第7話 叩いたところでポケットの中に入ってなきゃビスケットは増えない・上
放課後の教室。
窓際の特等席。
本を手に取る。
しおりを抜き取って表紙を開く。
どこまで読んだか忘れてしまったから。だから、最初から読み直す。きっとその途中で、また忘れてしまうかもしれない。でもそれでいい。だってこの本を読み終わったら、次に読む本を選ばなければいけないから。
だから、これでいい。
「……気分が乗らないな」
ただ、一ページ目を一通り読み終えたところで、窓の外を見て“僕”はそう呟きながら本を閉じてしまった。なんだか、続きを読む気がしなかったのだ。
おかしい、と僕は思った。秋といえば読書というのは定番そのもので、この時節になれば不思議と読書欲が湧いてくるのだとばかり思っていたのだけれど。そうではないらしい。
一昔前のベストセラー推理小説だ。読めば面白いし、父親に勧められた本でもある。だから何とか最後まで読んでみようと思っているのだけれど、どうしてこうも読む気にならないのか。
いや、考えるまでもない話か。読み終えるという選択も、読まないという選択もしたくない。そんなひねくれた性分が原因だ。
中学生の誰しもがこじらせる、社会に対する妙な反骨心。自分は他とは違うという思春期特有のアイデンティティ。親から勧められたという反抗期。
あるいはただ、めんどくさいだけ。
「どうしようか」
椅子の背もたれに体重を乗せながら、本を机に置いて空を仰ぐ。特に何もない。
視線を下ろして机に置いた本を見る。特に何もない。
視線を横にずらし、窓の外の景色を見る。三階の窓から見える特に何も――
「……イグサ?」
三階の教室から見下ろした校舎裏の校庭の景色に、一人の女子生徒が見えた。風狸伊草。幼稚園の頃からの幼馴染だ。
そんな彼女が、一人で校庭をうろうろとしている。一体何をしているのだろうか、と僕は思った。
どんくさいイグサのことだ。また、何かものでもなくしてしまって途方に暮れているのだろう。
「行くか」
読みかけの本を机の上に置いたまま、僕は放課後の校庭へとイグサの影を追いかけて繰り出した。
三階から一階へ。靴箱を経由しつつ外に出た後、教室から見下ろした場所へと移動する。
校舎裏の校庭。ここは確か、生垣や花壇、それに飼育動物しかなかった人気のない場所だ。一応、昼休みのごはんスポットとして扱われているにはいるが、放課後になってまでここに足を運ぶ人間なんて限られている。
まあ、理由は後でいい。とりあえず、今はイグサを見つけることが先だ。ここまで移動するのにそこまで時間はかかってないはずだから、まだ遠くに行っていないはず――
「っと、居た居た」
予想通りイグサ発見。彼女は花壇の近くを、先ほどと変わらない姿でうろうろと歩いていた。どんくさいイグサは、やはり中学生となっても移動速度はそこまで速くなっていないらしい。
「おーい! イグサ、なにしてんだよ!」
「あ、タイちゃん」
そんなイグサに声をかけた。僕の声を聴いたイグサが、眼鏡をかけなおしながら顔を上げてこちらを見る。頭の上には葉っぱがちょこんと乗っていた。きっと生垣の中も探したのだろう。
「こんなところで何やってるんだよ」
イグサに近づき頭の葉っぱを払いつつ、僕は尋ねる。
なぜたった一人で校庭をうろうろとしているのか。そもそも、イグサは家庭科部の所属のはずで、部室のある校舎はここから離れた場所にある。彼女にこんなところを歩いている理由なんてないはずだ。
そんな疑問に返ってきた言葉は、どこか曖昧なものだった。
「えと……ちょっとなくしもの探してて」
「こんなところでか?」
「うん」
そうか、とイグサの返事に僕はつぶやく。それから、何をなくしたのかと尋ねた。
そこで、彼女はわたわたと慌てだす。
「あ、えっと、タイちゃんには関係ないから……」
関係ない。関係ない、ね。
まったく、僕が小学校までの間に、どれだけドジなイグサのフォローをしてきたことか。今更、手助けの一つや二つ、ためらう理由なんて何にもない。なので僕は、今までの関係性も忘れたようなイグサの言葉にちょっとだけ怒りながら言う。
「なーに言ってやがるイグサ」
ついでにイグサの頭にチョップを一つ。身長差もあって見事慌てる彼女の額に、僕の手刀が突き刺さった。うむ、惚れ惚れするほどの食らいっぷりである。
「あ痛っ!?」
「関係ないとか言ってんじゃねぇよ。お前はどんくさいんだから、こういう時は人を頼れ。んで、何を失くしたんだよ」
「うぅ……だからってチョップはひどいよタイちゃん……」
