獣と神経
橋のうえ、だれかいる小さな夜であった。月光の裏でラッパがし、それはそれはいい響き。男は女を眺め、女は男へ悲しくなった。
瞳が丸いのに、どうして私を見つめればそう優しく細くなるの。幼い色がいいのに、と。
この街は歩道橋を要さない。うえも下も平等で、人心を現実からして矯正しよう政治で成り立っている。
女はだれへでも色目をし、男へもそうで、さっきした台詞とてこの一環。寂しいだけで、電話を鳴らし、ありもしない歩道橋を望んでいる。
ある大金持ちは、金銭を信じ、女は歩道橋のゆうれいを大切にしている。平の道々、車は数々抜けていく。女はその風へ引きちぎれそうな糸を思った。風は切れない糸なのねと、まあ軽やかで思った。
女は嘘泣きを覚え、警察には嫌な涙とされ、指紋とおなじほど扱われた。取調べは、罪状めいっぱい並べる。室内では六法はどの棚にも刺さっている。
やがて女は歩道橋を除霊し、満足し、どこか暗い底で眠った。この街で彼女へだけ、上下が許されるは、彼女こそ、それそのもののであるから、しようなし認められている。あらゆる権能が、そうであるのに類似して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます