第8話 ご指名です

「夜子ちゃん」


賑わう店内で接客していると

カウンターの奥からママが手招きした


「はーい」

カウンター裏の厨房にひょこっと顔を出すと

ママは椅子に腰掛けて

タバコを吸いながらニカッと笑った

「ご指名ですっ二宮さんが夜子ちゃんに迎えに来て欲しいってーお願いしていい?」

「あ、はい分かりました」

「場所は電話してだって、宜しく頼みます!」

「はーい!じゃ行ってきます」


夜子はそっと店を出た


二宮はうちの店の常連で

飲食チェーン店の社長さんだ

夜子を気に入ってくれてるので

夜子の客という事になる


電話で聞いた店に着くと

二宮はいつもの飲み仲間とご機嫌のようで

スナックで女の子達に囲まれていた


「おー来た来た!」

「二宮さん」


夜子は営業スマイルを振りまきながら

二宮の隣に座った


二宮は夜子を上から下まで見て

「今日も綺麗だねー」とご満悦だ

そして

「未成年だからいつものね」

と烏龍茶を頼みながら

どうだ、この店の誰より美人だろうと

自慢げな表情で店の女の子を見渡す


二宮は好みのタイプには優しく

興味無い子には分かりやすくそれなりだ


女の子たちの冷たい目が痛い

夜子はこのアウェイ感から早く立ち去りたかった

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