「キュートアグレッションてやつだよ」
「難しい言葉でごまかさないでよ!」
うむ。やはり暴力はよくないな。いや、今のチョップは暴力ですらない、綿毛に触れるほどやさしいソフトタッチだったはずなのだけれども……イグサがか弱いのか、それとも僕が加減を間違えたのか。ともあれ、反省すべき事案か。
「悪かった悪かった。罰として失せ物探しを手伝ってやろう」
「ず、ずるい……いつものことだけどずるいよタイちゃん!」
なんて冗談を挟みつつ、探し物の詳細を聞き出す。その態度からこちらが一切引く気がないことがわかってくれたのか、観念したようにイグサは教えてくれた。
「携帯電話。中期テスト頑張ったご褒美にって、お母さんが買ってくれた奴」
「なるほど。ちなみにそれは赤いカバーに鉄球みたいな黒いキーホルダーがついたやつか?」
「え? あ、あれ? タイちゃんに見せたことあったっけ?」
「ないよ。そもそも最近一緒に遊んでないだろ。……じゃなくて」
携帯電話と聞いた俺は、ある一点を見つめながらその細部に至るまでの特徴を確認する。なぜそんなことをと問われれば、理由は一つしかない。
ちょうど俺が見ている場所に、それが落ちているのだ。
「もしかしてこれか?」
携帯が落ちていたのは、花壇近くにある小さな倉庫の入り口のひさし部分。そこに引っかかるように、板状のスマートフォンは鎮座していた。
確かに見つからないわけだ、と僕は思った。なにせイグサはかなりの小柄。それに加えて倉庫入り口のひさしの上だなんて、鳥の巣でもなければ見ることもないような位置である。
俺が見つけられたのだってただの偶然。頭に葉っぱを乗せてまで花壇の生垣の中を捜索したイグサが見つけられないのなら、と周囲の高い場所を見渡したときに、偶然スマホの赤いカバーが見えただけ。
とりあえず、すぐに俺はスマホを回収した。回収の際には、一度職員室まで行って倉庫の鍵を借りて、倉庫から梯子を出してと手間がかかった。
これもすべては、俺の運動神経が死滅しきっているのが原因だ。ひさしの高さは約二メートルと少し。平均的な男子中学生ならば、垂直跳びで手が届く。
まったく、自分の無能力さが憎いったらありゃしない。
「次はなくすなよ」
「うん、ありがとうタイちゃん!」
何はともあれ回収完了。イグサからは元気いっぱいのありがとうをいただいた。
それと同時に、放課後のチャイムが流された。季節は秋半ば。ほどなく陽が沈み、夜になる時間。下校のタイミングだ。
「じゃ、じゃあ私はこれで! 本当にありがとね!」
だからだろうか、イグサは急いで近くに置いていた荷物をまとめて走り去ってしまう。去り際にもう一度、俺へとお礼を言いながら。
「……ふむ」
校門の方へと去っていく彼女の背中を見送りながら、俺の口から言葉にもならない声が零れる。
小学校の時分には、帰り道が同じ僕とイグサはよく一緒に下校をしたものだ。ともすれば、帰宅部でしか僕と家庭科部所属のイグサの偶然にも一致した下校時間。昔のように歩いて帰るものだとばかり思っていた。
しかし、そうはならなかった。
避けられている? 可能性は高そうだ。
男女の幼馴染間ではよくあると聞く話だ。小学生から中学生に上がるタイミングで、どうにも気恥ずかしくて会えなくなる。あるいは、クラス分けなんかで別々の友人を作って、自然と疎遠になっていく。
多分、その延長線上のものだろう。
と、思ったけれど。
ただ、それだけじゃないような気もする。
「……」
改めてイグサの携帯が落ちていた場所を見た。
携帯を失くしたと聞いたときは昼休みあたりにポケットから落としたものだとばかり思っていたが、投げでもしない限りあんなところに落っこちない。それに、校舎からも倉庫は離れている。窓から落とした線も薄そうだ。
というか、イグサが携帯を投げる姿が思い浮かばない。聞いたところによれば、あれはお母さんが買ってくれたもの。そんな大事なものをぶん投げるほど、イグサは母親のことを嫌っていない。
あんなところ、教室の窓から投げでもしない限り……
「……まさか、な」
――始めて俺がイグサのいじめを認識したのは、この時だった。この時ばかりはまさかとばかり思っていた。
しかし、そのまさかが確信へと変わるまでに、そう多くの時間はかからなかった。それこそ、冬に入るよりも早く。秋が終わるよりも早く、それはわかりやすく僕の目の前に現れた。
例えば下校中の帰り道。帰宅部のくせに図書室にこもったり、放課後の教室で管を巻いているわけでもなく珍しく早い時間に帰路に付いた日のことだ。
