仰天回

 今日も粗末な町を歩く。

 男はなんだか、うなだれて、仕事も簡単に止してしまう。

 仕方ないから計画していた水を飲む。

 健康にはいい。

 女に振られた昨日が不意で帰ってくる。

 思い出に焦燥して電話した。

 優しい声でもう終わりでしょう。と寸断された。

 虚しい朝と、仕事を休んだ説教が長かった。

 女は夏に別の男を好きになった。だから別れ話が、この冴えない男まで至った。

 女の思いは大きく、男を昔の男にして、新しい男の影は古い思い出をまったく潰した。

 自身より、男は女のほうが正しく感じ、またこう感じることはきっと間違えていた。

 するとその新しい思い出がいなくなったと、彼女から思いがけず電話された。

 泣いていた。電話越しにも悲痛でぐしゃぐしゃなのが受け取れた。

 男はそこで、正しいが間違っている感情を思い、それで僕にどうしろと? と冷たい。

 満足だった。女はもう掛けてこないだろう。

 しかし女はしつこい。

 電話ひっきりなしだった。

 仕方ない、届かないようにした。

 ぐずった赤子よな携帯は、とたん懐で泣き止む。

 すると女は目のまえだった。刺してくる。ああ、思ったより痛まない。

 ただストンと肉体の重くなって、膝から崩れ倒れた。

 血だまりの頬に触って温い。

 女はただ間違ったまま、あなたって最低と、呟いていた。

 刺されてもないのに痛そうに泣いて、爪を立てそうな諸手に顔を覆っていた。

 男は霞む視線で、ざまあみろと恨んでいた。

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