第15話 心の隙間

水無月歩夢は考えていた


お金があるからといって

幸福な訳では無いようだ


足りない何かをお金で埋めて

埋まらなくて

お金があるからゆえに

酒、色香、薬の罠にほど近い


高級な宝石も服も時計も

心の隙間をひと時を満たす

たったひと時


僕は幼い頃から

酒と色香の世界で生きる母と暮らす

僕はこの濁った世界が嫌いだった

大人達の欲望を含んだ眼差しに吐き気がした


それでもこの

ずるくて情けなくてどうしようも無い世界を

生きてこれたのは

僕に文月菜々が居たからだ


菜々を失った僕は

正しく心に隙間が出来た


僕は正しく隙間を埋めなければならない


この突然始まったゲームは

僕にとって好都合だ



宝石屋の仕事を終えて家に帰り

ベッドに寝転び僕は目を閉じた


今日1日で

僕は3人もの「他の惑星の種族」を消した


信号待ちをしていたおじいさん

買い物をする品の良い奥さん

バスを待つ疲れた様子のサラリーマン風の中年


目を閉じたまま

今日の成果を思い出して数えていると

数字が浮かんできた


他の惑星の種族…4

人工の人類…1

本来の人類…0


僕が今まで消した数なのか…

人工の人類が1?


その時、電話が鳴って目を開けた


母からの電話だった

僕は頼まれた買い出しをして

店に向かう事にした


そして僕は葉月夜子に再会した


文月菜々の世界に吸い込まれ

焦がされて堕ちてしまった

可哀想な葉月夜子は

酒と色香の世界で生きていた


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