第17話 今君は

母は葉月夜子をいたく気に入ったようで

あれからも葉月夜子がよく店に来ていると聞いた


僕は思わぬ再会を少し面倒に思っていた

菜々に近い世界の人達とは

極力関わりたくないからだ


菜々と僕の繋がりを

誰にも邪魔されたくない

僕は極力、店に行くのを避けていた



「人それぞれに相応しい宝石がある」

社長が何気なく言っていた


宝石は持ち主を

幸せにしたり不幸にしたりする訳ではなく

宝石を持つ事で

その価値に勝ったり負けたりしている


菜々はどんな結婚指輪を貰ったのだろう

恐らくどんな宝石でも

菜々は負けない気がした


水無月歩夢は仕事を終えて

なるべく人の多い場所を歩いていた


「今日はまだ4人か…」


他の惑星の種族を消す事に慣れて

仕事終わりに

このゲームを楽しむようになっていた


普通の人にタグを貼るとどうなるのだろう

と興味が湧いて

通り過ぎる普通のおじいさんに

本来の人類のタグを貼ってみた所


おじいさんの頭の上に

ピンポン玉くらいの

白く光る球が現れた


僕は少し楽しくなり

通り過ぎる人に次々に

本来の人類のタグを貼った


次々に頭の上にピョコンと光る球が現れる

本来の人類は消えないようだ


人工の人類は

相変わらず、1のままだった


これを貼ると消えるのか

それとも球が現れるのか


僕は試してみたくなり

また通り過ぎる人に

人工の人類のタグを選ぼうとした


その瞬間、脳が震えるような感覚がして

出来なかった


つまり、この1が意味するのは

僕では無い誰かが

このゲームに居るという事だ


数が増えないのはなぜだろう

その人は何を思っているんだろう

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