第6話 夜の蝶
雑貨屋のアルバイトを終えて
葉月夜子は夜の仕事に向かっていた
整った顔立ちにくっきりとした化粧
黒く真っ直ぐな髪と華やかなネイル
薄いピンクのブランドスーツにピンヒール
ホステスとひと目で分かる色気は
通り過ぎる中年男性の目を引いた
「どこのお店なの?」
と声をかけられれば
名刺を渡して
「お待ちしてます」
とニッコリする
「何歳?」
「他にもいい子いる?」
遠慮ないおじ様達に捕まると長いので
夜子はニッコリしたまま颯爽と歩き出す
どうせ名刺捨てるでしょ
と、呟いて真顔になる
コツコツと歩きながら
通り道にあるカフェに立ち寄る
いつものお気に入りのイケメン店員に
アイスカフェラテを注文した
今日もかっこ良かったなと
エネルギーを補充して店に向かう
今日は団体客の予約があるようで
いつもより女の子が多い
「おはよー」と挨拶して
軽い雑談を一頻り終えて
空いてるカウンターに座り
カフェラテを置いて
バッグから
化粧ポーチと折りたたみ鏡を取り出した
女の子達はそれぞれに
化粧品の話や彼氏の話
客の愚痴で盛り上がっていた
夜子は化粧を直しながら
隣に座るお姉さん達の
次の休みに女だけで
花火を見に行く話に加わった
程なくして
わぁわぁと騒がしい声とともに
ドアが開いた
その瞬間に女の子達は
「いらっしゃいませ」
と声を張り上げ
タバコを揉み消したり
化粧品をバッグに投げ込んで
一斉に荷物を片付けた
私もゆっくりと立ち上がり笑顔を作った
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