第18話 再会

人混みの中、葉月夜子は

下を向いて歩いていた


家から店へ、店が終わるとあゆむの母の店へ

そしてまた家へ


葉月夜子は人ではない何かを

見つけてしまわないように過ごしていた


今日もなんとか乗り切った…

夜子はあゆむの店に着くと

ドアをあける


「おかえり夜子ちゃん」

あゆむの母の優しい笑顔に迎えられ

肩の力がすっと抜け、ホッとして微笑む


カウンターに座り

ママと話したり隣の客と話したりして

すっかり夜子は寛いでいた


ママと話していくうちに

不思議な事実が浮かび上がる


夜子とあゆむが同じクラスだった事

高校の時の美術の先生があゆむの兄である事

あゆむは菜々の幼なじみである事…


夜子の知らない菜々とあゆむの繋がり


なぜ菜々は言わなかったんだろう

中学も同じだったが

2人は知り合いですら無いように見えた


ふつふつと黒い気持ちが広がる


菜々の性格なら

ただの幼なじみなら

隠さず言うんじゃないだろうか…


その時店のドアが開いて

3人の客が入ってきた


夜子は邪魔になりそうなら帰ろうかと

姿勢を正して立ち上がろうとした


白髪混じりの中年2人と

細身の若そうなサラリーマ…


人ではない何か


夜子の心臓が鐘を打つように

鳴り響く


3人は奥のテーブル席に座ると

ママと騒がしく話し出した


逃げる…消す…


夜子は動けず

カウンターの隣の席の客に

隠れるように小さくなっていた


その時また静かにドアが開いた

水無月歩夢だ


あゆむはスタスタとカウンターに入り

夜子にペコっと軽い一礼をすると

カウンターのお客さんと話しながら

手際よく洗い物を始めた


数日ぶりに見たあゆむは

少し大人びた顔つきになったような気がした


やっと会えたのに

帰りたい…


夜子は少し目を閉じてから

息をふぅっと吐いて

隣の客越しに

人ではない何かをそっと見て


タグを貼るイメージした


消えた


夜子は目を閉じて脱力し

心の中でやった!と叫んだ


再度テーブル席を見て

消えた事を確認する


緊張から開放された夜子は

目の前のジュースを

勢いよくぐっと流し込んだ


と、あゆむが驚きこわばった表情で

こちらを見て固まっていた


わっ、下品な飲み方と思われたのかな

それとも化粧が何か変…?


余りにもあゆむがじっと見るので

そわそわしてきた夜子は

化粧直しにトイレに立った

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