第5話 残酷な現実
戦場は兵士だけでなく魔女も殺気立っている。
戦争に関係ない使い魔風情を相手にする魔女は少ない。たまに現れても「トリスの使い魔なんだ?」と鼻で笑われるから、トリスの仲間受けは最悪のようだ。
夜になるたびにいろんな戦場を駆け巡り、可能な限り魔女に接触した。
だがなんの成果も得られない。
時間がたつほど、フロリカの反応が鈍くなり、最初の頃のように喜んだり、口をぱくぱくさせたりすることが減ってきている。
触れても以前ほど感情の揺れを感じない。
――そんなに早く、この呪いはフロリカをカエルにしてしまうのか?
そもそもどうしてこんな呪いをトリスはフロリカにかけたのだろう。
トリスが揉めていたのはこの国の王子、フロリカの夫、ミザールではないか。
――ひと月後にはフロリカの国から王様が様子を見にやってくるって言っていたよな。
そのひと月後はもう目前だ。
シルルは焦り始めていた。
どうしよう。どうしたらいい。トリスがいれば解決する? 戦場に行くよりトリスを捜すほうが早い?
だがトリスがどこにいるかなんてわからない。
気温が下がり、明け方はいつ霜が降りてもおかしくない。寒いと動きが鈍るらしく、このところフロリカは湯たんぽを入れたバスケットでまどろんでいることが多い。
バスケットの中には、髪留めが入っている。
髪留めのほかにも、町で薬草を売るたびにシルルが買ってくる「フロリカのための」のリボンや、腕輪、指輪など小さな装飾品を、フロリカは大切そうにバスケットの中にしまっていた。
いつか、それがフロリカにとってなんなのかわからなくなるのだろうか。
その日は近いのだろうか。
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