第15話初めての言葉

文字を覚えるのに何かないかな?


キョロキョロと周りを見渡してみる・・・


赤ちゃんがいる部屋なのに知育玩具や絵本とかまったくないな。それにおっぱいとオムツ交換や身体を拭いてくれる時以外放置されてたし・・・


あぁ、知力の低い世界だから幼児教育とかの発想が無いんだな。


それぞれ自分の仕事をする→時間になったらおっぱいやオムツ交換→それ以外は泣いてたら見に来る。こんな感じなのだろう。俺は泣くことなかったから放置されてたのかもしれん。まぁ、その方が都合良かったが。


見回してもここには何にも無いからこの部屋以外に探しに出るか。


ベッドから降りるの難しいな。


よいしょ よいしょ


ずり落ちるようにベッドから降りる。


立ち上がるのに思ったより力いるな。ベッドの端に掴まってうんしょっと。


グラグラっ


おぉ、あたまが重い!


この身体バランス取るの難しいぞ。


おっとっとっと・・・


ごすっ


痛っ~! 頭から転んだ。


普通、子供の部屋ってカーペットくらい敷いとくもんだろ。フローリング剥き出しとかないわ。


仕方がない、ハイハイでドアまで行くか。


ん?ドアをどうやって開けようか。

ドアノブまで届かん。


脚立みたいなもんないし・・・


あ、魔法で浮いてみるとか出来るかもしれん。


自分がふわふわ浮くイメージ ふわふわ浮くイメージ ムムムッ


ふわっ


お!浮いたっ 浮いたぞ!


よし、ドアノブまで・・・



ガチャッ


なんか凄い音がしたけど・・・


「わっ、ミーシャ!」


・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・


「きゃあ、ぼっちゃまが・・・ぼっちゃまが浮いてるぅぅ!」


えっえっえっ!?


「ぼっちゃまが浮いてしゃべったぁぁぁ!!!! 奥様!奥様ぁぁぁ!!!」


やっべ、いきなりドアが開いたから声でちゃったよ。まずいなぁ・・・

とりあえずベッドの横まで戻っておこう。



バタバタバタッ


「奥様早くっ!早くっ!」


「ゲイルっ!?・・・? 何よ浮いてなんかないじゃない」


「あれ?確かにぼっちゃまがドアのところで・・・」


「見間違えたんじゃないの? まぁ、いいわ。それよりしゃべったのは本当? なんて言ったの?ねぇなんて言ったの? ママでしょ! ママに決まってるわよね?」


「そ、それが・・・」


「もしかしてパパだったの?」


「ミーシャと・・・」


「ミーシャですって?そんなことあり得ないわっ!初めての言葉がミーシャだなんて信じないっ!」


「あの・・・その・・」


「ねぇゲイル、嘘よね、ミーシャなんて言ってないわよねっ!?」


あー、確かに親としてパパママ以外が第一声だとショックだわな。


しくったなぁ・・・

まだミーシャ責められてるし・・・


ぽそっ


「ママ・・・」


「きゃあ!ママって言った!ママって言ったわ!! ねぇ、ミーシャ、ママって言ったの聞こえたわよね!?」


「は、はい奥様・・・」


「やっぱり初めての言葉はママだったのよ!ミーシャなんて言ってないわ!ミーシャの聞き間違いだったのよ」


「・・・そう そうですよね。浮いてたのもしゃべったのも勘違いでした。奥様申し訳ありませんでした・・・」


「もういいわよ、気にしないで。それよりゲイル!もう一度ママって言ってみて! ほらママよママ!」


ぽそっ


「ママ・・・」


「きゃあ!まだ1歳になったばっかりなのにゲイルって天才じゃないかしらぁぁ」


ミーシャよ、スマンな。

この埋め合わせはいつかするから。

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