第29話 終わりにしたい
ドアをそっと開けると
賑やかな店内から
「夜子ちゃんおかえり」
と、いつものように
ママが笑顔で迎えてくれた
カウンターに居たあゆむも
にこっと微笑む
夜子は小さく微笑み返して
ゆっくり店内に入り
伏し目がちに見渡してほっとすると
カウンターの隅に座った
あゆむが
「お疲れ様でした」
と、そっと烏龍茶のグラスを出して微笑む
「ありがとう」
夜子はふうっと息を吐いて1口飲んだ
「さっき一緒にお店の前に居た人…」
「うん?」
「…あゆむの知り合い?」
「ああ、うん。以前ここで働いてた人」
「そっか」
「結婚して辞めて久しぶりに来たんだ」
「そうなんだ」
「夜子も知りあいだった?」
「いや、ううん。何となく聞いただけ」
そう言って夜子は
ぼんやりと考え始めた
もしあの人を消したら
ママやあゆむの中にある
あの人の思い出も消えてしまうのだろうか
また会ってしまったら
どうしたらいいんだろう
もうこんな変な世界は嫌だ
夜子は目を閉じて
忘れかけていたタグの事を考えた
すると頭の中に
ホワンと数字が浮かんだ
他の惑星の種族36
人工の人類2
本来の人類59
「えっ」
夜子は自分の驚いた声で目を開けた
何の数なの?
もう一度目を閉じてみる
身に覚えの無い数字が並ぶ
あとこれだけの数を消すということ?
それとも消した数…わからない…
ニューに聞きたい
このおかしな世界を終わりにしたい
突然不安に包まれた夜子は
立ち上がって店を出た
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