僕が通っている中学校の近くには公園があり、そこには大きな池が設置されている。ちょうどここが僕の家から学校までの最短ルートなので、登下校の際にはもれなく使用させてもらっている。
さて、そんなある日。池の中には地味な色の鯉が泳いでいるのだが、彼らの黒さとは全く別物の何かが、池辺に漂着していた。
教科書だった。それも裏面には見知った名前が書いてある。風狸伊草。その日は、池に教科書を落とすだなんてドジな奴だなと、イグサのどんくささを思い出すだけだった。
例えば教室の移動中。イグサとは別の組ということもあって、学園生活で遭遇することがあまりないのだが、先日の出来事もあってか、イグサのいるクラスの前を通りがかった時にふと、教室の中を覗いてしまう。
その時に目立って見える教室奥側の一席。やけに汚れた机が見えた。学校の机は、上級生から下級生へと受け継がれし品である。あたりはずれはもちろん、殊更汚れていることもあるだろう。
それだけならばよいのだけれどと、その時の僕は思うだけだった。
なんて。
ことを。
繰り返して。
少し探ればわかりそうなものを、僕はずっと避け続けていた。調べるということを怠ったのだ。調べるという行動を選択したくなかった? 今となっても分からない。
ただひとつわかることは、女子トイレの前に通りかかったときに、中からずぶ濡れになったイグサが出てきたとき。
僕はひどく、自分に絶望したということだけだ。
「あ、タイちゃん……」
異臭はない。それでも、トイレの中から全身が濡れ鼠のようにになって出てきたというだけで、少しだけ、少しだけ近寄りがたい。
「……ごめんね。私は、大丈夫だから」
そんな僕の僅かな拒絶に気づいたのだろうイグサは、悲しそうに笑ってどこかへと去っていった。
どこに行ったのかは見当もつかない。ただ、どこかに行こうとする彼女の姿が見えなくなるまで、僕は彼女に言葉をかけることは愚か、その場を動くことすらできなかった。
「っ……ああ、そうだ。お前はそんな奴だった」
イグサの姿が見えなくなって、ようやく動けるようになった俺は、舌打ちをしながらそう呟く。
イグサは。
イグサは、助けを求めない。
昔からそうだ。幼稚園児だったころの記憶なんてもうすでに曖昧だけれど、それでもはっきりと覚えている。
転んでケガをしたとき、あいつは泣くだけだ。
ソフトクリームを地面に落とした時、あいつは泣くだけだ。
人から悪口を言われてしまったとき、あいつは泣くだけだ。
悲しくて、泣いて。
それから、立ち直ろうと涙を止めて、悲しそうに笑う。
そんなイグサが見ていられなかったから、俺は助けてあげようと思ったんだ。
ドジでよわっちいのに、それなのに無理にでも立ち直ろうとするあの悲しそうな笑顔を、僕は見たくなかったから。
だから、僕は。
「大丈夫だなんて、嘘つくんじゃねぇよ」
文句を言うようにそう呟いて、決めた。
いつものように、頼まれてもいないのにイグサを助けると。
僕は決めた。
◆
いじめの主犯格はあっさりと分かった。
イグサをいじめを指示しているのは、同じクラスに所属する女子生徒の一人。名を、狐陽玄羽という。
その名前は俺も知っている名前だ。なにせ、狐陽とは小学生の時分に四年ほど連続して同じクラスだったのだから。もちろん、友人だったわけではないけれど、何度かグループ活動で遭遇することもあった。
その時の印象を語れば、女王様という言葉に尽きるだろう。多くは語らず、ただそこにいるだけ。しかし、たったそれだけで他とは比べ物にならないような存在感を放っている。
その理由はいくつかある。ツンととんがった威圧的な瞳によるところもあれば、への字に結ばれた口元が常に浮かべる不機嫌そうな表情もその一つ。
ただ、やはり一番の理由はその見た目にある。誰しもが一度は見入ってしまうほどに彼女の容姿は優れていて、美少女といっても過言ではなく美しい。
狐陽玄羽は、学校中でその名前が噂されるほどの有名人ではあった。
そして、今となっては名実ともに女王様としてクラスを支配している、ということらしい。
大した調査もせずに主犯格が判明したのだって、ある意味ではその支配域の広さを示しているのかもしれない。見た目がいいということは、それだけで一定の発言力持つのだから。
おかげで、教師の何人かは手籠めにされていて、イグサのいじめはないものとして扱われていると聞く。
「――と、言うのが俺の調査結果なのだけれども。そこら辺はどう思う?」
「どう、と言われてもね」
放課後の通学路。公園内にある池のほとりにて、夕日を背にした僕は一人の女子と対峙していた。
