6話ドラゴニュートと討伐隊





「だっはっはっはっはっ!!それであのドラゴニュートの女の子があんなに警戒してるのね!」



紺色の青年が到着して早々


治療の済んだ騎士にべったりくっついて離れない口枷をしたままの少女を見て



大爆笑しながらそう言った


騎士「………」


「ううぅ…」

それを見てポカンとする騎士と唸る少女う


鱗太「笑い事じゃねぇ。ドラゴニュートは卵の時点で機関が回収してるんじゃなかったのか?あ?」

いつのまにかワイバーンに腰掛けた鱗はそう言った。



「そうだぞ!組!危うくあの子は人間を襲うところだった!!」


紺色の髪の青年は組(くみ)というらしい


組「ごめん、ごめん。でも、もう落ち着いてるんでしょ?」


「あぁ!人間の方の傷の浅かったし治療もしたから。

血の匂いももうしないし!落ち着いてるぞ!」


組「さっすが!郎牙(ロウガ)〜。」


と和気藹々とする中


騎士「あ、あの!!あなたたちは一体、何者なんですか??」

騎士は声をかけた。


組「ん?あー!ごめんね!急にこんなことになってびっくりしてるよね!


えーと。

僕たち、君がよくニュースとか新聞とかで目にする"討伐隊"だよ。


よろしくね!」


騎士「討伐隊……!?討伐隊!?!?!」

騎士は驚いた。


その声に少女は少しビクッとした。


組「あれ?知らない?実際にはそりゃ見たことないだろうけど…」



騎士「知ってます。でもテレビで見たことはある討伐隊は…戦車に乗った人とか銃火器持った人がドラゴンと戦ってて…ドラゴニュートが戦ってるところなんて一度も…」


組「あー!!そりゃそうだよ!あれは人間が戦ってます!っていうフェイク画像だもん。


実際に戦ってるのは彼らドラゴニュートだよ!


それを世間に公表しちゃうと。ほら、ドラゴンの血を引いてるなんで信用できないー!とか言い出す人もいるからね。」

思い出したように組はそう言った



鱗太「……それ極秘じゃね?」


組「あ…………

ま、まぁ!ほら!彼女はどっちみちに機関に連れて行かないといけないし!


彼も保護者なんでしょ?なら一緒に行かないといけないし!セーフ!セーフだよ!」


鱗太郎 「…アホくさ」

そう言って鱗はそっぽを向いた


組「……で?そういう訳だから一緒に来てくれるよね?」


先程のおちゃらけた雰囲気とは打って変わって有無を言わさないその言葉に


騎士「…はい」

とそう返事することしかできなかった。



______________


機関地下内部



騎士と彼に抱えられて眠っている少女は


組に連れられてとあるエレベーターに乗るとそのまま地下へと下がっていた。




組「あ、そういえば僕の自己紹介してなかったね!

僕は白州 組(しらす くみ)

この機関のまぁ、いわば最高権力者?」


騎士「えっと…佐久間 騎士です。」


組「うんうん!騎士くんね!聞きたいこととかあるかい?なんでも答えちゃう!」



騎士「!き、機関ってなんですか?


討伐隊の正体はドラゴニュートで人間が討伐をしていないんですか?


ドラゴニュートは卵のうちから回収してるっていうのは討伐隊に入れるためですか?


…それと、それと……この子は…これからどうなりますか…」


騎士はそう言って少女をぎゅっと抱きしめた。


組「うんうん!聞きたいこといっぱいあるよね!


まず機関は機関でしかない極秘だから特別な名前はつけられない。


討伐隊は機関の中の一組織で


他にも

討伐したドラゴンを綺麗さっぱり回収する

清掃隊


ドラゴンを研究する

研究隊

とかあるよ!それの集合体が機関という訳だ!」



騎士「(清掃隊はなんとなく知ってたけどドラゴンの研究なんてしてるのか…?)」


組「はい!次!討伐隊は君がさっきも見たようにドラゴニュートしかいません!

人間が戦車使ったり銃火器使ったところで勝てないからです!


そして卵を集めてる理由も半分は正解!討伐隊に入ってもらうため!」


騎士「半分は…ですか?」


組「そう、もう半分は彼らがドラゴンの血を引いていて危険だけど理性がありここで訓練すれば人を襲わずに済むから」


騎士「…!!この子は今までそんなことは…!」


組「うんうん!それはわかってる!

