小さい小屋で、少女は目覚める。

 鼠の穴と思しき暗闇が、隅であった。覗くとなにか蠢く。なんだろう。

 わからなく終わった。小さな疑問は熱を持てど、どうしようもない火災までゆかない。

 少女は小屋を出た。中身に同じく、貧しい壊れそうな風貌は、やがて寂しく一縷の蜘蛛を垂らしてくる。

 これ建つところどこか川原だった。

 大きいビルが遠方影をし、一直線であった。

 川ではゴミ溜まりが汚い遊泳をしていた。触ったらば溶けてしまい、粘着質の違う形状へ変化し、やがて手で纏まっていられなくなった。地に染みるに、饐え、頭の痛む臭いだけ残していた。

 川は果てまで、こうやって幅広くやっているそう。

 どうか偶然強く開花できた一輪の蒲公英は、黄色く顔が壊れていた。

 少女は人工の掃き溜めに溜まっていくみたいで、嫌で、歩くだけでそこを離れた。

 占い屋が、簡単な机と対面できる椅子を出していた。

 それで座ってみて奇妙な水晶を挟み、占いを求めた。

 女の人でやたら化粧に濃さがあった。顔か、福笑いの仮面かは区別できない。

 さて、少女は聞いた。

「私はなんで、どこへゆくべき?」

 水晶は覗かれる。三角錐で、透明だった。あるい空っぽともいえた。

 占い師の答えて、優しくありきたりであった。

「どこへも行けますよ。じゆうですから」

 それで代金を払わなければ、ここまでだと厳しくなった。

 水晶を投げられた。当たった額が痛む。痛みに触れたらば、触れた指さきの赤い。

 地面に砂ぼけた水晶も、三角のひとつ尖ったところ、赤が濃い。

 なんだか親しみ深い印象が、水晶へと湧いてくる。少女はその水晶を持って帰った。帰ろうとして、どこへゆこうか。自由でいいか。と結論した。

 占い師は言うことはなかった。店も畳んでしまい、抱えてしまい、還った。

 やはりあの人も自由へだろうか。

 水晶はくすんでいた。見れば見るだけの愛着が沸いた。

 道なりをゆき、ときおり離れ、少女は自身で汚れた水晶を底面から頂点までじっくら眺めた。太陽へと翳せ、砂ぼこりから微か漏れた光線の煌めく差し込みに、綺麗があった。

 じゆう、じゆう、やなぁ感じ。

 少女はそうやって言った。無意識であった。

 水晶はひとつの角で赤が固まって、なおさら無残だった。

 あまり光も通さなくなり、ただ砂の浮いた水面めいた。

「ややや、汚いな」

 すると少女は捨ててしまう。

 服が埃っぽい。叩いてみるなら、白い薄いなにか細かなのが膨らみながら、服から吐かれた。

 や、や、や、汚い。

 少女は粉っぽく感じ咽た。

 眠い。

 思って倒れた。

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