「私が言いたいことは一つだけね。どうしてわざわざ、貴方の言う主犯格に対して、自分の調査結果をつらつらと語っているのかしら」
「そりゃあんたがいじめの主犯格だからだろ」
向かい合いながら敵対的と言って差し支えない視線をこちらへと向けてくるのは、ほかでもないイグサをいじめる主犯格の狐陽玄羽だ。
ストーカーじみた行為であるけれど、彼女が一人になる放課後の帰り道を狙って待ち伏せをさせてもらった。そして今、帰り道を通せんぼする形で登場して、彼女がしてきたあれやこれやについて長々と語ったところだ。
「あーもう最悪。酷い話ね、本当に」
それを一通り聞き終えたところで、胸の中にため込んだ嫌悪と侮蔑を吐き出すように彼女はそう言った。
「何が酷い話なんだよ」
「そりゃそうよ。私、かわいそうな奴を見つけて助けようだなんてふりをする偽善者が大っ嫌いなの」
「……」
大っ嫌い。そう言った彼女は、心底うんざりしたような表情で僕の顔を睨む。
鋭い瞳だ。綺麗な顔をしている、と思う。そのせいか、その瞳に込められた敵意が、より一層強くなってこちらへと伝わってくる。
肉食獣に、睨まれているみたいだ。
足が、竦む。
「いじめ。いじめね。それで? 何が言いたいのよ貴方は」
苛立ちを隠そうともせずに、投げやりな言葉を使って彼女はこちらへと語りかけてくる。
こちらへと回答を求めるような言葉なのに、こちらの返答などどうでもいいといわんばかりの態度で、彼女は矢継ぎ早に言葉を並べる。
おかげで俺は発言できない。
「そうね。予想してあげようじゃないの。例えば、そう。今すぐにでもいじめをやめてくれ、ってところかしら? 偽善者が好みそうなセリフだわ。あるいはそうね。いじめの証拠でも持ってきて、私を脅す、だなんてことも考えられるわね。あらやだ怖い。私みたいなか弱い女の子を脅すなんてひどい人間ね、貴方」
一人芝居のようだ。舞台の上に立つのは玄羽だけで、僕は観客席に座る一般人。僕の意見は舞台の上に響くことはなく、ただ淡々と予定調和の言葉がつづられているような、そんな疎外感。
「別にいじめてなんかいないわよ。私は」
何よりも異常なのは、それが様になっていることだった。たった一人で語ることが自然体。僕が会話に入ることが異常事態。
僕と玄羽の間には壁がある。舞台上と観客席の間にあるような壁が。しかし、それが存在して当たり前と錯覚してしまうような、そんな異常性が、彼女の語りにはあった。
通行止めの立て看板。絶対不可侵の領域。地獄の門。或いは、月と鼈か。
ただ喋っているだけで。ただそこにいるだけで。ただそこに在るだけ、彼女は人を寄せ付けない。まさしく女王様だ。凡庸な人間は、そのオーラにひざを折ってしまうことだろう。触れてはいけない、と。
「私は、知らない。なにもね。だから、ほら、さっさと帰りなさいな。話は終わり。もう何もない。あなたが求めるような答えは返ってこない。それとも、まだ何かやる気? 生憎と近場の交番は公園の入り口に設置されてるわよ」
この場における僕の発言権は、存在しない――
「僕は、映画はエンドロールまで見るタイプなんだ」
――発言権は、存在しない。
けれど。もうすでに僕は決めたんだ。イグサを助けると。
僕がまったくのおべんちゃらな人間でも、言葉を尽くして止めてやる。
「……はぁ?」
「やめてくれ。僕も僕でか弱い人間なんだから、顔のいい同級生にそんな顔面いっぱいに拒絶を示されるとストレスで死んでしまいそうになる」
玄羽の表情いっぱいに浮かべられた困惑の感情。それもそうだ。俺が今発した言葉に脈絡なんて一切ない冗談でしかない。
だが、これでいい。
冗談だけが、僕の取り柄なんだから。
「映画が好きなんだよ。本も、まあ好きだけど映画ほどじゃない。ただ、映画館に足運ぶという決定を下すことに抵抗感があるだけで、本当に好きなんだ。ああ、だけどサブスクはだめだ。あれは自分で見るものを選ばないといけないからな」
「……ねぇ、貴方の自分語りに付き合う暇はないのだけれど」
「悪い悪い。ただ、これは大事な話なんだ。僕は映画が好きだ。なにせ、僕が何もしなくとも物語が進んでいく。設定された物語が、どんな出来事があろうとも終わりに向かっていく。だから僕は映画が好きだ」
玄羽の顔に浮かべられた困惑が霧散していき、次第に苛立ちに包まれていく。だから、これでいい。
「本題が遅れたが、残念ながらさっきそっちが仰々しく語ってくれた予想はことごとく外れててよ。別に僕は、そっちがしている行為を止めるために、こんなところで待ち伏せをしていたわけじゃない」
