あんこ練り切り和三盆

八木 文子

プロローグ 和菓子がアツい

先日、新宿伊勢丹の食品売り場のフロアにて、自分自身に驚いた事がある。いつの間にか洋菓子よりも和菓子が好きになったのかもしれない、私は。


初めはクッキーやフィナンシェを眺め、ウィークエンドシトロンにときめき…だったはずなのだが最終的に購入したものは羊羹、寒天、和三盆のお菓子…驚きだった。


振り返ってみると私の和菓子好きの片鱗は二人目の子供を妊娠している一年前に現れ始めた。妊娠中、食の好みが激変するというのは良くある話。元々甘党ではあるので、和菓子も守備範囲内ではあったのだが、それにしても異常に和菓子に執着した。どら焼き、白玉あんみつ、草餅、などをスーパーなどで買っては一気に平らげていた。こうして和菓子欲を満たしてはいたのだが、どこかで「ちゃんとした和菓子屋の賞味期限が短い感じの和菓子を食べたい」とも思っていた。別に「賞味期限が短い=美味しい」訳ではないのだが、しかしひとつの評価項目になっても良いだろう。


一人目の子供の世話にプラスして妊娠中であるからして「ちゃんとした和菓子屋」に行く事は達成されないまま出産に至り、また忙しさに忙殺されて和菓子欲は治まった、かのように見えたのだが、それは実は奥で燻っていただけで、あるきっかけでまた再燃した。


近所に行きつけの喫茶店があり、普段はコーヒーを飲んでいるのだが、ひょんなことからメニューにはない抹茶と、神保町の「ささま」さんの生菓子「あじさい」を頂いたのである。美味しかった。誠に美味しかった。寒天がプリップリ。そして見た目も素晴らしい、花としての紫陽花が大好きなのもあり見ているだけですごく癒された。


妊娠中も生菓子は食べたかったのだが、生菓子となると急にハードルが上がる。まずスーパーでは手に入らない。いざ見かけても、急に「抹茶がある訳でもないのに」と怯んでしまって大福なんかにしてしまうのだ。そのため抹茶と生菓子を頂くというのは自力ではなかなか難しかった。ましてやこんな美味しい生菓子。


これを機に「適当でいいから抹茶も入れよう〜」と決心し、その抹茶と和菓子を合わせるマリアージュを楽しみたいと思うようになったのである。こうして前述の新宿伊勢丹での衝撃的自分発見へ繋がる。


茶道の茶の字も知らないような阿呆ではあるが、純粋にお茶を楽しみたい、お菓子を楽しみたい、癒されたい。そんな気持ちでお菓子について語っていきたい。

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