか、知ってる
「えっ?えっ?えっ? ジョンぼっちゃまやベントぼっちゃまは入学前にお勉強されてますが、普通は学校に入って1年間かけて覚えるんですよ」
え?1年間かけて覚える?アルファベットと数字を?
「ぼっちゃまって すっごいですね!」
「あ、うん・・・」
知力が低いってすっごいなとゲイルは思ったのであった。
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