「……じゃあ、なんだっていうのよ」
玄羽のその瞳をより鋭利に研ぎ澄ませて、敵意を鋭くこちらに向ける。その迫力には、流石の僕もひるんでしまう。
それでも、毅然と僕は彼女の前に立つ。
「覚悟を聞きに来たんだよ」
「……意味が、わからないわね。これっぽっちも」
問いかけに対する答え。僕のそれに対して、玄羽が浮かべた感情は苛立ちか、呆れか、困惑か。
ともあれ、心の底から僕の考えを理解できないとでも言わんばかりの態度で、彼女は言う。
「それはなに? いじめ続ける覚悟でも問おうっていうのかしら? それとも、ここでいじめをやめる勇気。或いは自首でもしてほしいって懇願かしら?」
「そんなわけないだろう。というか、いじめを本気で止めたいってんなら普通、いじめの主犯格じゃなくて被害者を説得しに行くに決まってる。何をしたかじゃなくて、何をされたかを聞く方が一番手っ取り早いに決まってる」
「あらそう。じゃあつまり本当に、貴方はいじめを止める気はないってことね。それともこれは詭弁で、遠回しに私を脅迫しているのかしら」
「だから言ってるだろ。脅迫でもなければ止めに来たわけでもないって。覚悟だよ。覚悟。それとついでに言えば、俺が何をしなくもそっちがやってることは終わるよ。映画みたいに、必ずな」
「なにを言ってるのかさっぱりだわ」
「まあ聞いてくれよ」
終わる。そんな言葉を発した瞬間に、どこか彼女の態度がブレた。こちらを刺殺さんばかりの敵意と、こちらの一切を理解できないという呆れ。その中にわずかに紛れ込んだ動揺の顔色を、僕は見逃さない。
「過激化、だな。いじめだって最初はそこまで手ひどいものじゃなかったんじゃねぇか? これでも僕は、結構勘がいい方なんだ。情報のアンテナは、まあ低いけど、知り合いの近況がわからないほどじゃない。きっと最初は、気に入らないって理由で無視してた程度と予想する」
「……ふんっ、いい気になって予想して何様のつもりかしら」
「見ての通りだよ。僕はただ、映画を見てるだけだ。ただ、終わり方の予想がつく映画なんて詰まんないだろ? それが誰も幸せにならない悲劇だなんてあんまりだ」
「だからなによ」
「詰まらなくなったんだろ?」
「っ……」
玄羽の言葉が詰まった。
「僕は、いじめっていうのは無秩序状態からくるヒエラルキーの明確化だと思っている。学校という蟲毒の壺。誰しもが平等なスタートライン。不安だよな。今自分が、どれだけの位置にいるのかわからなくて」
玄羽は何も言わない。
「人間は安心を求める生き物だ。そして、地位というものは安全と安心を提供してくれる。強者であるという地位。弱者を作り、虐げることで強者としての地位を確立する。それが気に入らない奴ならなおさら良い。そして生まれる安心と力による充足。複数人ならなお良い。そこに結束が生まれ、最も安心できる帰属意識が芽生えるからな。そして、それこそがいじめの根源になる」
玄羽は何も言わない。
「気分はまるで王様だ。個人をいいようにできる身分。そこに生まれる満足感。中毒症状の発症だ。安心を得るために他者を支配し始めたくせに、今となっては他者を支配しないと満足できなくなっている」
こちらを睨む玄羽の視線はより強くなる。まるで、言われたくないことでも聞かされているような顔だ。
実際、その通りなのだろう。
本当に、玄羽が話の分かるやつで本当によかったよ。
「だが快楽にすら人間は慣れてしまうもの。だから普通に支配するだけじゃつまらなくなってくる。より過激な支配を行い、それが許される環境に酔いどれる。或いは、落ちぶれる弱者の姿を見て楽しんでいるか。だがそれも長くは続かないぜ」
少しだけ間を置いた。
五秒。十秒。やはり玄羽は何も言わない。
何も言わないから俺が言う。
「今のお前らはブレーキが壊れたスポーツカーとおんなじだ。気持ちがいいからってアクセルを踏み続けたら、きっとどこかで事故る」
「いつか終わる、というのはそういうこと……」
「無視したり隠したり程度の悪戯なら先生方も目を瞑ってくれたかもしれないがな。少なくとも、ここ最近のは度を越してる。いずれ暴力行為にも至ると俺は踏んでる。だから覚悟だ」
そこで俺は、しっかりと玄羽の目を見た。まっすぐと、少しばかり呼吸の荒い彼女のキツイ視線を正面から受け止めながら、言う。
「覚悟しろよ。遊んでたなんて言い訳は俺がさせない。お前らが何をしてるのかを、よく考えろ。行きついた先で後悔するなんて、許さない」
並べ立てた渾身の言葉。
