第2話プロローグ2
はぁ、価値観の違いかぁ・・・
入社してからずっと成果を上げて昇進を目指してきた自分と今時の若い社員の価値観の違いにショックを受ける黒岩啓太。
特別良い学歴や能力があるわけではなかったが、人懐っこい性格と面倒見の良さ、がむしゃらに頑張る姿勢が買われて部長まで出世してきた。
もちろんそれだけではなく、毎年のように異動命令があったものの任された仕事の予算もほとんどクリアし、赤字部門の建て直しや、偏った評価基準の改善で社員の退職率低下などで会社に貢献してきた。
しかし、優秀な学歴を持つ上司や先輩に成果をかすめ取られたり、派閥の部下を優遇するような評価基準を潰した事により、一部の役員から煙たがれてきたのも事実。
度重なる赤字部門への異動はそのような者達からの嫌がらせでもあったのだが、それを改善することにより評価が上がるという皮肉な結果でもあった。
もう年齢も年齢だし、次の異動は役員の昇格も無いだろうし、子会社への出向だろうなぁ。
おそらく今年か来年の人事異動でこの部門からは去ることになるだろう。その前に優秀な社員を昇進させておきたかったのだが本人が望まないなら仕方がない。
ふと部内を見渡すと今年入った5人の新入社員の元気が無いように感じられる。
5月病にでもかかってるのかもしれんな。
毎年新入社員の内、数人が研修中に、そしてまた数人が配属後すぐに辞めていく。
研修中に辞めて行くようなやつは仕方がないとして、配属後は先輩や直属の上司が少し新入社員に配慮してやらねばならない。
しかし、辞めたくなる原因が配慮するべき先輩や直属の上司にあったりもするのも事実だしな。
直接話してみるか・・・
昼休憩前に新入社員に声をかけるか。ランチだと酒も飲めんし、晩飯にでも誘ってみよう。
「あー、君たち。今日は仕事が終わったら何か予定あるかね?」
「いえ、特に予定はありません」
返事をする5人の新入社員。
「そうか、じゃあ今日は金曜日で明日は休みだし、ご飯でも食べに行こうか!焼き肉でも寿司でもなんでも好きな物をご馳走・・・」
「それって残業代は出ますか?」
は?
「上司からのお誘いということは業務のようなものですよね。残業代は出ますか?」
「い・・・いや、研修というわけでも業務というわけでもないので残業代は・・・」
「ではせっかくのお誘いですが、辞退させて頂きます」
「そ、そうかね。ではまたの機会に・・・」
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
自分が新入社員の頃、上司が奢ってくれると誘ってくれた日には、例えラーメンでも犬みたいに喜んで付いてものだったがなぁ・・・
これも価値観の違いか・・・
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