第18話異世界の文字

くそっ、せっかく普通食になったと思ったのに、またミルク麦になってしまった。どうやらこの身体はまだ普通食を上手く消化出来ないらしい。


ちゃんと経験で幼児には離乳食を食べさせないといけないこと知ってるんだな。

知識は無くとも生活の知恵ってやつか。


仕方がない。飯は生活の知恵に従うとして、文字の勉強しに行かないとな。


ミーシャは俺の世話以外にもメイドの修行を兼ねて雑用もさせられてるらしく、なかなか部屋に来てくれない。


幼児が大声で呼ぶのも変だしな。


そういや物音するとミーシャが見に来るな。


ドア叩いてみるか。


ドアまで歩いて・・・


おっとっとっと


ずいぶん歩けるようになってきたとはいえ、幼児の身体はバランスが悪いな。頭が重くて手足が短い。


ヨッチヨッチっと


無事ドアまで到着。


ドアを叩く。


タンタンっ タンタンっ


ダメだ、力が足らん。ほとんど音が鳴らないや。魔法で浮いてドアノブ開けるか?いや、またタイミングよくミーシャが来ても困るな。ちっ、来て欲しいのに来られたら困るというなんたるジレンマ・・・


ガチャッ


「 なんか音がしたです」


うわっ ホントに来た。危なっ、浮いてなくてよかったよ。しかし、あんな小さな音で来てくれるとは。


・・・まさかずっとドアに聞き耳立ててるんじゃないだろうな!?


「ぼっちゃま、こんなところでどうしました?」


ベントの部屋に行きたい とかしゃべったらまた大事になるだろうな。


ボディランゲージで伝えるしかないか。


「だぁーだぁーっ」


声だしてドアの外を指さしてみる。


「お外に出たいのですか?」


仕方がないですねと言いながら抱っこしてくれるミーシャ。お礼ににっこり微笑んであげよう。


「わ、喜んでます。外に出たかったのが正解なんですね」


そうそう!


「どこに行きたいのですか?」


「ベンっ ベンっ」


「ベン? あ、ベントぼっちゃまのところですか?」


うんうん


「正解のようですね。でもベントぼっちゃまは勉強中なのでダメですよ」


知ってる。だから行きたいんだよ。


「ベンっ ベンっ!!」


わ、なんか怒ってます。


「そんなにベントぼっちゃまの所にいきたいのですか?」


うんうん。


「わかりました。ベントぼっちゃまの部屋まで行って、サラさんに聞いてみましょう。それでダメだったら諦めて下さいね」


了解!手を上げて答える。


やっぱり、ぼっちゃまはホントは話せるんじゃないでしょうか?私の言った事が全部分かってるような気がします・・・



「さ、ぼっちゃま、ベントぼっちゃまのお部屋まで来ましたよ。サラさんに聞いてみますね」


コンコンっ


ガチャッ


「あら、ミーシャ、何の用?ベント様はお勉強中ですよ」


「すみませんサラさん。ぼっちゃまがどうしてもベントぼっちゃまの部屋に行きたいと・・・」


「どうしてそんな事があなたにわかるの?もしかして邪魔しにきたんじゃないでしょうね!!」


「いえ・・・、決してそんなことは・・・」


なんか怒られてるみたいだな。


「用事がないからさっさとあっちへ・・・」


ヤバい、ドアを閉められてしまう


慌ててミーシャから飛び降りてベントの部屋に入る。歩くと遅いので高速ハイハイだ!


シャカシャカシャカッ


「あ、ぼっちゃま、お部屋に入っちゃ・・・」


シャカシャカシャカッ


「まったく、あなたがしっかり捕まえてないから入っちゃったじゃない!!」


「どうしたのサラ?・・・わっゲイル!」


くっくっく、入ってしまえばこっちのものよ。


さて、どんな文字なんだろうか?漢字、ひらがな、カタカナを使いこなしてた元日本人をナメるなよ。ヘイ、文字カモーン!


ベントが書いてたであろう文字を見てみる。なんじゃこのミミズが這ったような文字は?


アラビア文字みたいなやつか?

正直、こっちの世界をナメてたが難易度高そうじゃねーか。


「み、見るなよ!」


慌てて自分の書いた石板のようなものを隠すベント。


「ぼっちゃま勝手に入っちゃいけませんっ」


あ、ミーシャが来た。


「まったくもう邪魔しないでくれるかしら、ミーシャあなた本当は勉強の妨害しに来たんでしょ!」


サラ、めっちゃ怒ってんな。

可愛い幼児が乱入したくらいでそんな怒んなよ。ミーシャが可哀想じゃないか。


「す、す、すみません。決して妨害とかそんな理由では・・・」


「もういいわ。早くその赤ん坊を連れて出て行って頂戴!」


「す、すみません。すぐに出て行きます」


ミーシャに抱っこされて部屋から出る時にサラが書いたであろうお手本が書かれた黒板が目に入った


?!?!????


「さ、ぼっちゃま。もう行きますよ」


自分を抱っこしながら小走りに部屋を出るミーシャ。


「失礼しましたー」


バタンっ


「まったく、ベント様の妨害したって歳の離れた三男坊が跡取りになれる可能性なんてほとんどないのに。さ、ベント様、頑張って勉強して跡取りを目指しましょうね。ジョン様に負けてはダメですよ」


「分かってる。僕頑張るよ」


「そうですわ、このサラが必ず跡取りになれるよう鍛えて差し上げますわ」




「もう、怒られちゃったじゃないですか!あれほどサラさんの許可が出てからと申し上げましたのに」


スマンねミーシャ

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