怒りを込めて、悲しみを込めて、敵として俺は彼女の前に立つ――
なんて、全部が全部、詭弁でしかないけれど。
すべてが終わってしまった後に僕にどうにかすることなんてできない。そして救えなかったという後悔を一生背負うことになる。
だからこれは脅しだ。図星ここに極まれり、最初にクロバが言ったことが、俺のすべての思惑だ。脅し、怯えさせ、委縮させ、引かせる。それは罪悪感だっていい。いじめようとするその一歩をためらわせるだけの言葉を並べて、俺はこれを武器とする。
あーあ、締まらねぇなぁ。こんな時に、いじめをやめろだなんて言葉で場を締めれたらいいのによ。
かっこわりぃ。
「ああ、そう」
そう呟いた玄羽の視線が伏せられた。それが何を意味するのかは分からない。強いて例えるとするならば、僕にはそれが完全なる拒絶に見えた。
対話の拒否。質問への拒絶。相手を見ない。
亀が甲羅にこもるように突然静かになった彼女は、そのまま身を縮こませるように敵対的だった威圧感すらも引っ込めて、この場から立ち去ろうと俺の横を通り過ぎようとする。
それが答えなのだと僕は瞑目しつつ、玄羽が横を過ぎ去ったところで振り返らずに声をかけた。
「それでいいんだな」
僕の言葉に、彼女は答える。
「私は偽善者が嫌い。でも、何にもできない弱い奴はもっと嫌いよ」
それだけ言って、彼女は走り去っていった。残された俺は、大きく息を吐いて道の脇にあったベンチにへたり込む。
「あー……疲れた」
それから、少し遠くに見える公園の時計を見上げながら、そんな風に僕はため息をこぼした。
時間にして10分ぐらいか? いや、もっと短かったような気がする。しかも喋っただけ。なのに、この疲れよう。つくづく自分の対人能力のなさを痛感させられる。
ともあれ、作戦の第一段階は終了だ。
作戦。イグサへのいじめをやめさせる作戦。そのために僕は、まずいじめの主犯格を中心とした、イグサをいじめるグループを割り出した。そして今みたいに、一人一人に脅して回る。
脅しといっても、結局のところ『いじめを続けるとどうなるか』を嫌になるまで話しただけで、何かを要求したわけでもなければ、彼女たちを危険にさらしたわけでもない。
無論、多大なる誇張表現を使わせてもらったけど。やはりいじめは、その言葉の柔らかさとは裏腹に凶悪で醜悪だ。それに、同じいじめでも内容が大きく違う。精神的な嫌がらせにとどまるのもあれば、自殺や殺人事件に発展するものまで様々だ。それをまとめていじめと呼んでいるのだから、世間がいかに大雑把なのかを疑問に思わざるを得ない。
もしかすれば、いじめの中に仲間外れなんて陳腐な犯行を含めることで、他のいじめに対するイメージそのものを陳腐化する意図があるのかもしれない。
どちらにせよ、そんなことをする奴の気が知れない。だから僕は大仰な誇張をした。冗談でもなんでもなく、エスカレートしたいじめの行き着く先を。犯罪者となった少年少女がどんな未来をたどるのかを。
今回の場合、これは有効的だった。玄羽の取り巻きは俺が嘘をついているといいながらも、びくびくと自分がやってきたことを振り返っていたし、中には自分はやってないと自己保身に走るやつだっていた。
唯一、玄羽には効いたような気がしないが……こうなったらもう終わりだ。あいつが続けようが続けまいが、もう周りはついていかない。
はず。
「さぁて、明日からは第二段階だな……」
作戦第二段階。即ち――
◆
「おーい、イグサ! 帰るぞ!」
「た、たたタイちゃん!?」
初めての経験。他の組のドアを開けて友達の名前を呼ぶ。
そんな貴重な体験をしつつ僕は、ホームルーム後すぐにイグサのいる教室へと直行し、彼女の近くまで移動した。
「急にどうしたのさタイちゃん!」
「前にお前が携帯失くしてたの見て心配になったんだよ。というか、小学校の時までよく一緒に帰ってただろ」
「それはそうだけどー!」
ズレた眼鏡を直しつつも、なんだかうれしそうなイグサ。そんな彼女と放課後に一緒に帰る。それが、僕が考えた作戦第二段階目だ。
いや、本当に。さっきの玄羽への言葉が完璧に詭弁になってしまうような立ち回りだけど、やっぱりこれが一番効果的なんだよ。
いじめる相手の近くに、関わりたくない奴がいる。作戦の第一段階でやった脅しが効いているなら、その効果の多寡に関わらず、俺を避けるようになるはずだ。
実際その通りに、玄羽のグループが恨めしそうに僕のことを見ているし、その中には怯えるような視線もある。というか、これ僕がいじめの対象になりそうな勢いだな。そうでなくても学年での評判は悪くなりそうだ。