今から説明するから落ち着いて?



ドラゴニュートは人間とドラゴンのハーフなのは知ってるよね?」


騎士「はい」


組「だからやっぱりドラゴンの血も引いてるわけでドラゴンと同じ理由で人間を襲ってしまうことがある。


さて、ここで問題です!ドラゴンが人を襲う理由はなんでしょう!」


騎士「…ドラゴンは雑食だけど中でも

人の新鮮な血肉が好物だから…です。

そのため人間の血肉の匂いはドラゴンにとって一種の興奮剤になる。」

以前どの本かで読んだことがある知識を騎士は口にした


組「ピンポンピンポン!!正解!よく知ってるね!そう。

そしてドラゴンの多くは鼻がいいからその美味しい匂いを何万キロも離れていても皮膚越しでも察知できる。だから人間がいるこの世界では常に凶暴で興奮状態なわけね!


で、ドラゴニュートもドラゴンには劣るけど人間よりも鼻が聞きドラゴンのように人間の血肉を好む。


まぁ、流石に皮膚越しだと美味しそうな匂いはしないらしいけど。


少しでも血が出ちゃうとその匂いで興奮しちゃってドラゴンの凶暴な本能が出ちゃうわけ」


騎士「!!俺が怪我押した時の血で」

ハッとして騎士はそう言った


組「そうそう!それで本能を刺激しちゃったんだろうね〜」

と組みは未だ寝ている少女の頭を撫でた。



騎士「二人のドラゴニュートが興奮しながったのはここで訓練を受けたからですか?」


組「そうだよ。


本来、人間の血肉の匂いで興奮する本能的感覚を


別の匂いで興奮する理性的感覚に

脳を書き換えるんだ。


ほら、子供の頃、嫌いって言い続けたものを大人になってもみんなが美味しいって食べてるのを見て食べると案外いけたりするじゃん?それとおんなじ。


だから鱗も牙も血肉には反応しないけど

書き換えた匂いで凶暴になることはある。


本能を理性で抑えてるから

完全に凶暴性を取り除くことはできないんだけどね。」


と付け足した。


騎士「……一種のマインドコントロールですね」


組「そうそう!

それで、最後その子がどうなるかだけど。

僕的には無駄に戦力を減らしたくないから討伐隊に入って欲しいんだけどどう?」



騎士「…….この子の意思を尊重します。」

騎士はそれだけ言った。


ちょうどそのタイミングで


「んんっ…」


騎士「!起きたか?」

少女が目を覚ました。



「おはよー」

と寝る前の記憶をあまり覚えていないのか悠長に挨拶する


騎士「お、おはよう」


組「おはよう!お嬢さん!体調は?」



「がう!」


覚えていないわけがなかった。

少女は威嚇する


騎士「こら、そんな威嚇したらダメだぞ。」


「………こいつ、いい人?」


騎士「……まぁ、今のところは」


組「ひどい!」


「分かった!」


組「うんうん!よろしくね!えーと!君のお名前は?」


「お名前?」


騎士「…あ」


組「……もしかしてなかったりする??」


騎士「………はい」


この1ヶ月、これと言った名前をつけなかった騎士はそう言った。



「……なまえ…おなまえ……」


少女、首をしばらくかしげると


ふとある言葉を思い出した


_______「ピンク色の尾って綺麗だしいいものを受け継いだんだな」



「…尾!のつくのがいい?」


組「ん?」


「お名前!」


騎士「え!?尾!?なんで!?」


衝撃的な展開に騎士は思わず目を見開いた


「なんで?」



組「まぁまぁいいじゃない!ほら!リクエストに答えてなんかいい感じに名付けてあげな!」


「うん?」


騎士「…そ、そんないきなり!!………じゃあう、美しい尾っぽで尾美(オビ)……とか。


ダメだ!俺ネイミングセンスがない!!」



「尾美!!オビ!!お名前!!」


騎士「えぇ!?いいの!?」


騎士「気に入ったみたいだねぇ!じゃあよろしくオビ!」


握手を求められた手に少女_______もとい

尾美(オビ)はそう返した。









___________________________________



_______名前をつけるのを忘れていたわけじゃない


ただ、もしいつか俺の家よりもこの子が安心していられる場所ができて


俺の手を離れる時、名前をつけてしまうと離れられなくなると思った


離したくなくなると思った


だから名前をつけられなかった


______________


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