第5話メッケル少佐の見解
明治18年、ドイツ軍参謀少佐のメッケルが日本陸軍大学校の高等武官養成の為に来日した。
陸軍大学校で、ある将校がある戦いの布陣図を見せて、メッケル少佐に尋ねた。
「少佐、これが日本を東西に二分に別れての最大の
メッケル少佐は、布陣図を見てこう答えた。
「これは、西軍の勝ちだな。西軍は鶴翼の陣を開き、東軍は囲まれている。正面の本隊と戦い疲れた時、後ろから攻め、横から突けば西軍の勝ちは間違い無いだろう」
「いいえ、少佐。勝ったのは東軍です。しかも、圧勝でした」
「嘘だ!100回戦っても100回西軍が勝つはずだ!」
少佐は、
「その日、何があったんだ?」
と、傍らの将校に尋ねる。
「当日、朝は霧だったのです」
「そうか、霧で相手が見えず双方近付きすぎたんだな」
再びメッケルは布陣図を見て、
「しかし、勝つのは西軍だ!当日、何が起きてたんだ?」
「裏切りです。背後の毛利勢は動かず、この山に布陣する小早川は裏切り、大谷隊に攻め込んだのです」
「なるほど。囲っていたのは西軍では無く、東軍だったんだな?」
「そうです」
メッケル少佐は理解した。
勝敗を決した小早川秀秋はその時19歳。
21歳で発狂して死んだ。
歴史を変えるのは、いつ、誰か分からないのだ。
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