……まあ、それならそれでいいけど。
「……」
そんな中、玄羽一人だけが何の感情も感じられない瞳をこちらへと向けていた。それに気づいた俺が玄羽の方を見ると、すぐに視線を逸らして教室から出て行ってしまった。
それにつられて、彼女の取り巻き達も教室を出ていく。脅しが効いているようでほっとした。
「あ、えと、それでタイちゃん……」
「部活は大丈夫か?」
「あ、うん! 今は大丈夫! 一緒に帰ってくれるん、だよね?」
「さっきそう言っただろ」
帰り道を一緒に歩く。ただそれだけの決め事を、なんども彼女は確認してきた。そのたびに僕は呆れた声を出したけれど、正反対にイグサは嬉しそうにはにかんでいた。
僕にはその理由がわからなかった。ただ、とりあえず。悲しそうに笑うイグサを見ずには済みそうだと、僕は胸をなでおろしたのだった。
◆
狐陽玄葉は憤っていた。
伊草の周囲に大河が現れるようになって数日。彼女の周囲は戦々恐々とした雰囲気に包まれていた。
「ねぇ、本当に大丈夫なんでしょうね! わ、私あの子のスマホ投げちゃったんだけど……」
「知らないわよ! 私は最初っからやめた方がいいって言ってたでしょ! やったのはあんたたちなんだからね!」
「ちょっと、自分だけ逃げようっての!? あの子の教科書、池に投げようって言ったのあなたでしょ!」
始まりは些細な不快感だった。緊張からか吃音的な彼女の言葉が気に入らなかった。それでいて小さい背丈に、おどおどとした伊草の態度は、とてもじゃないが自分たちに害をなすような存在には見えない。
だからこそ伊草は標的にされた。
まずはクラスの女子で結託して、伊草を孤立させる。意図的な無視は当然で、日直のような当番も理由を付けて、伊草を一人ぼっちにさせる。そうして困り果てた彼女の反応を楽しむ。それだけだった。
気に入らない相手をいじめることでストレスの発散になるし、弱い人間があたふたとする姿を見るのは存外に楽しい。
けれど、標的だって慣れていく。孤独であることが日常となれば、反応することもなくなった。
詰まらない。
誰かがそう言った。誰がそう言ったのかは、もう誰も覚えてない。ただ、次に誰が何を言ったのかだけは、クラスメイトの女子全員が覚えていた。
『困ってるのが面白いなら、困ることをすればいいじゃない。大切なものがめちゃくちゃにされれば、彼女だって笑っちゃいられないわよ』
そう言ったのは玄羽だ。特に誰とつるむことなく、つまらなそうに教室に座っていた彼女は、誰かが言った言葉にそう返した。
普通であれば反発がありそうな態度の言葉であるけれど、既に伊草に標的を定めていたいじめっ子たちには、取り立てて反発するような言葉ではない。それ以上に、今まで無視程度に済ませていたいじめが、この言葉を機に加速した。
まるで玄羽が背中を押したような形だ。自然と、玄羽はいじめっ子たちのリーダーになっていた。
誰かが叫ぶ。
「あんたらがやれって言ったんでしょ!!!」
大河の言葉によって揺れるいじめっ子たちは、全員悪事をしている意識がなかった。だからこそ突き付けられた現実的な刑罰に、はじめて自分たちの責任を認識する。それでも自分は悪くないと、責任の擦り付け合いが続いていた。
気に入らない相手で遊ぶストレス発散。遊んでいただけだから自分は悪くない。そう、繰り返して――
「うるさいわね!!」
玄羽が怒鳴った。
いじめっ子たちの言葉が一瞬止まる。誰も、彼女が声を荒げるような瞬間を見たことがないからだ。
「自分たちでやってきたことも理解できていなかったのあなたたちは!? それで、ようやく今になって騒ぎ出して、今までどんなつもりでやって来たっていうのよ!」
いじめっ子たちにとって玄羽は仲間だったのかもしれない。なにせ彼女も、伊草の言葉を無視していたのだ。いじめが作る一体感が、仲間意識を強めていた。
しかし、玄羽は違った。
彼女はただ、いつも通りにしていただけだ。伊草に関わらず、気に入らない人間の言葉のすべてを、彼女は無視していた。
はずなのに。
思わず口にしてしまった一言が、偶然にもかみ合ってしまった。
興味もないいじめの会議に、嫌気がさして口を挟んでしまった彼女の選択が、すべてを狂わせた。
誰かが言った。
「な、なによ! あんたがあんなこと言わなければよかったのよ!」
始まりが過ちなら、終わりだって過ちだ。堪えきれなくなった怒りが溢れ出したかのようなその言葉は、言うべきではない選択肢。
誰かが言った。
「あ、あ……あんたのせいでしょ!!」
