第28話 幸せな結婚
「さつきちゃん元気にしてたの?」
カウンターに慣れたように座った
赤い服の女は
すでに酔った顔で目がとろんとしていた
「元気じゃなかったよママに会いたかったー」
甘えるようにあゆむの母に訴える
さつきは以前この店で働いていて
くっきりとした美人なのに
おっとりとした性格のギャップで
とても人気のホステスだった
「あゆむくんもいい男になったねー」
と、カウンターのあゆむに微笑む
「さつきさんも相変わらず綺麗ですね」
あゆむも微笑み返す
さつきは目を細め
上手になったねぇと言いたげに
ニヤニヤしながらあゆむを見る
「結婚してその後どうなの?」
「うーん、、まあ普通ーかなあ?」
「あら、幸せな事で」
ママとさつきが微笑み合う
「そうだね、幸せかも」
「色々あったけど結ばれて良かったわね」
「ホントによく結婚したよあんな人と」
「ふふ、さつきちゃんの方が夢中だった癖に」
「うーんそうかな」
さつきは照れくさそうにして頬杖をついた
「好きな人と結婚出来て良かったですね」
と、あゆむが言う
「わあ!生意気な事言うようになってー」
さつきは目を丸くしてあゆむを見ると
幸せそうに笑った
ひとしきり飲んださつきは
混雑してきた店を出る
「さつきちゃん!またおいでね」
とママがカウンターから声をかける
「ママ、ありがとうまた来るね」
あゆむに見送られ外に出ると
「あゆむくんもありがと、もういいよ戻って」
「はい、また来て下さいね」
「うん、次は旦那さんも連れてくるね」
そう言うとさつきは手をヒラヒラとふり
ふわふわした足取りで人の波に消えた
今とても幸せなんだろうな
と伝わる笑顔だった
夜の街では不幸な恋の話が多い
そんな世界でも
心の綺麗な人には幸せになって欲しいと
願ってしまう
さつきさんがずっと好きだった恋人と
結婚出来た時は
掃き溜めのような世界に咲いた
1輪の花のような
まるでシンデレラのような
綺麗な物語に思えて
僕も嬉しかった
あたたかい気持ちと
少しの心配を感じながら
あゆむは店に戻った
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