第25話 吐き出す

葉月夜子は楽しんでいた


すっかり習慣になった

水無月歩夢との帰り道


友達のようなもっと近いような

よく分からない関係だけど

あゆむと居る時間はとても楽しいと思えた


菜々もこんな気持ちなのかな

とふと思った




一緒に帰るようになった2日目

夜子は手に汗握りながら

あゆむと菜々の関係を聞いてみた


夜子は聞きながら

敗北感や恥ずかしさや切なさ

色んな感情が一気に湧き上がり

身体が熱くなった


「お互いに1番大事な人」

という言葉で夜子は脱力した


菜々の世界の

菜々のものであるあゆむ


こんなに菜々と離れたのに

まだ私は…


いつの間にか夜子は

自分が情けなくて笑っていた


それからはあゆむにわざと嫌われる様な

自分の最低なエピソードを

聞かれてもいないのに

明るくペラペラ話していた


軽蔑して嫌ってくれていい

そんな投げやりな気持ちだった


それでもあゆむは

小さな子供を癒すように

夜子の頭を撫で

「辛かったね」

とだけ言った

夜子は驚きと悲しみと温かさで

身体を震わせながら

子供のように泣きじゃくった



それからあゆむと夜子は

毎日のように一緒に帰り

その日の出来事やくだらない話をした


あゆむの隣は居心地が良く

夜子はありのままの自分で居られた


「好きなら普通自分だけのものにしたいでしょ」

「全然したくない」


「あゆむは本当に変」

「夜子はもっと変」

と何度も言い合って笑いながら

川辺を腕を組んで歩いた


夜子は好きとは違う

温かい何かを初めて感じた

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