全員が覚えている。伊草が孤独に慣れたなら、より困らせることをすればいいと、他でもない彼女が言ったのだと。
彼女こそが、この騒動の引き金を引いた張本人だと。
矛先は向いた。
「そうよ! 私覚えてるんだからね! あなたがやれって言ったのを!」
言ってない。
「いつもいつも貴方ばっかりお高く留まって! なによ、私たちは貴方の手下じゃないのよ!」
玄羽は一度も指示したことはない。
「前から気に入らないと思ってたのよね! 少し見た目がいいからって何よ! こんなことならあんたの指示に従うんじゃなかったわ」
彼女たちが勝手にしたことだ。
それでも、もう。
「もう、いいわよ。それで。好きにすればいいじゃない」
玄羽は彼女たちの敵となってしまったのだ。もう言葉を交わすことはできない。だから玄羽は、ため息を吐くようにそう言った。
「もう行きましょ! あんな奴ほっといてさ!」
「そうよそうよ!」
玄羽に文句を言って溜飲が下がったのだろういじめっ子たちは、立ち止まった玄羽を置いて去っていく。その背中を、無感情な瞳で玄羽は見送った。
彼女は考える。
いつどこで間違えてしまったのか。
いじめの会議をしている彼女らの愚かさに耐え切れず、思わず言葉を漏らしてしまったときか、或いは呼んでもいないのに近づいてくる取り巻きを追い払わなかったときか。
どちらにせよ、もう終わったのだ。
家に帰ろう。
家に。
「……」
住宅地にある二階建ての一軒家。その家に目立つところがあるとすれば、玄関に積みあがったゴミ袋だろうか。或いは、手入れの行き届いていない庭先か。花の代わりに花壇に生い茂る雑草を一瞥しつつ、玄羽は自宅の門を開けた。
ここ数日は一段と疲れる日が続いた。話したこともない男子に詰問されるような言葉を浴びせかけられ、続いて戦々恐々とした愚か者たちの無意味な会議を永遠と聞かされ続ける。
ああ、でも。もう彼女たちとは袂を別ったのだ。もうこれ以上疲れることは、ないだろう。
「……はぁ」
帰宅の言葉をため息に変じながら、玄羽は玄関の扉を開けた。靴を脱いでいる最中に、家の奥から母親が顔を出す。
「あら、お帰り玄羽」
「……」
ちらりと玄羽は母親を見る。けれど、彼女の帰りを歓迎するその言葉に対する返答をする気にはなれなかった。疲れているのだ。返答するのがおっくうになるほどに。
だから、少しだけ間が開いた。
数秒。
返答が遅れた。
パシンと、頬を叩かれた音が聞こえた。
気が付いた時には母親はすぐ近くにいて、自分の右頬にじんわりと痛みが広がっている。
そこでようやく、彼女は気づく。ああ、やっちゃった、と。
「帰ってきたらただいまでしょ!!」
母親のヒステリックな叫び声が玄関を支配した。
「帰ってきたら! まずは! ただいま! でしょ!」
耳が痛い。打たれた右頬より何倍も。
母親が手を構えている。だから玄羽は、もう一度平手打ちをされる前に言う。
「た、ただ、いま……」
パシンと音がした。
今度は左頬に痛みが走った。
「やればできるのに何でやらないの!」
玄羽は思う。なんで自分は怒られているのだろうか、と。
「いつも言ってるでしょ! 挨拶のできない子はうちの子じゃないって! あなたはそんな子じゃないでしょ!」
ああ、そうだ。お母さんの言う決まり事を守れなかったから怒られてるんだ、と。
「いい、お母さんだって苦しいんだからね! 本当だったら叩きたくなんてないんだよ! それなのに、玄羽は!」
うん。そうだよね。誰だって望んで人なんて傷つけたくないんだ。だから、これは自分が悪いんだ。言われたことを守れない自分が、悪い。
「ほら、もう一度。お帰りなさい、玄羽」
「う、ん。……ただいま、お母さん」
「よくできました!」
次は叩かれなかった。代わりに、母親が玄羽を抱きしめて、よくできましたと撫でてくれる。
玄羽は思う。
今度は間違えなかった、と。
やっぱり自分が間違ってたから、打たれたのか、と。
そして続けて、彼女は考える。
やっぱり自分が悪かったから、あの子はいじめられてたんだな、と。
そして自分が悪かったから、みんなみんな怒ってたんだな、と。
そんなはずないなんて言葉を沈めて、彼女は一人罰を背負う。
そんな時ふと、一人の男子の顔を思い出した。
「ははっ……なんで、私じゃないのよ……」
玄羽を誉め終えた母親が家の奥へと消えていくのを見送りながら、脱ぎかけの靴を放り捨てた彼女はそう呟いた。
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